【感想・ネタバレ】米中通貨戦争――「ドル覇権国」が勝つのか、「モノ供給大国」が勝つのかのレビュー

あらすじ

ドルを完全否定したくてもできない中国、
勝てるとわかっていても〝返り血〟が怖い米国
ロシアによるウクライナ侵略の本質は、米中の通貨代理戦争である。グローバル化された世界で基軸通貨ドルを握る米国に、ドル覇権に挑戦する、モノの供給超大国中国。その戦場のひとつがウクライナである。覇権争いはウクライナに限らず世界のあらゆる場所や分野で演じられている。

序 章 米中通貨戦争が始まった
第1章 貿易戦争から通貨戦争へ
第2章 救世主、武漢発新型コロナウイルス
第3章 香港掌握の狙いは金融覇権
第4章 ウクライナ戦争とペドロ人民元
第5章 デジタル人民元の虚と実
第6章 行き詰った高度成長モデル
第7章 習近平3期目の焦燥
第8章 ハイテク戦争
第9章 チャイナマネーに吞み込まれる日本
最終章 人民元帝国にどう立ち向かうか

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Posted by ブクログ

■はじめに
本書は2012年から2023年前半までの米中対立の背景を浮かび上がらせる一冊。2026年の今読んでも古びないどころか、「なぜ今の国際情勢がこうなっているのか」という問いへの答えが随所に見つかる。それは本書の基本認識——「カネとモノを巡る覇権争いは数十年単位の長期戦である」——が、現在の激動する世界情勢をそのまま言い当てているからだ。

■「カネ vs モノ」という対立軸
本書は、覇権争いを「通貨(カネ)」対「供給力(モノ)」という明快な軸で整理している。
米国はドル覇権によって世界の決済・金融システムを支配し、中国は世界最大のモノの生産拠点としての地位を武器に、そのドル体制を切り崩そうとしている。ウクライナ情勢も、「米中通貨代理戦争」として扱われている。ロシアの資源と中国のモノを人民元決済で結びつけることで、脱ドル化が着々と進んでいるからだ。
この「カネとモノ」という切り口は、複雑な国際政治をシンプルに整理する強力なレンズといえるだろう。

■人民元帝国の野望と脆弱性
中国の戦略は多層的だ。「一帯一路」を通じた人民元経済圏の拡大、デジタル人民元による監視社会との一体化、そして香港の金融機能の取り込みによる西側資金の吸収——いずれも「人民元帝国」確立へ向けた布石として描かれている。
しかし本書は、中国の強さだけでなく脆さにも触れている。不動産バブルの崩壊と膨大な債務は習近平政権の最大のアキレス腱であり、3期目に入った習政権の焦燥感の根っこにはこの「行き詰まった成長モデル」への危機感があると指摘する。強気な対外姿勢の裏側にある内部矛盾がこの先どのように展開するのか。

■日本への警鐘
本書が特に力を込めているのが日本への問題提起だ。長引くデフレと緊縮財政で経済力が弱体化する中、チャイナマネーによる不動産・企業の買い占めが静かに進んでいるという。中国富裕層も未来の見通しが不明瞭は人民元(基軸通貨ドルとの戦いの行く末はあまりに不透明)を不動産などの資産に替えておきたいのだ。
この問題への著者の処方箋は明確だ。日米同盟を「通貨・金融・貿易・軍事を統合した総合的な枠組み」へと昇華させ、人民元の脅威を日米共通の認識として共有すること。2026年現在、高市政権がトランプ政権とのパートナーシップを強化しながら防衛力の増強を進めている姿は、本書が求めた方向性と重なって見える。

■まとめ
世界最大のヘッジファンド、ブリッジ・ウォーターの創業者レイ・ダリオが「世界秩序は崩壊し、最終局面に入った」と警告を発したことがバズっている。その背景に何が起こっているのか。本書は「時代の構造を読む地図の断片」と言える。
読み終えた後に残るのは「備えよ」という静かで重い緊張感だ。激動の2020年代後半を生き抜くための基礎教養として、手元に置いておく一冊としたい。

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2026年02月23日

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