あらすじ
ドルを完全否定したくてもできない中国、
勝てるとわかっていても〝返り血〟が怖い米国
ロシアによるウクライナ侵略の本質は、米中の通貨代理戦争である。グローバル化された世界で基軸通貨ドルを握る米国に、ドル覇権に挑戦する、モノの供給超大国中国。その戦場のひとつがウクライナである。覇権争いはウクライナに限らず世界のあらゆる場所や分野で演じられている。
序 章 米中通貨戦争が始まった
第1章 貿易戦争から通貨戦争へ
第2章 救世主、武漢発新型コロナウイルス
第3章 香港掌握の狙いは金融覇権
第4章 ウクライナ戦争とペドロ人民元
第5章 デジタル人民元の虚と実
第6章 行き詰った高度成長モデル
第7章 習近平3期目の焦燥
第8章 ハイテク戦争
第9章 チャイナマネーに吞み込まれる日本
最終章 人民元帝国にどう立ち向かうか
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Posted by ブクログ
日経経済記者ワシントン特派員→60歳産経新聞社へ
米中覇権戦争が現代史の本質
ロシアのクルミヤ侵攻・ウクライナ戦争も米中代理戦争
中国習近平政権は米国の覇権潰しと中国の世界覇権を志向
GDPや外貨準備は世界で優位を築きつつある。
しかし株式・金融資産は圧倒的に牛耳っている
中国は少子高齢化が進み、家庭の育児力は減退している。
1.中国の対外資産・外貨準備は巨額、世界一で他国を圧倒する。
2026/07/20米中通貨戦争
対中国は日本の戦略の基本の一つ。現状分析とビジョン・戦略の確立が不可欠と思うがそのような取り組みはない。
戦前と同様、日本は世界情勢の中での戦略立案が苦手、どころか無能力レベル。
対米国・対中国を基本軸として、アジア・世界の中で日本はどう役割を果たし、貢献していくか。それがない国は虚しい。
著者の田村秀男氏は巨大な中国を相手に一歩もひかず対峙する。まさに「覚悟と戦略」(297)
早稲田大学ー日本経済新聞ー産経新聞というユニークな経歴が物語っている。AI時代になくてはならない記者。
1.「中国元」通貨制度の特異性と脆弱さ=米ドル依存と脱米ドル覇権体制の矛盾 中国習近平体制の急所だが知られていない
また習近平はなぜ「元の独立」を図らないのだろう 元にはまだそれだけの信任がないという事なのか
本書では中国共産党の支配体制が「独裁」であり究極の自由主義経済である「金融の自由化」を受け入れられない。
①世界一の外貨準備だが、海外からの負債も巨額 決してフリーマネー世界一ではない
②米ドルリンク 元の貨幣供給は外貨準備を意識している 元のフリーハンドは程遠い
③中国共産党支配下の金融である限り、自由な金融市場はありえず、「覇権通貨」は夢想ですらない。
2.巨額の現預金 5050兆円 cf. 日本1200兆円 米国2800兆円
しかも年間増加額1200兆円
3.外貨準備3兆ドル 対外負債4.7兆ドル →対外債務国に陥った(44)
①経常収支 ②外国からの直接投資 ③外国からの証券投資 ④誤差脱漏=資本逃避2000億ドル規模
4.ドル本位制の通貨政策(69)
米国の対中貿易赤字累積額(‘08-‘18) 3.4兆ドル
人民元増発額 3.5兆ドル ほぼ一致する
5.米国の世界地位は低下の一途
なお世界一は 半導体設計 外貨準備通貨 上場株式時価総額
Posted by ブクログ
■はじめに
本書は2012年から2023年前半までの米中対立の背景を浮かび上がらせる一冊。2026年の今読んでも古びないどころか、「なぜ今の国際情勢がこうなっているのか」という問いへの答えが随所に見つかる。それは本書の基本認識——「カネとモノを巡る覇権争いは数十年単位の長期戦である」——が、現在の激動する世界情勢をそのまま言い当てているからだ。
■「カネ vs モノ」という対立軸
本書は、覇権争いを「通貨(カネ)」対「供給力(モノ)」という明快な軸で整理している。
米国はドル覇権によって世界の決済・金融システムを支配し、中国は世界最大のモノの生産拠点としての地位を武器に、そのドル体制を切り崩そうとしている。ウクライナ情勢も、「米中通貨代理戦争」として扱われている。ロシアの資源と中国のモノを人民元決済で結びつけることで、脱ドル化が着々と進んでいるからだ。
この「カネとモノ」という切り口は、複雑な国際政治をシンプルに整理する強力なレンズといえるだろう。
■人民元帝国の野望と脆弱性
中国の戦略は多層的だ。「一帯一路」を通じた人民元経済圏の拡大、デジタル人民元による監視社会との一体化、そして香港の金融機能の取り込みによる西側資金の吸収——いずれも「人民元帝国」確立へ向けた布石として描かれている。
しかし本書は、中国の強さだけでなく脆さにも触れている。不動産バブルの崩壊と膨大な債務は習近平政権の最大のアキレス腱であり、3期目に入った習政権の焦燥感の根っこにはこの「行き詰まった成長モデル」への危機感があると指摘する。強気な対外姿勢の裏側にある内部矛盾がこの先どのように展開するのか。
■日本への警鐘
本書が特に力を込めているのが日本への問題提起だ。長引くデフレと緊縮財政で経済力が弱体化する中、チャイナマネーによる不動産・企業の買い占めが静かに進んでいるという。中国富裕層も未来の見通しが不明瞭は人民元(基軸通貨ドルとの戦いの行く末はあまりに不透明)を不動産などの資産に替えておきたいのだ。
この問題への著者の処方箋は明確だ。日米同盟を「通貨・金融・貿易・軍事を統合した総合的な枠組み」へと昇華させ、人民元の脅威を日米共通の認識として共有すること。2026年現在、高市政権がトランプ政権とのパートナーシップを強化しながら防衛力の増強を進めている姿は、本書が求めた方向性と重なって見える。
■まとめ
世界最大のヘッジファンド、ブリッジ・ウォーターの創業者レイ・ダリオが「世界秩序は崩壊し、最終局面に入った」と警告を発したことがバズっている。その背景に何が起こっているのか。本書は「時代の構造を読む地図の断片」と言える。
読み終えた後に残るのは「備えよ」という静かで重い緊張感だ。激動の2020年代後半を生き抜くための基礎教養として、手元に置いておく一冊としたい。