あらすじ
荻原亮子は恋人の安東匠とともに彼の実家を訪れた。その旧家は二つの棟で卍形を構成する異形の館。住人も老婆を頂点とした二つの家族に分かれ、微妙な関係を保っていた。匠はこの家との訣別を宣言するために戻ってきたのだが、次々に怪死事件が起こり……。
謎にみちた邸がおこす惨劇は、思いがけない展開をみせる!著者のデビュー作。
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Posted by ブクログ
推理がなんかとんとん単純に進んでいくな…と思ってたら伏線だった。
割と単純な展開だったけど、屋敷の構造がちゃんとトリックに使われてて、読みやすくて様式美なミステリーでおもしろかった。
一族の相関図と屋敷の見取り図はわくわくするね!
ただ、登場人物そこまで多くない割に影の薄い人が多くない…?祝子と福子が影薄くない…?
前読んだ金雀枝荘も何人か全然台詞なくて空気みたいなひといたけど、
今回もほとんどある2人が喋ってばかりで…
Posted by ブクログ
卍の形をした異形の館で起こる連続殺人事件。そこに主人公と恋人が巻き込まれていく中で、館の構造を利用した誤認トリックとその伏線には驚いたが、ストーリーの展開や探偵の描写が淡白で盛り上がりに欠けたと思ってしまった。
Posted by ブクログ
今邑彩のデビュー作。本作で鮎川哲也賞の前身である「鮎川哲也と十三の謎」の〈十三番目の椅子〉を受賞。
作中の舞台が卍の形をした異形の館ということもあって、これを利用したトリックがあるなと思いながら読み進めていきましたが、結果はさっぱりでした。
なかなか楽しめた作品でしたが、主人公の知人のぽっと出の画家が、名探偵顔負けな感じで主人公から事件のあらましを聞いただけで事件の真相を暴いてしまったことに少々拍子抜けしました。
Posted by ブクログ
● 感想
今邑彩のデビュー作。筆者が「中公文庫版あとがき」でも書いているが、新本格ブームの最中に出版された、本格ミステリである。筆者が改めて読んだ感想として、「意外に面白く読み耽ってしまった。」とされている。
大きな仕掛けは、アガサクリスティの「ナイルに死す」や、坂口安吾の「不連続殺人事件」と同じ。一見、犬猿の仲に見える、安東匠と布施宵子が、実は結託しており、共犯者であるというもの。共犯であればこそ成立するアリバイトリックを、共犯者ではあり得ないと誤信させるというプロット。このプロットそのものは、使い古されたものではあるけれど面白い。
この手の作品では、共犯者の関係をいかに自然に隠すかであり、その意味では、安東匠と布施宵子の関係は、主人公の萩原亮子をうまく使って匠に隠されている。プロローグの存在も含め、それと分かってみるとあからさまな伏線も仕込まれており、よくできた本格ミステリという印象
ただし、宵子と亮子がたまたま出会った福子を、字の文章で「祝子」と書くなど、フェアプレイとは言えない部分もある。全体のプロットが、使い古されたものということもあり、このあたりが、中公文庫版あとがきの「ミステリーファンの間では酷評に近かったんじゃないのかな。」という部分につながるように思う。
評価としては★3で。本格ミステリとしてよく練られた良作と感じるが、一方で、やはりメインプロットが「ナイルに死す」型なのはやや減点。このプロットで、筆力のある人が書けば、この作品程度の驚きはだれでも出せそう。そういった意味では、このプロットは、パクリとかいうレベルのものではなく、一つの形ともいえるか。
密室トリックと暗号トリックが陳腐なのも、メイントリックでないとはいえ、減点材料。全体の雰囲気と丁寧さがあるので、駄作ではないが、★3どまりと考える。
● あらすじ
萩原亮子は、婚約者の安東匠と、正月に匠の実家に行く。匠は、安東家から、いとこの布施宵子と結婚しなければ、養子縁組を解消するといわれていた。
その夜に、布施品子と安東美徳が殺害される。翌日、布施笑子と安東幸彦が襲われるが、これは幸彦の狂言。さらに翌日、安東隆広が殺害される。
安東隆広が布施品子と安東美徳を殺害し、猫を利用したトリックで密室を作り、自殺したと思われた。
布施宵子が自殺するという騒動を起こし、安東匠は実家に戻る。安東匠は心変わりをし、萩原亮子との婚約は解消。これで話が終わると思われたが…。
1か月後、萩原亮子は、安東匠の噂を聞くために、安東匠と知り合った小杉章介の家に行く。そこで、連続殺人事件の話を聞き、事情を話すと、匠と宵子が、昨年の10月に、恋人然として東京で会っていたのではないかという話を聞く。
事件の真相は、安東匠と布施宵子による共犯。そもそも安東匠が萩原亮子と知り合い、実家に連れて行ったことも計画の一環だった。
品子を殺害し、宵子が美徳を誘って、殺害。その現場を萩原亮子に見せる。
小杉章介は、真相を見抜く。証拠は萩原亮子が福子と出会っていたことと、ボタンを落としたこと程度。しかし、これらを利用し、警察に相談し、警察が安東家を訪れるところで物語は終わる。
● 事件
● 最初の殺人事件
被害者→布施品子、安東美徳
● 安東幸彦の証言
誰かが部屋の前を歩く音を聞いたと証言
● 2番目の事件
布施笑子と安東幸彦が襲われる。
→安東幸彦が布施笑子を襲い、自身も襲われたと狂言
● 3番目の事件
被害者→布施隆広
エアコンがついた部屋での密室殺人
ダミーの真相→猫を利用し、密室を偽造した自殺
ワープロに遺書を偽造。パスワード解読の暗号
● 登場人物
萩原亮子
ヒロイン。安東匠の婚約者として、安東家に行き、殺人事件に巻き込まれる。
安東匠
探偵役と見せかけて真犯人
布施宵子
安東匠、萩原亮子と敵対する存在と見せかけて、実は安東匠とつながる真犯人。布施福子の娘で、品子の妹
安東いつ
安東匠の祖母
布施祝子
安東いつの長女。安東匠の義母
布施福子
安東いつの次女
安東美徳
布施祝子の息子。
安東三恵
安東美徳の妻。幸彦の母。日本人形のような美人
布施品子
布施福子の娘
布施隆広
布施品子の夫。地方大学の助教授
布施笑子
高校受験中
安東幸彦
高校受験中
原口春実
布施笑子の家庭教師
水島喜一
安東幸彦の家庭教師
小杉章介
絵描き。萩原亮子の友人。萩原亮子と安東匠が会うきっかけとなる人物
● プロット
安東匠と萩原亮子が恋人と見せかけて、実は、萩原亮子は安東匠にだまされている。安東匠は布施宵子と裏でつながっており、連続殺人を計画する。
● 物理トリック
卍の館の構造を利用した場所の誤認トリック。萩原亮子に場所を誤認させ、偽の殺害現場を見せることで、アリバイを偽造した。
● 叙述トリック
● プロローグの男女は、一見、誰と誰か最後まではっきり書いていない。真相は、安東匠と布施宵子。エピローグにつながる。
● その他
猫を利用した密室トリック、パスワード解読の暗号トリックあり
Posted by ブクログ
今邑彩のデビュー作ということで期待して読んだ。
この作家の小説はいつも最初から最後まで引き付けられて一気に読んでしまうが、これは途中すこしダレてしまった。
話し自体はミステリーでよくある「館で起る殺人」で、特に新鮮さはない。
途中まではお約束通り殺人が起こり、犯人が判明するものの…という展開。ここまでは正直退屈だった。
しかし物語の主人公である亮子が一人で東京に戻ってから真相が次々に明るみになるのが面白く、今までの退屈さが嘘だったかのようにグイグイ読めてしまった。
なんとなく真相は予想出来ていたものの、やはりこの作者の小説の醍醐味はラストのどんでん返しだなぁと改めて感じた。