【感想・ネタバレ】関東大震災 その100年の呪縛のレビュー

あらすじ

東京の都市化・近代化を進めたといわれる関東大震災(大正12年/1923年)は、実は人々に過去への郷愁や土地への愛着を呼び起こす契機となった。民俗学や民藝運動の誕生、民謡や盆踊りの復興は震災がきっかけだ。その保守的な情動は大衆ナショナリズムを生み、戦争へ続く軍国主義に結びつく。また大震災の経験は、合理的な対策に向かわず、自然災害への無力感を〈精神の復興〉にすりかえる最初の例となった。日本の災害時につきまとう諦念と土着回帰。気鋭の民俗学者が100年の歴史とともにその精神に迫る。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

関東大震災の発生から東日本大震災までの、日本の、日本人の歩みを見ていく。18世紀に起こったリスボン地震はヨーロッパに災害を社会現象として捉えたのに対して、日本は関東大震災を、さらに東日本大震災までそれから続く地震に対して自然災害とのみ捉え、社会現象として対策を抗じきれていなかった。実際、あの渋沢栄一でさえ堕落した社会への神の制裁という天譴論を表明している。地震自体は自然災害だが、多くは社会現象(デマ、差別、迷信、etc)による被害者なのだ。

0
2025年06月05日

Posted by ブクログ

当方は気になりませんでしたが、確かにタイトルとは乖離があるように思われます。関東大震災の詳細な記録というよりは、歴史の中の位置づけを記載しようとされたのかなと想像しました。個人的には文化人に関連した内容や、被害の少ない地域の人間の行動についてでした。東日本大震災で甚大な被害にあった福島県で今も定期的に過ごす身としては、むしろ周囲の方が盛り上がっている感覚というのはなんとなくわかる気がして、それが読めただけでも価値があるように思いました。自分が被害を受けていない罪悪感はなんとなく東日本大震災で感じたので、そういう意味でも何か駆り立てられるのはわかる気がしています。

0
2024年07月01日

Posted by ブクログ

災害は一瞬にして日常を奪う。だがその記憶は語り継がれることで「文化」となる。関東大震災から100年畑中章宏は災害民俗学の視点で人々がいかに災いと向き合ってきたかを掘り下げる。震災は単なる自然現象ではなく差別や流言、国家の対応をも浮き彫りにする鏡でもあった。喉元過ぎれば熱さを忘れる――そんな風化への警鐘とともに記憶をつなぐことの意味が問われている。過去に学び未来を守る知恵の継承が必要となる。

0
2025年08月08日

Posted by ブクログ

関東大震災後の政策を現代まで民俗学的アプローチで考察。日本人は災害を社会現象ととらえずに精神的問題ととらえているため、原因と結果を曖昧にしがちであり、その結果軍国主義に走ってしまうきっかけとなり、地に足かついた復興はねじれていくと指摘。関東大震災をキーにした分析としては異色ですが、なかなか当を得ていると感じました。防災復興が空回りしている原因もここかもしれませんね。

0
2023年12月24日

「雑学・エンタメ」ランキング