あらすじ
英雄か? テロか? 質朴な家具職人の物語
「戦争を回避したかった」と供述した男は、質朴な家具職人で、単独犯だった。ナチの犯罪性を見抜き、世界の破局を確信していた暗殺者の生涯、事件の深層に迫り、歴史的評価を示す。
1939年11月8日、21時20分、ミュンヘンのビアホール「ビュルガーブロイケラー」で時限爆弾が爆発し、8名死亡、63名負傷した。折しもヒトラーがミュンヘン一揆の記念演説を例年よりも早く終え、会場を去ったわずか13分後だった。同日、スイス国境で男が逮捕された。彼こそヒトラー爆殺未遂犯、36歳のエルザーだった。
エルザーは、1944年ヒトラー爆殺に失敗した国防軍将校シュタウフェンベルクと異なり、貴族でもエリートでもなかった。犯行を自白したが、共産党組織に名前だけ属していただけの「イデオロギーなき」人物で、その背後にはいかなる組織、共犯者、支援者もなかった。しかしナチの目論見は、エルザーを「英国スパイ」としてプロパガンダに利用し、戦後に見世物裁判を開くことだった。
本書は、独のノンフィクション作家が、エルザーの人格と行動を、丹念な取材と最新研究に基づいて見事に再現し、近年の歴史的位置づけにも言及する。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
1939年11月8日に起こったヒトラー暗殺未遂事件の犯人、ゲオルク・エルザーについてのルポタージュ。
天候悪化により空路から列車に切り替えてベルリンに戻ることになったヒトラーは、ビュルガーブロイケラーでの演説を予定より早く切り上げることにより、爆発から間一髪逃れることになる。この暗殺未遂事件は、組織的なものではなく、1人の男が引き起こしていた。犯人のゲオルク・エルザーが爆破事件を決行したのは何故なのか?
もしも暗殺が成功していたら、歴史は変わっていただろうと思うと、とても複雑な気持ちになります。
Posted by ブクログ
ヒトラーがナチ党で熱弁を振るい、ドイツがまた戦争へと向かった政府に反抗した人がいたとは知らなかった。
反抗とはいえかなり自己中な方法であったように思う。
ゲオルク・エルザーという男性の生い立ちとその性質が紐解かれる形式のノンフィクションかと。
もしも世が世でその真面目な性格と腕の良さが発揮できる場所があれば
この事件は起きなかったように思う。
改めて人は置かれた場所で変わってくると言うことを思わずにはいられない。
時限爆弾でヒトラーを爆殺させようなんて人がいたのかと感慨深い。