あらすじ
※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。
歌人・東直子が、今の言葉で百人一首をすべて詠み直し、より身近に感じられるようになりました!
自身によるカバー・本文イラスト、作品解説付き。
◎花々は色あせるのね長い雨ながめて時は過ぎゆくばかり
(花の色はうつりにけりないたづらに我が身世にふるながめせしまに 小野小町)
◎マイホームは都心の東南いい感じ憂鬱山と人は言うけど
(わが庵は都のたつみしかぞ住む世をうぢ山と人はいふなり 喜撰法師)
◎死んでもいいと思ってたけど君のために長く生きたい一緒にいたい
(君がため惜しからざりし命さへ長くもがなと思ひけるかな 藤原義孝)
◎一夜君が鳥の鳴きまねしてきても逢坂の関越えさせません
(夜をこめて鳥のそら音ははかるともよに逢坂の関はゆるさじ 清少納言)
百人一首を一気読みすると、そこに確かな時代の流れがあり、人間関係のう ねりがあることに気づく。のどかな景色から始まり、恋のかけひきなどで生じ た恨み辛み悲しみが蠢く一方、愛を喜び、動植物を愛で、景色の美しさに感嘆 する。遠い遠い昔の和歌の中の人の心が、生々しく胸に浮かび上がってくる。 交響曲のようにそれらが響き合う醍醐味に、深く感動した。小倉百人一首を編 纂したとされる藤原定家の手腕にしみじみと感じ入る。
(あとがきより)
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
歌人の東直子さんが子どもの頃から歌留多として親しんできた百人一首を今改めて全首をじっくりひもとき、現代の言葉で五七五七七の現代歌集として再構築した歌集。
私は子どもの頃、百人一首を覚えるような宿題はなかったため百人一首、全首をまとめて読んだのは初めてでした。
東直子さんの訳した歌と訳文も付いているので、とてもわかりやすくてよかったです。
その中から東直子さんの訳文の方がよかった、わかりやすかったと思った歌と本歌をいくつか載せます。
比べ読みしていただけたら嬉しいです。
○大空をふりあおいだらああ春日、三笠の山に出ていた月が
安倍仲磨
○天野原ふりさけ見れば春日なる三笠の山に出でし月かも
○これなのか旅立つ人も帰る人も別れてはまた逢坂の関
蝉丸
○これやこの行くも帰るも別れては知るも知らぬも逢坂の関
○その名前「逢坂山のさねかづら」ひっそり秘密に逢いたいのです
三条右大臣
○名にし負はば逢坂山のさねかづら人にしられでくるもよしがな
○天の光のどかにそそぐ春の日にそぞろごころに花は散りゆく
紀友則
○ひさかたの光ののどけき春の日にしづ心なく花の散るらむ
○約束をしたよね涙流しつつ末の松山波越すまいと
清原元輔
○契りきなかたみに袖をしぼりつつ末の松山波越さじとは
○不本意なこの辛い世を生きぬけばきっと恋しいこの夜の月
三条院
○心にもあらでうき世に長らへば恋しかるべき夜半の月かな
○滝川の岩に砕けてわかれてもいつかはきっとまた逢いましょう
崇徳院
○瀬をはやみ岩にせかるる滝川のわれても末に逢はむとぞ思ふ
○秋風にたなびく雲の切れ目よりこぼれる月の光きよらか
左京大夫晃輔
○秋風にたなびく雲の絶え間よりもれ出づる月の影のさやけき
○悲しめと月が言うのか(そうじゃない)月にかこつけ流れる涙
西行法師
○嘆けとて月やはるもの思わするかこち顔なるわが涙かな
○花の降る嵐の庭の花の雪ふるびゆくのは私のからだ
入道院太政大臣
○花さそふ嵐の庭の雪ならでふりゆくものはわが身なりけり