【感想・ネタバレ】日蝕のレビュー

あらすじ

ジョージ・オーウェルが「傑出した小説」と絶賛。75年ぶりに発見されたドイツ語原本からの初翻訳。

かつて革命の英雄であった主人公ルバショウは、絶対的な権力者「ナンバー・ワン」による粛清の標的にされ、でっち上げられた容疑で逮捕・投獄される。隣の独房の囚人と壁を叩いた音によって会話を交わし、これまでの半生を追想するうちに、革命家としての自分の行動の正当性に対する確信が揺らぎ始める。取り調べを受ける中でルバショウは、でっち上げられたグロテスクな罪を自らの意志で自白していく。

アンチ・ユートピア小説であり、ザミャーチンの『われら』、ハクスレーの『うるわしき新世界』、オーウェルの『一九八四年』、そしてブラッドベリの『華氏四五一度』と比較し得る。残念なことに、これらはいずれも、今日に至るまでその現実性を少しも失っていない二十世紀からの警告の声である。(ドイツ語版序文、マイケル・スキャメル)

スターリン専制下のソビエト連邦で一九三〇年代後半に行われたモスクワ裁判の犠牲者をモデルとした政治小説である。それと同時に、ドストエフスキーの『罪と罰』や『悪霊』や『カラマーゾフの兄弟』の系譜を受け継ぎ、政治と倫理の問題をめぐる議論の交わされる観念小説でもある。さらには、全体主義的な体制下の監獄で、一人で戦わねばならなかった孤独な人間の心の動きを丹念に追ったサスペンスタッチの心理小説でもある。(「訳者あとがき」より)

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Posted by ブクログ

ネタバレ

イデオロギーのためなら人の命を奪うことすら意味があると考えて行動した主人公が、「考えて行動したから」という理由で処刑される…。共産主義の実態がこれでもかと書き綴られています。

投獄され尋問される主人公の心理描写が見事で、傑作と称される理由もよく分かりました。

ただ、何だろう。この本を客観視すると大変よくできた見事な本だと賞賛するほかないのだけど、読後感はあまりよくないのです。作者のケストラー自身が主人公ルバショウ同様に最後まで考え抜くタイプなのでしょうが、過ぎたるは及ばざるが如しで、作者の精神的な不健康さが行間から滲み出てくるような違和感を感じるようになり、最後まで読むのが辛かったのです。

1
2025年06月10日

Posted by ブクログ

80年前に書かれたというが全く色あせない政治や経済、革命や人間性その心理に深く踏み込んだ傑作。ディストピア小説と言われるが、それより哲学書のような趣もあって、いろいろ考えさせられた。

0
2024年06月15日

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