【感想・ネタバレ】グローバル・バリューチェーンの地政学のレビュー

あらすじ

■複雑に張りめぐらされた国際分業ネットワークを、付加価値という視点から読み解くグローバル・バリューチェーン分析。OECD国際産業連関表など最新のデータをもとに、米中対立を中心とする近年の経済対立、経済安全保障問題を見通す。

■たとえば、シャツの生産において、ミラノのデザイナーがデザインを手がけ、それをもとにロンドンの職人が型紙を起こし、最後にダッカの工場で大量生産されるなど、生産工程は細かく切り分けられ、各工程は、その業務が最も効率よく行われている国へと移転されるようになった。
輸送技術や情報通信技術の進歩、そして自由貿易を支える様々な制度の発展により生産システムは大きな変容を遂げている。

■このような国境を越えた生産分業についてその構造に目を向けると、資産や雇用機会、テクノロジーといった「経済的価値」の分配をめぐる国際的なパワーゲームが見えてくる。生産分業の構造は企業の力関係を反映しており、究極的にはこの力関係こそが、ゲームにおける価値配分の大きさと方向性を決めるからだ。グローバル・バリューチェーンの価値ネットワークの誕生は、安全保障の考え方に少なからず影響を及ぼしている。国際経済ネットワークの「かたち」と国家間のパワーバランスを、本書では読み解いていく。

第1章 地政学への接近
第2章 チョークポイントはどこにあるか
第3章 中国の驕り、米国の恐怖
第4章 米中デカップリングのゆくえ
第5章 戦術から戦略へ
第6章 GVCによる経済安全保障

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

これは勉強になる。

何が?と言う各論の話ではなく、GVCと言う世界観を理解できるかどうか、と言う話。

これが理解出来ないと、今後のビジネスが見えて来ない。

0
2023年09月30日

Posted by ブクログ

経済安全保障を語る上で重要となってきた、グローバル・バリューチェーン(GVC)に関して包括的に述べられており、概要的な部分から、バリュエーション分析で用いられる種々の指標、および米中対立に関する部分などが、全体的にわかりやすくまとめられている。
欧米諸国と中露の対立が深まる中で、日本は国際的にどのように立ち回る必要があるかという点で示唆を与えてくれる本。国際的なGVCの中で日本の存在感を高めるには、日本だけが保有する資源(工業製品等を含む)の開発/利活用がこれまで以上に重要視されるように思えた。

0
2025年09月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

サプライチェーンマネジメントに関心を持ち始めたので読んでみた。以下勉強になったポイント

サプライチェーンがどれだけある国に依存しているかの指標として量的な指標(付加価値貿易指標)だけでなくどれだけその国を通過するか(通過頻度指標)の2パターンあり、国際産業連関表からいずれも可視化することが出来る。

一方で国際産業連関表の限界として、産業部門分類が粗い(半導体は「コンピュータ、電子·光学機器」に含まれ半導体関連製品の分析ができない)ことや製品の代替可能性に関する情報がないことも挙げられている。

経済安全保障の姿勢として、代替性·模倣可能性の低い技術を開発するか、国際標準化等の制度面で優位に立つことによってサプライチェーンの中核に自国企業を位置付ける攻めの姿勢が重要。輸出管理等の守りの姿勢では自国企業にも少なからず悪影響を及ぼし国際競争力を阻害し、サプライチェーンの中で脆弱な立ち位置に追いやってしまう結果となる恐れがある。

米中デカップリングの議論では、中国で操業する日本の現地法人が米国からの調達品を25%以上含む製品を中国企業へ供給していた場合、突如その中国企業が米国のエンティティリストに指定された場合、米国は輸出管理規則に基づき取引の許可申請を求めることができ、一方でもし現地法人が米国当局の要請に従ったことにより取引相手の中国企業が損害を被った場合は、その中国企業は「外国法·措置の不当な域外適用の阻止弁法」に基づき現地法人へ損害賠償を求めることができる。といったように米中どちらの立場に立つか踏み絵を踏まなければならない状況にある。

米がIPEFとB3W、中が一帯一路によってフレンドショアリングを推し進めるなか、ASEANはバランス外交によってアジア太平洋地域のサプライチェーン安定化に寄与している。ASEANはRCEPの全加盟国と個別にFTAを締結済みであるが、日中·日韓の非FTA加盟国を囲い込むことによって地域の経済安定化を実現することを目的にRCEP締結にこぎつけた。ASEAN域内の生産ネットワークはサプライチェーンの「チョークポイント」となる中継地点を担っているケースも多く、日本はASEANを自国陣営に取り込むのではなく、ASEANの包括的·中心的な外交方針を支持する関係性を築いていくべき。

0
2024年03月02日

Posted by ブクログ

決して易しい本だとは思わなかったけど、面白かった。
国際産業連関なんて初めての世界だった。
考えてみれば、サプライチェーンが海を越えるのが当たり前だから、産業連関だってインターナショナルなはず。

この本のいいところは、米中の経済制裁を分かりやすくまとめてくれていること。
後から、あの時どっちがどうしたんだっけ?みたいなことを振り返りやすい。

あと、安保は「囚人のジレンマ」だという指摘もなるほどと思った。
(囚人のジレンマがわからない人のための簡単な解説もついている)

0
2023年10月26日

Posted by ブクログ

基本的なバリューチェーン分析について紹介しつつ、近年の安保環境(特に米中関係)との関係について論じる。
米中デカップリングの動きはまとまっていて分かりやすいが、期待したほど重厚な内容ではなかった。グローバルバリューチェーンや経済安保という分野自体が新しくて蓄積が大きくないというのも影響しているのだろうか。

0
2024年06月05日

「ビジネス・経済」ランキング