あらすじ
米中の覇権争いでは終わらない。世界は戦争の世紀に突入した――
最前線! リアルタイムの戦争研究
グローバリゼーションが進んだ世紀におけるウクライナ戦争の開始は、
「終わらない戦争」の始まりを告げる出来事となった。
見えない情報の行き交うサイバー戦、イーロン・マスクのスターリンクに
代表される民間による宇宙利用もが戦争の命運を握る。
ウクライナ戦争以後、戦争はどう変わったのか?
米中の覇権争いでは終わらない新たな問題群を前に、
台湾有事を抑止することは可能なのか?
ロシア・ウクライナ戦争をケーススタディに、
「大国間競争」に埋め込まれた「終わらない戦争」について考える。
目次
第1章 ロシア・ウクライナ戦争はなぜ始まったのか 高橋杉雄
第2章 ロシア・ウクライナ戦争――その抑止破綻から台湾海峡有事に何を学べるか 福田潤一
第3章 宇宙領域からみたロシア・ウクライナ戦争 福島康仁
第4章 新領域における戦い方の将来像――ロシア・ウクライナ戦争から見るハイブリッド戦争の新局面 大澤淳
第5章 ロシア・ウクライナ戦争の終わらせ方 高橋杉雄
終章 日本人が考えるべきこと 高橋杉雄
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Posted by ブクログ
本書では、「なぜロシアによるウクライナへの軍事侵攻は起きたのか」換言すると「なぜロシア(現状変更者)への抑止は機能しなかったのか」から論考を始め、どのように始まったかを見た後に、終わるとしたらどのようなシナリオを考えることができるかを見ていく。
(国内の事情を捨象する)システムレベルから見れば、背景には冷戦終結後の米国一強体制から、ロシア側の資源価格高騰に起因する経済復興と発言力の強まり、また米国側の対中政策へのシフトによる相対的な欧州の重要性の低下と、ロシアにとっての「機会の窓」は確実に広がっていたことが窺える。
また、新START後の体制で、ロシアの核戦力と米国のそれとのギャップが埋まる中で、戦略レベルでの安定性が構築されたことで、ロシアから見れば地域での侵攻が核戦争を引き起こすことはないだろうという、戦略レベルでの安定性が地域レベルでの不安定性を引き起こすという(”stability-instability paradox”)が観測されているのは、冷戦期に大国同士の交戦はなかったものの、地域単位での紛争(代理戦争)が生じた時代と根底は変わってないことが窺える。
ただ、今回米国側が実施していた「探知・開示による抑止」が失敗し、なぜロシア側にコストとして「認識」されなかったのかは掘り下げていく余地がありそうで興味深い。
この戦争の終わり方に着いては複数のシナリオの記載があるものの、本書で書かれているとおり双方にとってそれぞれが何者であるかというアイデンティティと結びついているため、どの段階で戦況を固定化させたとしても、双方にとって飲み込めないという終わらせることが非常に難しい点、あとがきにあるとおり、一度始まってしまうと終わらせることが非常に難しいため、始めさせないようにすることが重要という点は非常に首肯する。