あらすじ
脳に気づかれることなく「現実」を操作できる時代
あなたにとって「現実」とは?
「現実」って何? この当たり前すぎる問いに、解剖学者、言語学者、メタバース専門家、能楽師など各界の俊英が出した八者八様の答えとは。SR(代替現実)や脳と機械をつなぐBMI(ブレイン・マシン・インターフェース)などのテクノロジーの進展により、脳に気づかれることなく「現実」を操作できるようになった現代。科学と哲学の融合した「現実科学」がここから始まる。あなたの脳をあらゆる角度から刺激し、「現実」をゆたかにするヒントを提示する知の冒険の書。
〈本書目次より〉
現実とは『自己』である――稲見昌彦(東京大学教授/インタラクティブ技術)
現実とは『DIY可能な可塑的なもの』――市原えつこ(メディアアーティスト)
現実とは『あなたを動かすもの』――養老孟司(解剖学者)
現実とは『自分で定義できるもの』――暦本純一(東京大学教授/拡張現実)
現実とは『今自分が現実と思っていること』――今井むつみ(慶應義塾大学教授/言語心理学)
現実とは『現実をつくる』というプロセスを経ることによって到達する何か――加藤直人(クラスター株式会社CEO/メタバース)
現実とは『普段のルーティンな自己がちょっとずれた時に押し寄せてくる、すごい力』――安田登(能楽師)
現実とは『祈りがあるところ』――伊藤亜紗(東京工業大学教授/美学)
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
現実の捉え方について考えを深められた
自分の身体を通して感じたことをどのように解釈するか、そのプロセス含めて現実となる
身体状況や知覚能力などの能力面、物事の捉え方といった文化的側面は個々人それぞれであるため各人の現実派異なったものとなる
その現実を表現する際の言語も知覚したものの内、解釈し分類した結果の言語化が行えたもののみ表現可能なため、言語で共有できるものは全体のごくわずかとなる
脳内の言語化前のイメージが共有できるようになると世界は広がる可能性もあるがハレーションが起こる可能性もあるのではないか
Posted by ブクログ
現実の本質を問う対談集。私たちは独自の現実を感じ、その一部を共有するのみ。特にAR技術の発展で「現実」の定義に疑問が。この著作は多角的な視点で考察を深める手引き。続編に期待し、10年後の「現実」の意味が変わるのではと予感。
Posted by ブクログ
若い頃に「唯脳論」を読んでいたせいか、自分の現実感も養老先生の影響を受けていることを再認識しました。
また、本書から発想が飛躍して、SF小説の「都市と都市」を思い出しもしました。あれは異なる都市がモザイク状に重なっているという設定だったと記憶していますが、そのような設定を可能にする「現実感の操作」も、いつかテクノロジィによって実現するのかもしれません。
そして、「すべてがFになる」からの引用を見て、そういえば森博嗣さんも「現実とは何か」について一家言ある人であったことも思い出しました。
Posted by ブクログ
現実について著者に多様な専門家との対談をまとめた一冊。日常生活であまりにも当たり前に受け入れらているが故に改めて考えると全く掴めない「現実」という概念。私たちはそれぞれに自分の認知の上に自分だけの現実を立ち上げ、そのわずかな重なりの部分を言語などを通して通じ合う。このような人間の変わらない本質的な性質は古代の神話から、最新の情報技術まで語り継がれている。
現実と意識と夢うつつを行ったり
特にARの技術で現実とは何だ?という問いが日常的に飛び交っている昨今、そもそも自分は何を意識していると言えるのか、夢を見ている時とどう違うのかなどなど、様々な観点、知見を通して考えさせてくれる愉快な著作です。まだまだ多方面に渡って対談が残っているそうなので是非続編を期待します。それにしてもあと10年も経てば「現実」という意味は違った理解・用語として認知されているような気もします。