【感想・ネタバレ】英国古典推理小説集のレビュー

あらすじ

「殺人があったのは二十二年前の今日――」.ディケンズ『バーナビー・ラッジ』とポーによるその書評,英国最初の長篇推理小説と言える「ノッティング・ヒルの謎」を含む,古典的傑作八篇を収録(本邦初訳を含む).読み進むにつれて,推理小説という形式の洗練されていく過程がおのずと浮かび上がる,画期的な選集.

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Posted by ブクログ

ネタバレ

推理小説というジャンルの歴史を辿る。

まだ推理小説を誰も知らない頃に書かれた作品たちがだんだんと推理小説っぽくなっていく。謎があって、探偵がいて、推理する。ポーの書評にあるように、フェアだとか、伏線がちゃんとしているかとか、そういうのもまだ整っていない。ポーは結局謎を解き明かすより、謎を謎のままにしておく方をよしとしたと解説にはあるが、その他のおびただしい人たちが「犯罪(あるいは何らかの事件)が発生し、それを探偵役の人物(素人もしくは玄人)が論理的な推理を働かせて解決するプロセスを主眼とした物語」(p.3)である推理小説を作り上げてくれてよかったと思う。だって面白いもん。もちろん解かれない謎も面白いけど。

コリンズ「誰がゼビディーを殺したか」語り手=探偵役であり、しかも犯人は愛した人だったと気付く。正義感というよりは、愛する相手と結婚するために出世を求めて事件解明に勤しんで、得た結末がこれということに味がある。彼女の罪を問えなかったことを死を目前にして懺悔するスタイルなのもセンチメンタルでよい。推理小説が単なるパズルじゃない意味がある作品。

バーク「オターモゥル氏の手」割と早いうちに警官が犯人だと気付くけど、文体に面白さがあって印象的な作品。手がかりの出し方もフェアでだいぶ洗練されてきた感じがある。

フィーリクス「ノッティング・ヒルの謎」習作というのか、たくさんの手紙から手がかりを結びつけて謎を解いていくパターンだけど、解説でも指摘されているように日付等のミスがある。もし推理小説が確立してからならば読者にフェアであるために徹底的にチェックされた部分だろうと思うけど、この細かさで大量の手紙や証言を書いて真実を浮かばせる長編をジャンル初期に書いたところに、逆にエネルギーを感じる。今でいう超能力に推理の重大な部分がかかっているので、そこは現代ではNGだろうけど、当時はOKだった考えなのでそれはそれ。自分は勝手に眠くなる気体でも流して都合の良いようにしていたのかと思った。

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2025年08月13日

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