【感想・ネタバレ】ハイデガーの哲学 『存在と時間』から後期の思索までのレビュー

あらすじ

「20世紀最大の哲学者」ハイデガーが生涯を賭けて問い続けた「存在への問い」とはどのような「問い」だったのか? 変容し続ける思索の跡を丹念にたどり、その最後にたどり着いた境地に迫る。また、近年「黒ノート事件」によってスキャンダルを巻き起こした悪名高い「ナチス加担」がいかなる哲学的見地からなされ、そしていかなる理由からナチス批判に転じたのかについても徹底的に解明する。「道であって作品ではない」――ハイデガー哲学の魅力と魔力を余すところなく捉えた力作。

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Posted by ブクログ

骨太な読書になりました。
ハイデガーの『存在と時間』については大体理解していたつもりだったが、著者の胆力ある丁寧な説明のおかげで理解がより深まった。人生論としての存在という表層的な思考に留まることなく、ハイデガーが追い求めた思索の過程とその結果生まれ得た多くの概念に肉薄していく。
存在という概念に取り憑かれたハイデガーおじさんは、その思考の果てに存在を超出していく。
ナチとの繋がりについてはフェアな立ち位置から出来るだけ冷静に分析していて興味深い。
ツェランとのエピソードはなぜか泣いてしまったた。
ただハイデガーの胡散臭さは免れ得ない印象。

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2024年05月22日

Posted by ブクログ

ハイデガーって、『存在と時間』の解説はけっこうあるんだけど、後期の著作を含めて整合的に理解できる解説ってほとんどないんですよね。これはかなり理解しやすい形でまとめられている。ただ、ナチに関してはちょっとハイデガーに好意的すぎない?! というのと、最後半の「主体性」をめぐって「その"主体性"の"主体"は誰?」「ひとつに収斂しないのはなぜで、その違いは何?」という疑問がぬぐえなかった。またいつか読んでみての感想が自分でも楽しみ。

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2023年10月03日

Posted by ブクログ

ハイデガーの思索をつらぬく「存在」をめぐる問いとはいったいなんだったのかということを、ていねいに解説している本です。

著者はすでに『ハイデガー『存在と時間』入門』(講談社現代新書)を刊行していますが、本書でもふたたび『存在と時間』におけるハイデガーの思索を振り返っています。とはいえ、前著とは異なる観点から検討がなされていることはいうまでもありません。本書では、『存在と時間』の既刊部分ではじゅうぶんに展開されることのなかった、「存在」をめぐる問いとのかかわりに焦点をあてて、ハイデガーの議論が見なおされます。

つづいて、中期および後期の思想の検討がおこなわれますが、ここで著者はハイデガーとナチズムの関係についてのくわしい考察を展開しています。ハイデガーの反ユダヤ主義的な言説がしるされた「黒いノート」の公刊以来、ハイデガーのナチズムへの加担は決定的になったとみなされていることに対し、著者は異議申し立てをおこないます。

ハイデガーの「存在」とは、さまざまな存在者がその真理をあらわにする場所であり、そこには和辻哲郎の主張する「風土」としての性格がふくまれていると著者は主張します。こうした発想にもとづいて、ハイデガーはドイツ民族が彼らの置かれている「風土」において「存在」を迎え入れることの意義を説きました。著者によれば、こうしたハイデガーの議論は「存在」の性格にそくした、どこまでも哲学的な思索なのであり、ナチズムの信奉者のあいだに見られた、生物学的な意味での民族を称揚する議論とは無縁のものです。

こうした立場にたって、ハイデガーはみずからの思想にもとづく大学改革を夢見たものの、そのくわだては失敗に終わります。その後ハイデガーは、ナチズムをふくめて近代的な発想そのものを根底から批判する思索をおこなっていたと著者は主張します。また、しばしばハイデガーの不誠実さを示すと見られてきた詩人のパウル・ツェランとのかかわりについても、通説の誤りを明らかにしています。

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2025年10月04日

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