あらすじ
冬のバラを好み、わざわざエジプトから取り寄せていたという皇帝ネロ。晩餐会で天井から大量のバラの雨を降らせ、客を窒息させたほどの愛好家だった暴君ヘリオガバルス。古代ローマ人は悪酔い防止にバラの花冠が効くと信じ、中世の詩人や作家、画家はこぞってバラを描いた……。ただの「花」がなぜ憧れの象徴となり、かくも人々を虜にし続けるのか。野生から改良種まで、世界の多様な品種を眺めつつ、はてなき美の世界を旅する!
まえがき
第1章 クノッソス宮殿の謎
クノッソス宮殿/青い鳥/それはバラか、バラなら/バラとする根拠/ロナ・ハースト/バラは単なる花
第2章 ギリシアとバラ
テオフラストス/バラを詠む/バラ熱の兆し/何が魅力か
第3章 ローマとバラ
高貴な花へ/日常を飾る花に/休日はペストゥムで/ローマのバラとは/バラの花環/生活に欠かせぬ花に/バラの下で
第4章 バラの植物学
レーダーはいった/バラの容姿/バラの葉/托葉/バラの花
第5章 バラの園芸化の歴史を辿る
八つの野生種/一八六七年/グループとは/オールド対モダーン
第6章 オールド・ガーデン・ローズ
ローザ・ガリカ/バラ水のバラ/ジョセフィーヌの幸運/2000を超す園芸品種/ダマスクバラ/バラ戦争/マルメゾン庭園のダマスクバラ/秋に返り咲くダマスクバラ/秋に咲くダマスクバラの再来/ローザ・アルバ/ボッティチェルリの『ヴィーナス誕生』のバラ/<ジャンヌ・ダルク>/キャベジ・ローズあるいはセンティフォリア
第7章 モダーン・ガーデン・ローズの黎明期
コウシンバラとは/ハーストの見解/コウシンバラの標本/英国のコウシンバラ/英国外でのコウシンバラ/二つのチャイナ・ローズと二つのティー・ローズ/スレーターズ・クリムソン・チャイナ/パリ自然史博物館の標本/カルカッタ植物園/パーソンズ・ピンク・チャイナ/ヒュームとパークスのティー・ローズ/ノワゼットバラの誕生/ブルボン
第8章 バラの花譜
バラの画家ルドゥーテ/マルメゾンの館/フランスのバラ図譜/英国のバラ花譜/ドイツ・オーストリアのバラ花譜
第9章 世界の野生バラ
〇中国のバラ
〇ヒマラヤのバラ
〇西アジアのバラ
〇ヨーロッパのバラ
〇アルプスのバラ
〇アメリカのバラ
第10章 日本のバラ
ノイバラ/テリハノイバラ/ミヤコイバラ/ハマナス/サンショウバラ/カカヤンバラ
第11章 バラの現在・未来
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
バラの歴史の本。ひと言で言えばそうなのだが、その範囲は植物学、細胞学、育種学、分類学、植物画、文化史と幅広く取り扱われている。
古代ローマ時代にエジプトからバラを輸入していとあるが、どのような輸送方法だったのだろう?
当時は船輸送だと思うが、鉢植え状態では土の重さが問題になるだろうし、冷蔵技術の無い当時に切花輸送は不可能だろう。とても気になる。
現代の私たちは四季にバラを愛でているが、これが中国のコウシンバラに由来するということを初めて知った。
日本の野生バラは一重の素朴なものである。室町時代にキリスト教伝来時には、ヨーロッパの八重咲きのバラの絵画も同時にもたらされたと思うが、ヨーロッパバラ自体は伝来しなかったのだろうか?
だとしたら、当時の日本人は描かれたバラをどのように感じていたのだろうか?