【感想・ネタバレ】マザー／コンプレックスのレビュー

水生大海

地下鉄の“ある事件”を機に母性が暴走する。

蜂須賀恵理子は、悲嘆に暮れている。自慢の息子が痴漢行為を咎められ、逃げようとして地下鉄に轢かれ、死んだのだ。冤罪だと信じる恵理子は、亡き息子のSNSにのめり込み、事件の真相を探ろうと奔走する。
夏川美夏は、激怒している。高校生の娘が電車内で痴漢を捕まえたが、被害には長い間遭っていたというのだ。美しい娘には芸能界で活躍してほしい。週刊誌記者に身辺を嗅ぎ回られ、美夏は苛立つ。
高奈琴絵は、幸せの絶頂から突き落とされる。不妊治療の末、ようやく待望の子供を妊娠した矢先、夫が痴漢をして逮捕されたのだ。琴絵を責める義母に、逆ギレする夫。離婚がちらつくが、一人で子供を育てる自信がなく琴絵は途方に暮れる。
地下鉄で起きたある事件を発端に、歪み、崩壊していく三つの家族。
そして、新たな悲劇が起こる――
暴走する母性の先に衝撃の結末が待ち受ける、ドメスティック・スリラーの新たなる傑作！

[ブクログ · ★★★★★]

痴漢をした加害者、被害者の母・妻それぞれの視点から物語が展開。
「痴漢被害」がテーマの一つでもあるが、母という立場を通して、女性の強さと執念、そしてある種の愛が伝わる作品。

[ブクログ · ★★★★☆]

3人の母が交互に出てくる。息子が痴漢を疑われ、逃げて死んでしまったことが受け入れられない母。娘が痴漢された母。夫が痴漢で捕まった妊婦。どれも自分だったらどうするかなとは思う。でもこうまで極端にはなれないだろうな。しいていえば妊婦さんに共感できるか。いや、さっさと離婚するな。最後はびっくり。母はここまでやるのか。ステージママはちょっと義妹ぽくもあるなとちょっと思った。やっぱ自分の子にはみんな期待しちゃうのかなー。麻衣は強く生きてほしいわ。あんま期待してなかった分、思ったより面白かった。

[ブクログ · ★★★★☆]

タイトルからしてゾワゾワする胸騒ぎ。
痴漢行為を咎められて事故で亡くなった息子の母、痴漢被害に遭いその痴漢を捕まえた娘の母、夫が痴漢で逮捕された妊娠中の妻、痴漢という卑劣な犯罪に絡む3人の母たちの感情の暴走は止まるところを知らず、こちらも一気に引き摺られて嫌悪感が湧きながらもおもしろかった。
琴絵はともかく恵理子と美夏の毒母っぷり…母親という生き物の愚かな一面をまざまざと見せつけてくれる。
犯人のオチのつけ方も納得。
終盤になるにつれて意外な人物が存在感を増してきて、最後まで気が抜けないドキドキを楽しめた。

[ブクログ · ★★★☆☆]

嫌な感じ。ここに描かれる母親は皆んなイヤな感じ。
痴漢の事件から始まるように見える母親達の歪んだ愛と欲望と感情の沼の様に見せるストーリー。
上手い表現と人物描写。
子供を持つ親として、面白くない、そして面白い。

[ブクログ · ★★★☆☆]

息子は、娘は、こういう性格だから、こんなことはしない…。
家族への強すぎる感情、暴走。
周りが見えなくなってとんでもない行動にうつす親たち。

ただ石ころをどけただけ、邪魔なものを排除、代わりを見つけた…子どもが違う道につれていってくれる…。
押し付けていることに気がついていなかったり。

反省しない、決めつける夫、その妻。どうなるか不安に思っていたが槙野の一言、守るものの存在で動き出したのはよかった。

暴走した人たちがどうなってゆくのか、気になって読み進めた。