あらすじ
「自立=善、依存=悪」という思い込みを覆す、逆転の文明論
豊かになったはずの現代でなぜ紛争が絶えないのか? 格差を生み出し、争いのもとになる「自立志向」の考え方を問い直し、中間集団との新しい「依存関係」が争いを防ぐ可能性を提言する。
【内容】
序章 争わないための依存
1部 発展の遠心力――「自立した個人」を育てる
第1章 競争原理――規格化される人々
第2章 社会分業――特技を社会に役立たせる
第3章 対外援助――与えて生まれる依存関係
2部 支配の求心力――特権はいかに集中するか
第4章 適者生存――格差を正当化する知
第5章 私的所有――自然をめぐる人間同士の争い
第6章 独裁権力――依存関係を閉じる言葉
3部 依存の想像力――頼れる「中間」を取り戻す
第7章 帰属意識――踏みとどまって発言する
第8章 中間集団――身近な依存先を開く
第9章 依存史観――歴史の土を耕す
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
これは凄いな。何が凄いって、依存というキーワードでこれだけ世の中を読み取れるのか、って凄さ。社会の発展と個人の自由の獲得、という地殻変動が自立を賛美し、依存を見えなくさせた。帰属意識や対外援助、適者生存、土地所有権といったツイッタランドでも昨今ホットな話題は依存の問題でもある。
自立は依存の対義語じゃなくて透明化に過ぎない。依存を自覚し、また依存先の選択肢を持つことが世の争いを防ぐのだね
Posted by ブクログ
非常に読み応えのある一冊だった。個人と国家の関係、開かれた依存関係、発展と支配。一国では解決しきれない、地球規模の現代の諸課題も射程に入っており、もう一度、今度は精読したい。
Posted by ブクログ
社会に頼りながら生きることの意味を更新できる本。
著者は、米プリンストン大や東大で教鞭をとった。フィールドワークや国際開発が研究の根底にある。
居場所から声を発することは、自分も社会も支える、小さいけれど確かな支柱になる。それを、内への帰属や安心を感じつつ、外と争うことなく実現させるための、大きなヒントをもらえたように思う。
Posted by ブクログ
「争う世界」から見えるのは「依存社会」は公平性に欠けた社会から見える。最低限の生活保障、教育機会の平等化、情報公開の徹底などを市民レベルでの議論ができない時などに「偏った依存」を見ることができる。「争わない」為の行動は日々のコミュニケーションを通じて相手の立場を尊重し、対立を対話で解くプロセスを日常化させること、とある。特に過去の政治の面では、国民を政策で抑えきれなくなった時の争いにおいて、国民の不満をそらすため、また経済再生のために敵国を作り戦争「依存」を選ぶ、のが譲渡手段となっている。いずれにせよ、国家間、仲間同士、家族でも「争そう世界」を防ぐには日々のコミュニケーションと相手への思いやり不足が要因でもあると想像できる。
Posted by ブクログ
競争の対象 希少性
競争の限界 ①無形の価値 ②人間の依存関係 ③自然の存在
争わずに競う :一つの基準で決めない 負けた人の処遇
分かりやすさ :争いを呼び込む
分業の効果 :一人当たりの仕事量の増大 考えるのをやめさせる
分業の弊害 :目的意識の喪失 格差構造 強みが優先し弱さを補う機能の弱体
分業できない仕事 :本人にしかわからない仕事 →自立した人間へ
戦後日本の賠償「役務賠償」 求償国と日本企業の依存関係
ダーウィン進化論 生存競争 ⇔ 棲み分け 環境を変える 多様性
自然の所有権 自然と人間ではなく 自然を媒介した 人間と人間の間の争い
政府による死 ポルポト政権 閉じた依存関係
中央の承認 報酬を求める地方の実行部隊 他国による下支え
所属と 帰属=主観的な心のつながり
離脱と 発言=改善のヒント 帰属意識 発言を介して自分を変える
中間集団 国家と個人の中間 自発的な中間集団の複数化
1.掟 2.サービス 3.国家の外側から地球規模の理念追及
「発展」の遠心力の”最大化”で「支配」の求心力が見えづらくなる
弱い立場の連帯 最大を「中」に戻す
「争わない社会」
①思考の幅を確保 ②依存史観 ③依存関係の分散