あらすじ
幼いころに母を亡くした七瀬月乃は身内に引き取られるも、家に居場所はなく孤独だった。高2の夏、あることがきっかけで月乃は今まで我慢していたものが一気に溢れ家を飛び出す。向かった先は通称・なりそこない神社。「神様…」と願うと、そこには「なりそこないの神様」と名乗る不思議な青年が現れて…!? なんと見た目は月乃の憧れの設楽先輩とそっくり。彼の導きによって月乃は少しずつわだかまりを解消しようと歩みだしていく。でも神様と名乗る彼には過去にある秘密を抱えていた――。ラスト、彼の嘘に涙する!
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
月乃が長い間、家族との関係性に苦しみながらも、自分の気持ちを押し殺して人生を耐えようとしている姿に胸が痛みました。
しかし、神様と出会って考え方が変わったことで、彼女の生き方が変わって、毎日が彩られるようになりましたね。前向きになった月乃の心の軽やかさが、地の文にしっかりと描かれており、魅力的な女性の姿を映し出していたように思います。
普通とは違う人生を歩んできた彼女は大人びているけれど、時折、弱さが垣間見える瞬間があって、そこが応援したくなるポイントでもあり、心配になる部分でもあったように思います。つまるところ何が言いたいのかというと、そういった表も裏もある一人の人間を上手に描いているということです。年頃の女の子が抱く悩みや感情の機微を、繊細なタッチで表現できるのはとても凄いことだと思います。
また、父親との再会や陽菜との和解、設楽先輩の告白など、要所要所で感動できるシーンがあったのも良かったです。毎日の生活に感謝を伝えたくなるような、人と人の繋がりに希望が持てるような、そんな小説だったと思います。人情溢れる素敵な作品でした。溢れんばかりの涙と感動をありがとうございました。