あらすじ
“この世で最も黒く、邪悪な絵”の謎を追い、美の殿堂へ―― 漫画家・岸辺露伴は、青年時代に淡い思いを抱いた女性からこの世で「最も黒い絵」の噂を聞く。それは最も黒く、そしてこの世で最も邪悪な絵だった。時は経ち、その絵がルーヴル美術館に所蔵されていることを知った露伴は取材とかつての微かな慕情のためにフランスを訪れるが…。観る者を深淵へと誘う、極上サスペンス。大人気漫画を原作とする実写映画を小説化!
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Posted by ブクログ
胸を張り背筋を伸ばしゆっくりと映画館を出た。
高橋一生演ずる岸辺露伴はカッコいい。
不協和音で不安定に漂う菊地成孔の音楽に乗り、
この世ともあの世ともつかない不思議な異空間の世界へと誘われます。
ネタは、世界中に転がっている……か。
あ、パリ……!「ルーブル美術館」!
「岸辺露伴は動かない」TV版の「ジャンケン小僧」のラストシーンで、泉鏡花が思い付いた通り、パリが舞台です。
この世で最も「黒い色」という色を
見たことがあるだろうか?
光を反射する鏡は、鏡の前にいるものを映すが、
光すら吸い込む漆黒の前では何が見えるのか…。
「この世で最も黒く、最も邪悪な絵」は
「先祖や己の罪」「後悔」を見せ襲い掛かります。
漫画家デビューを目指していた17歳の露伴が、祖母が経営する元は旅館だったアパートで出逢った年上の黒髪の女性、奈々瀬。
10年後、ふとしたことで奈々瀬のことを思い出し、好奇心と青春の慕情に駆られ、取材と絵を見るために訪れたルーヴル美術館。
今は使われていないZ-13と呼ばれるルーブルの謎の地下倉庫。
そこで「漆黒の絵」を見た者が、先祖や己の罪、後悔に襲われ次々と怪死する中、絵を見た露伴の前に現れたのは…?
…岸辺露伴の前に現れたのは、絵の作者 山村仁左右衛門と、彼の妻 奈々瀬でした。
露伴同様、一際こだわりの強い絵師だった仁左右衛門は奈々瀬の黒髪を描くことに執着し、黒い染料を探し、神木の黒い樹液に辿り着きますが、神木の樹液を採った咎で役人に捕らえられます。
仁左右衛門を庇う奈々瀬の命を奪った役人を殺めた後、彼は「漆黒の絵」を書いて亡くなったのでした。
神木を切り倒した斧で露伴に襲い掛かる仁左右衛門。
仁左右衛門を必死に抑えようとする奈々瀬。
ヘブンズ・ドアーが効かず絶体絶命の危機の露伴。
「全てを忘れて」
露伴17歳の夏休み。露伴の前から消え去った奈々瀬が残した言葉を思い出し、ヘブンズ・ドアーで自らの全ての記憶を一時的に消すことで「先祖」も「後悔」も消し去り、難を逃れた露伴。
帰国後の調査で判明した奈々瀬の旧姓は岸辺…。
神木の漆黒の樹液が見せた露伴の先祖の罪と後悔が
山村仁左右衛門と奈々瀬だったということは、
作中彼等の子供は描かれませんでしたが、
露伴は彼等の子孫ということです。
因みに山村仁左右衛門も高橋一生が演じていました。
その後、神木を探し当てた露伴のもとに三たび奈々瀬が現れ、巻き込んだことを詫び、仁左右衛門の絵による被害を断ち切ったことに感謝を述べます。
「あなたのことは決して忘れない」
露伴が思いを伝えると奈々瀬は掻き消えたのでした。
ところで、飯豊まりえ演じる泉京香も「漆黒の絵」を見ていたことを露伴は知ります。
「……何ともなかった、のか?」
「ぜーん、ぜんっ!」
「君のそういうところには本当に感心させられる」
泉京香には「罪」も「後悔」もないのです。
Posted by ブクログ
舞台はフランスパリのルーブル美術館だが、国立新美術館ルーブル展の前に購入。手軽に読めるのでアートを小説の世界で雰囲気を感じたい気分の時に。そして足を運んで触れるアートはやはり特別。