【感想・ネタバレ】ぎょらん(新潮文庫)のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

52ヘルツのクジラたち、を先に読み、それがよかったので他の作品も読みたいと思って手に取ったのがこの本だった。

結論から言うと、52ヘルツより、よかった。比べるものではないし、なんか失礼な気もするが、数段、別格によかった。

個人的な話にはなるが、最近、私の身近な人が初めて死んでしまった。実はその人は夫の祖母で、彼女とはすごく仲が良くて実の孫かのようによくしてもらったのに、その人が旅立つ半年前に私の心の狭さが原因となって起きた、今となっては本当にしょうもない、彼の実家で起きた、酒に飲まれて失言した彼の家族との諍いが原因で、その人から距離を取った。しかしその諍いは彼女と直接関係なく、彼女はその場にいただけで、どちらかと言うと私のことを気遣い酒に酔った家族を諌め、私を気にかけて声をかけてくれた。私に会いたい、と何度も留守電に残してくれていたのに、私は無視を決め込んだ。血も繋がっていない私と楽しく話をしてくれ、二人で何度も出かけたし、彼女のお下がりも幾度となく貰って、私もそれを大切にしていた。それなのに、私は会いに行かなかった。容体が悪いと聞いてからも、彼女に会うのは気まずかった。見舞いに来ている夫の家族にも会いたくなかったのが相まって、意識が戻りそうにない、持って後1週間と言われてようやく事の重大性を認識し、会いに行ったが彼女はもう目を覚まさなかった。ついに彼女と話したのはその諍いの場が最後となってしまった。
祖母の状態が良くないから見舞いに行きたい、という夫を詰り、見舞いに行く回数を減少させた。夫と義祖母の関係を無理やり切ったのは私だ、私があんなことさえしなければ夫は義祖母ともっと話せたのかもしれないと考えている。

わたしも、朱鷺と同じように自分を可愛がることを優先したし、葉子とも同じだった。

そんな個人的背景があるからこそ、この小説を読みながら涙が止まらなかった。ぎょらんがあれば、と何度思ったかしれない。でもきっとあったなら朱鷺のように苦しむ結果になっていただろう。
だけどそんなものはない。私も朱鷺と同じように一生背負い続けていくしかないのだ。

私の中の罪悪感が薄れたわけではないけど、一生忘れない作品だと思う。作品の中に、私がいた。この作品が、目を背け続けていた私がしたことにしっかり向き合わせてくれた。

いつか人は誰かの死と向き合わなければならない。そうなった時に、今度は間違えないようにしたい。

出会えて良かった。

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2024年05月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

途中読み飛ばそうとしたが、飛ばした先の展開を読むと前が気になり結局全ページを読むことになった。

導入でのぎょらんは自分たちと重ね合わせる部分もあり惹き込まれる展開に。
しかし、結局ぎょらんは存在しないものとして扱われていた?
朱鷺が過去に口にしたという展開は妹のための嘘のように描かれつつも、現実のものとも受け取れる。曖昧な始まりであった。

その曖昧さが最後まで「ぎょらん」の存在のテーマ性につながっていたのではと感じる。

どの話も独立しているようで、どこかで繋がりを見せる展開が個人的には好みの手法。

残された人=生きている側の負の感情や思い込み、罪から逃れようとする意識、今の自分にはあまり縁のない話だがいつか分かる時が来るのか。

どちらかというと、自分の去り際に誰に何を残すかという視点で読み進めた。

0
2024年06月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

思ってた以上に良かった。
前読んだのは『52ヘルツのクジラたち』で、闇が深い…と思ってから、ちょっと他の作品は読むのを控えてたんだけど、この本は私は好きだと思った。何でも食わず嫌いはだめだなあ。
第一話は、だめニートの兄に不倫の妹で、読みきれるか不安を感じたんだけど、そんなことはなかった。
朱鷺くんが、最初だめニートだったにも関わらず、最後は乗り越えて人間として成長していく姿が、時々やきもきするものの、見ていて気持ちよかった。
そして、華ちゃんが強すぎてヤバかった。正直別の道に全然進めた。
最後の『赤はこれからも』が、少し毛色違うと思ったら、描き下ろしでしたか。

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2024年04月27日

Posted by ブクログ

ネタバレ

七編が連作になっているので、名称として物語に出てきていなくても「あ、この人物ってあの話のときの…」や「ここのセリフってこういう繋がりがあったんだ…」と連想することができ、想像力を掻き立てられた。各話各話で出てくる主要人物が違っていても、世界線の繋がりを密に感じられる連作だったなぁ、という印象。どの人物も、悩みや感情の描写がとてもリアルで、同じ境遇にたったことがないはずなのに自分のことのように涙が出た。全編を通して、主となる人物朱鷺の葛藤と成長を感じられた。読みながらずっと不思議に思っていた「ぎょらん」を通して朱鷺が見たもの感じたこと、そして「ぎょらん」の正体が、最後まで読み進めることで朧気ながら理解るという構成がすごく楽しかった。ただ、途中読みながら少し疲れてしまったので星3つにさせてもらった。

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2024年06月04日

Posted by ブクログ

ネタバレ

死者の思いやその人に伝えたい事ではなく、
残された人が死者に対して抱く気持ちがぎょらんだと。。死者の想いや言葉は結局のところ、分からないが、その死者を尊ぶ気持ちこそが大切で、その気持ちがどんな形であれ届いているといいなと思います。

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2024年05月01日

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