あらすじ
経営学は、なぜある状況で特定の経営行動が成果を生みやすいのか、その原理を解明する学問です。経営という仕事に役立つフレームワークを提供して初めて存在価値があります。本書は、「経営するということ」を「組織で働く人々の行動を導き、彼らの行動が生産的でありかつ成果が上がるようなものにすること」と定義。そのためには、未来への設計図を描く、他人を通して事をなす、想定外に対処する、決断するという行動がりーダーに求められます。50年以上にわたって日本企業を直視し続けてきた第一級の経営学者が、リーダーの悩みに答える待望の書です。1989年に刊行されたロングセラー『ゼミナール経営学入門』を頂点に達した日本企業のメカニズム解明の本とすれば、本書は失われた30年を背景としてより経営に役立つ実学の大系を示す内容となります。
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Posted by ブクログ
伊丹先生の本は、これまでおそらく10冊くらいは読んできた。伊丹先生の本というだけで、とりあえず手に取ってしまうのだから、ファンだと言ってしまって間違い無いだろう。
伊丹先生の本の読後感は、他の本と少し異なる。読んだ後に頭がすっきりして自分が少し賢くなったように思えるところが特徴的だ。少し考えてみたけれど、その理由は彼の本の持つ絶妙な抽象度にあるのだと思う。
ビジネス書を大きく二つに分類すると、ビジネスマンが書いた自身の直接の経験に基づくもの(ビジネスマン本)と、研究者が書いた学術的なもの・知識的なもの(教科書)だ。
ビジネスマン本は、体系だっておらず客観的なデータもないけれど、自身の生の体験に基づいているため、臨場感があり、すぐに自分も動いてみたいという気持ちにさせるものが多い。
言い方を変えると、読んでいる最中や読み終わった直後から行動をとりたくさせる力が強いほど、優れたビジネスマン本であると言える。
教科書は、ビジネスマン本とは異なり、実際の経験ではなく、極力客観的にデータを収集し、それに基づいて導き出された法則や考え方のようなものが書かれている。
教科書の目的は、読者の即座の行動を促すことではなく、仕事を行う上でベースとなる体系的な理解を促進することにある。直接的な目的としては、会議資料の作成やビジネスの資格取得などが挙げられる。
いうまでもないが、ビジネスマン本と教科書のどちらが優れているということはない。また全ての本は純粋なビジネス本と純粋な教科書の間のどこかに位置している。
読者は、その時々の自身の状況や読書に求めるものに従って、読むべき本を、時には無意識に、時には意識的にセレクトしているのである。
さて、寄り道が長くなってしまったので本筋に戻る。伊丹本の持つ「絶妙な抽象度」について触れたいと思う。上述のように、ビジネス書にはビジネス本と教科書の二つに大別されるが、私の感覚としては伊丹本はちょうどその中間地点にある。もちろん伊丹先生は高名な経営学者であるが、敢えて抽象度をコントロールし具体的な事例とスムースレスに繋げることで、伊丹先生しか出せない絶妙な感覚を実現している。
上記の記述に対して「他の研究者の書いた教科書にだって具体的事例が載っているではないか」という反論があるかもしれない。だけど私の感覚としては、大抵の教科書に載っている具体的事例は、著者の理論を説明する内容になってはいるものの、どうもそれは理論とスムースレスにつながっているとは言い難く、別個に存在するものを半分無理やり繋げている感を拭えない。
Posted by ブクログ
構成、内容ともにかなりオリジナルな部分が多い。
が、実務的には本書の内容は参考になる部分が多い。
本書を読み、組織内でアイデアが多く生まれる組織づくりや、メンバー相互の人間的理解を深める仕組みなどに多くの日本企業が問題を抱えていると思った。
Posted by ブクログ
経営学の体系として、
・未来を設計する
現在の立ち位置(誰のための何者になるか)を設計し、さらに将来どうなりたいかを描く
・他人を通してことを成す
組織として成果をあげるための影響システム(適切な権限委譲、コミュニケーションと調整のしくみ作り、インセンティブシステム)と自己刺激のシステム(理念の浸透、リーダーが先頭に立って意志を明確にすることによる組織文化の醸成、ヨコの刺激が生まれやすい職場や仕事の設計)を構築する
・想定外に対処する
コンティンジェンシープランの策定、何を修正すべきかの判断、想定外から得た教訓の体制への組み込み、想定外対処から得たノウハウの蓄積
これらに通奏低音として流れる決断(直感で発想し、論理で検証し、哲学で跳躍する)の重要性。
を提示。
さらに、企業という存在の本質として、
・技術的変換により価値を生み出す存在であること
・カネの結合体であり、かつ、ヒトの結合体であること
・社会に生かされている存在であること
があり、この本質に照らして、適切な技術や情報の蓄積、カネの論理(結果主義)とヒトの論理(プロセスとしてのやりがい)のバランス、社会貢献に対して、未来を設計し他人を動かし想定外に対処して決断していくのが経営者の仕事であるとする。