あらすじ
停滞する賃金、止まらないインフレ、そして世代間格差――。働いても働いても貧困から脱出できない若年層の女性たち。彼女たちのリアルな現実は、主要メディアではほとんど報道されることはない。未成年売春、ホス狂い、風俗、虐待、奨学金……過酷な境遇にある女性たちの生き様を『東京貧困女子。』などの著書があるノンフィクションライター・中村淳彦氏が活写する。
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Posted by ブクログ
風俗で身を立てる女性たちの実情、苦悩が、彼女らの生活の詳細な描写から理解を深めることができた。学費のために他の選択肢がなかった人、男に騙されて借金を負った人、DVから逃げてきた人などなどそこへ至る過程は様々だが、一概に自業自得とは言えない気持ちになった。女性の苦悩を伝えようとするためにところどころ書き口が鼻につく部分も正直あったが(淡々と伝えても、十分大変さは伝わったので)、それを差し引いても非常に勉強になった。
Posted by ブクログ
中村淳彦『貧困女子の世界』宝島SUGOI文庫。
貧困女子と言われる若年層から高齢者までの過酷な暮らしの実態を描いたノンフィクション。と言っても、女性の貧困=風俗や性産業という短絡的な構図を綴っている感じで、社会問題としての貧困問題に深く斬り込んではいない。その点が非常に物足りない。
男女平等が叫ばれ、男女雇用機会均等法などが施行され、男女の賃金格差が改善されたかと思えば、そうではない。確かに女性の管理職が増えたりしているが、それはごく僅かで、相変わらず、多数の職場では相対的に女性の方が賃金が低い。さらには非正規労働者に占める女性の割合が高く、女性が貧困に陥るリスクは高いのである。
多くの非正規労働者を産み出した労働者派遣法なる悪法が、貧困層を作り出した原因であろう。企業からしてみれば、終身雇用の色合いが強い正社員を固定費として扱うより、非正規社員を変動費として使い捨てした方が都合が良いのだ。
非正規労働者の増加は、低賃金に喘ぐ若者たちの将来を絶望に変え、結婚離れを加速させた。その結果が少子化だ。さらにこの状況を新型コロナウイルス感染禍がさらに悪化させる。
そして、ロシアのウクライナ侵攻が物価を上昇させ、低賃金と物価高という負のスパイラルが続く。
政府は異次元の少子化対策などとキャッチーな言葉で、相変わらずのばらまき政策をアピールするが、少子化を産み出した根本原因を正さぬ限りは、少子化が改善される訳ではない。
定価880円
★★★