あらすじ
恋人の百合子が失踪した。彼女の住むアパートを訪れた私は、隣人を名乗る男と遭遇する。そこで語られる、奇妙な話の数々。果たして、男が目撃した秘技・耳もぐりとは、一体 (「耳もぐり」)。ほか、『残月記』で第43回吉川英治文学新人賞受賞&第43回日本SF大賞受賞を果たした著者による、恐怖と驚愕の到達点を見よ!
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Posted by ブクログ
今年一番の作品だった。
簡単に、一つずつ振り返りたい。
「食書」
全体を通して読んだ後だと、少しインパクトに欠ける。だからこそ最初に持ってきたのかな、と思った。この本の入口としては最適。これが合わないならこの小説は楽しめなそう。
「耳もぐり」
江戸川乱歩みたい!って思った。穏やかな生活をしている犬とかの耳に入りたい。
「喪色記」
ちゃんとファンタジーでキモい要素が少なめ。これはこれで爽やかでいい。完全に終わる世界を受け入れて、自分たちだけが達観して、その時を迎えようとしているのが素敵。
「柔らかなところへ帰る」
隣いいですよ。
産みましょう。
「農場」
ハナバエは何のために生まれてくるのだろう。命の輪廻の中で…いや、よく分からないからやめよ。
「髪禍」
フィクションなのに生々しい、キモい、と思うのは著者の圧倒的リアリティによる。情景がとてもよく伝わってきて、だから尚更キモい。
ハゲは無神論者。そういうことじゃないよね、知ってる。
「裸婦と裸夫」
これめちゃくちゃいい。日本乳房協会の理事になりたいんですけどコネありですか?
Posted by ブクログ
ごく普通の人たちが狂気じみた環境に迷い込んで自我をなくしていく短編集。
ジャンル分けするなら幻想怪奇ホラー?
世にも奇妙な物語とか江戸川乱歩のような世界観に、色でいうと灰色、質感でいうとねっとりとしたモノを加えた感じ。
他人には薦めづらいクセ強な物語ばかりですが、とても気に入りました。
■食書
貪るように本を読む、という表現があるが、本を本当に食べたらどうなるのかっていう話
■耳もぐり
他人の耳に潜り込んで他人と一体化できる男の話
■喪色記
徐々に色彩がなくなっていく世界の男女の話
■柔らかなところへ帰る
路線バスで隣の席に座った太った女に欲情してしまった男の話
■農場
大量の削がれた鼻を何十年も栽培し続ける男の話
■髪禍
髪は神なりを信条とする新興宗教のイベントにバイトで参加した女の話
■裸婦と裸夫
電車の中に全裸男が闖入してきてドタバタして世界の破滅を見届ける男の話
Posted by ブクログ
2024年版このホラーがすごい! で近畿地方と同票で一位だったので読んだ。
身体をテーマにした短編集。ホラーもあるが怖くない幻想小説めいたのも入っている。ホラーでもエグい描写はないので読みやすい。文章がいい。表現、リズム、ともに素晴らしい。
「食書」
現実と小説がごちゃ混ぜになる展開の妙味がいい。
「耳もぐり」
面白いけどきれいにまとまりすぎな感も。
「喪色記」
いちばんよかった。鬱で退職したリーマンの話がこんな展開を見せるとは。静謐な幻想世界の崩壊後に残される少年少女。趣向は少し違うがシュオッブの大地炎上を連想した。
「柔らかなところへ帰る」
楽しく読んだがあまり印象に残ってない。
「農場」
ある意味成長譚。
「髪禍」
怪異のスケールが本書中いちばん大きい。ちょっと気持ち悪い。
「裸婦と裸夫」
ユーモラス。カタストロフ後は幻想的。眼鏡女子の脱衣シーン、高い文章力に声出して笑った。
Posted by ブクログ
こんな小説が成立するんだ!とワクワクしながら読める短編集だった。
江戸川乱歩のエログロ感を恩田陸のノスタルジックな不思議世界に載せたような雰囲気を感じつつ、
読み進めていくと本書のテーマは身体の聖性的なところにあり、著者にとっての聖書の読み替え的な作品なのではと感じた。
口、耳、目、性器、肌、鼻、髪、体という旅を経て、人体の生々しさをを突きつける表現力に惹き込まれた。
Posted by ブクログ
いい意味で気持ち悪い。想像もつかないやろうとも思わない、でも出来てしまう日常のちょっとした動きが禍につながってしまうんだなあと思いました。本のページは食べない
Posted by ブクログ
「このホラーがすごい」
にて、すごく評価が良かったので。
表紙の生理的嫌悪感も
そそられました。
短編一つ一つは
ホラーというよりも
ダークファンタジーのよう。
内容も壮大な物が多かったです。
文体や表現が独特で
芸術的だなと。
Posted by ブクログ
世にも奇妙な物語のような世界観の短編集。設定は面白いがオチが物足りなく終わってしまう作品が多かった印象。著者の書くちょっとした表現が非常に個性的で面白いので、他の作品も読んでみたい。
食書:本を食べるという背徳的な行為が生み出す怪異。本を食べるという行為自体が既に狂気なのであろう。
耳もぐり:見事な叙述トリック。真相を自分の口から語られることで知る状況って怖すぎ。収斂していく世界。
喪色記:一番長いが一番合わなかった。現実の世界が偽りでありだんだんと浸食されていく。色を失っていく世界。
柔らかなところへ帰る:エロチックなお話。豊満な肉の海は欲望の根源。妻に「おぉい、帰ってこぉい」と呼ばれても欲望の濁流に翻弄される主人公の耳には届かない。
農場:培養した鼻から植物人間を育てる農場のお話。輪廻のごとく繰り返される人生に救済はあるのだろうか。
髪禍:髪を介した神様を祀る新興宗教、であるが最早妖怪の類を生み出している。もしくは集団催眠の一種なのか。世の中には旨い話などない。
裸婦と裸夫:これまでの作品の中では大変コミカルな部類。老若男女みんな脱ぎだすヌーデミック勃発。