あらすじ
結婚を決めたとき、すぐにSEKAI NO OWARIのバンドメンバーとスタッフに言わなくては、と思ったことがある。
「結婚するということは、妊娠したら出産するということだからっ」
啖呵を切ってみた私にも、実際よくわかってはいなかった。
それは、未開の地を開拓するようなものだったーー。
(本文より)
妊娠後、コントロールできなくなった体と心。膨らむ被害妄想。
愛しい息子の誕生後、夫婦に襲いかかった産後うつーー。
こんなに幸せなのに、幸せだと気づくのは
なんて大変なのだろう。
スタジオから直行した出産、ステージ上での失禁、そしてメンバーからのメールに涙した日……。
アーティストとして、一人の女性として、妊娠・出産、育児の全てを包み隠さず綴り、切実な願いを込めた、笑って泣ける傑作書き下ろしエッセイ!
子どもを生んだ人、生まなかった人、生むかもしれない人、そして男性にこそ読んで頂きたい1冊です。
● 著者からのコメント
初めての妊娠出産、育児をしていると、あまりに大変なことが起きるので、何が正解だったのか、どうしたらよかったのかと思い悩むことばかりでした。でも、だからこそ、 この本をどうしても書きたいと思いました。自分には関係のないことだと思っている方にも読んでいただけたら嬉しいです。
藤崎彩織(ふじさき・さおり)
一九八六年大阪府生まれ。二〇一〇年、突如音楽シーンに現れ、圧倒的なポップセンスとキャッチーな存在感で「セカオワ現象」と呼ばれるほどの認知を得た四人組バンド「SEKAI NO OWARI」では〝Saori〟としてピアノ演奏とライブ演出、作詞、作曲などを担当。研ぎ澄まされた感性を最大限に生かした演奏はデビュー以来絶大な支持を得ている。文筆活動でも注目を集め、二〇一七年に刊行された初の小説『ふたご』 は直木賞の候補となるなど、大きな話題となった。他の著書に『読書間奏文』『ねじねじ録』がある。
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Posted by ブクログ
SEKAI NO OWARIのサオリさんの妊娠、出産、子育てエッセイ。
久しぶりにマタニティ・子育てエッセイが読みたくなって読んでみた。
つわりが辛いときに、「妊娠(つわり)は病気じゃない」と慰められる辛さ、すごく共感した。
猛烈な嘔吐とフラフラの体で仕事も家のこともしながら点滴に通うギリギリの精神状態で、この一言は「病気じゃないから心配しなくていいよ」じゃなくて、「病気じゃないんだから頑張れ」にしか聞こえなくて、ますます追い込まれる。
こればかりは経験者にしかわからない。
サオリさんは、もっとハードなスケジュールとライブ公演が控えてるという責任感で、どんなに辛かったことだろうと思った。
お腹が大きいとか、この形だと性別はどっちとか、誰々はどうだったとか、そんな他愛もない話に悪意や深い意味は無いとわかっていても、素直に聞き流せないのも同じだった。妊娠中のホルモンバランスの乱れ、気持ちの不安定さ故だったのだろう。
いちいち他人の言葉に敏感になっていたなと思う。
共感した経験や考えは他にもいろいろあったけど、特に感心して残しておきたいものを書き留めておく。
「愛は、良質な睡眠とホルモンバランスの安定という土台、上に積み上げることのできる、理性のこと」
「夫婦は助け合わなくてはいけないけれど、ただ平等を追い求めても幸せにはなれない。そんなことがわかるまで、どれだけ傷つき、傷つけ合ってきただろう。傷つけ合わないことは難しいので、せめてその後に癒し合い、労い合えるところを目指したい。」