あらすじ
父さんが故郷に帰って農場の仕事を始めることになったため、サクランボというあだなの十六歳の双子の女の子、バーブロとシャスティンも、初めて自然の豊かな田舎で農場暮らしをすることになりました。
家を改装し、農場で働く人たちと仲よしになり、二人も、ミルク運びや雑草取りなどの農作業に取り組みます。もちろん、働くだけではなく、近所の同年代の仲間たちとハイキングや釣りやパーティに行ったり、夏至まつりを楽しんだり…。そして二人にはそれぞれ、好きな人もできますが…?
双子の一人、バーブロが語る農場の日々は、楽しさとユーモアでいっぱい。“子どもの本の女王”アストリッド・リンドグレーンが、農場の娘として育った自らの幸福な記憶をたっぷりそそぎこんで描いた、生き生きと楽しい少女小説、本邦初訳。10代から。
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Posted by ブクログ
田舎ぐらしに憧れる父について農場での生活をはじめる双子の女の子。それは忙しいけれどもとっても楽しい日々でした!
アストリッド・リンドグレーンといえばもう誰もが一度は子どものころ読んだことのある児童書の大家でしょう。リンドグレーンで記憶に残っているお話といえば「はるかな国の兄弟」とか「やかまし村のこどもたちシリーズ」と、絵本で「赤い目のドラゴン」なのですが、これらのお話はそれぞれ楽しい空想の世界を広げてくれるのですが、何か少しの物悲しさが含まれている印象がありました。例えばはるかな国の兄弟では死の印象がとても濃厚ですし、赤い目のドラゴンでは離別、そのほか、つらい現実からひととき明るく楽しい場所にでかける、というお話も多かったように思います。もしかしたら空想を広げることが、生きづらい世の中でも救いになることを伝えたかったのかもしれませんが、それがリンドグレーンのお話の拭いがたい物悲しさにつながっているようにも感じたものでした。
さて、この本はそんなリンドグレーンの初期の作品で、本人も経験したであろう、農場暮らしの一年を楽しく明るく描いています。特に大きな出来事があるわけではないのですが、そこでは辛いはずの農作業も、不便な生活も楽しみに変え、移ろう四季の自然や恵みを豊かに享受する、働く人間の幸せというものを感じさせてくれる、読んでいて幸せになる本でした。初期の作品のせいなのか、いつも感じる一抹の物悲しさではなく、辛いことも悩みも明るく楽しく乗り越えていく双子の姿にとても救われるお話でした。石井さんの訳もよく合っていて、ちょっと大人びた小生意気な女の子が生き生きと感じられて良かったです。
田舎暮らしに巻き込まれる子どもの話といえば、「北の国から」シリーズと照らし合わせながらお楽しみください。