あらすじ
《オレ流》でトップ・レフトを追った6年。
ユーロ市場の激闘を元バンカーの著者が白日の下に晒す、
自伝ノンフィクション
ロンドンに赴任したのは、冬から春に変わる季節だった。
風は爽やかで冷たく、故郷の北海道の北空知によく似ていて、しっくりきた。
街路樹はプラタナスが多く、煉瓦や石造りの建物が歴史を感じさせた。
わたしは国際金融業務の経験のない30歳の若者だった。
あるのは、夢と希望と野心とエネルギーだけだった。(本文より)
大学時代はランナーとして箱根駅伝に2度出場、卒業後はバンカーを経て作家に。
国際金融市場での経験をいかした圧巻のリアリティで惹きつける、経済小説の名手が、『冬の喝采』以降の人生を綴る。
初めて明かされる、作家・黒木亮の《前史》では、
仕事や旅行で訪れた世界各国の風景や食のシーンも、読みどころのひとつ。
<目次より>
第一章 マイワード・イズ・マイボンド
第二章 航空機ファイナンスにしびれる
第三章 アフリカの夜明け
第四章 メイク・アンバンカブルズ・バンカブル
第五章 中東のサソリ
第六章 二重マンデート
第七章 爆破テロ事件
第八章 エマージング・マーケッツ
第九章 米銀との激突
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Posted by ブクログ
経済小説家、黒木亮の自叙伝。
1980〜90年代のロンドン当時30代前半で邦銀駐在員とに赴任した筆者が、数々の国際協調融資を取りまとめたシーンを描く。
借り手に懐に入り込み融資の内容とリスクを査定、自身のネットワークを駆使して貸し手を募り、融資団を形成し、クロージングまでまとめあげる。その中で生じる中東、アフリカ社会特有の数多のトラブル。
トップレフトとは融資や証券引受における主幹事。その地位を得るには率先して行動をすることが何よりも求められる。
グローバル市場、特に金融を舞台に働く人はぜひ手に取っておきたい一冊。
Posted by ブクログ
ロンドン駐在の邦銀バンカーだった黒木亮が描くシテイーでの日々。ロレンス金山(または金山商店)と呼ばれながら、中東(特にトルコ)、アフリカ(ジンバブエ他)、東欧、ロシアとロンドンを行ったり来たり。90年頃のフセインのクエート侵攻、旧ソ連崩壊等、激動の時代に翻弄されつつ新しい案件を探し(時に新興国を食い物にする米銀等と鎬を削りつつ)、本当によく働いておられます。当時発生した、IRAのシテイ爆破事件、若手行員が死亡したパンナム墜落事件(これもテロ)等、色々思い出します。最後のところの、外野から声だけの上司、その取り巻きが踊るチャンチキおけさ、との指摘には、耳が痛い。若き日の黒木さんの頑張りに、★四つです。
Posted by ブクログ
金融関連の詳しい小説を何冊も出版されている黒木亮氏の国際金融マン(主たるカバー範囲は中近東・アフリカの金融機関向けシンジケート・ローンのアレンジメント業務)としての骨格を作られたロンドン駐在時の回顧録。
筆者がどの様にして経験を積み重ねて来て、作家転向後の作品に細かさ、事実を背景にした臨場感を感じさせる魅力的な内容の素地を積み重ねて来たのか、その一端が分かった。
読んで楽しい作品で、これを踏まえて過去の作品を読み直すとまた踏み込んだ楽しみ方を期待出来そう。