あらすじ
後に尼将軍と恐れられた北条政子の半生を、源頼朝との恋愛を通して描いた歴史絵巻。流人だった頼朝と運命的に出会い、数々の戦を乗り越えて天下の覇者にまでのぼりつめた夫婦の愛を、ドラマティックに描く。
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Posted by ブクログ
鎌倉幕府を開いた征夷大将軍・源頼朝と、その妻・北条政子の波乱の生涯を描く。
蛭が小島の流人の身である14才の源頼朝と4才の政子は、実は幼い頃に出逢っていた。召し使いの制止にも関わらず、高い木に上って下りられなくなった政子に、「わたしが迎えに登りましょうか?それともとびおりられる?受けとめますから」と声をかける。そして政子は「自分の始末は自分でつけなきゃ」という頼朝の言葉にむっとなり、自分から飛び下りる。
それから16年、北条家で頼朝を預かる事になり、内心穏やかでない政子だが。
この小さい頃の出逢いが、後の雷雨をぬっての政子の駆け落ちの伏線となっている。受け止めてくれる頼朝を信じて、もう一度政子は、自分の意思で修羅の生涯に踏み切るのだ。例え後に『尼将軍』と呼ばれても、史実としてはこの駆け落ちと、承久の乱における御家人への叱咤激励くらいしか、彼女の出番はない。ところが本書では違う。常に夫の最大の理解者として側にあり、政治に関わる。義経を追放する際にも、周囲からは非情とも思える決断を下す頼朝の胸中を察して、「揺らいではいけない」と支える。寺の落慶法要の際には、部下の妻も必ず同席させるよう取り計らい、奥州討伐においては、自分と近親者がお百度参りする事で、為政者の頑張っている姿を鎌倉の民に見せるパフォーマンスを考案する。そう、彼女は、絶対に「奥様」じゃない。『陽の末裔』の咲久子を思わせる激しさと、たくましさを併せ持つヒロインだ。最初「華の王」はてっきり頼朝の事かと思ったが、そうじゃない。常に前を見て進む、生命力に溢れたもう一人の王として、市川氏は彼女を描きたかったのだ。そのため、史実に描かれる父・時政との確執、二代・三代将軍暗殺など、血生臭い事件は全く省かれている。また、法皇側、幕府側にも出入り自由の女猿楽師・小鳥というキャラクターを創造し、文書に残らない政子、頼朝の思いを余さず掬い取っている。
この姉妹版で後白河法皇の愛妾・丹後局を主人公にした「よう輝妃」のヒロインも、年経りた姿で数コマ登場し、代わりに政子は一コマだけ後ろ姿で「よう輝妃」に登場する。先にスコラレディースコミックスで全4巻で刊行されたが、今回の再刊行にあたり、1987年に2作のみ掲載された「懐古恋愛倶楽部」が同時収録された。こちらは大正時代のある貴族夫婦の下に下宿した青年が主人公で、『懐古的洋食事情シリーズ』の第一作目「昭和元年のライスカレー」のヒロイン、木野愛が現役だった事が台詞で触れられる。但し本人は登場せず。
Posted by ブクログ
市川ジュンの描く北条政子。頼朝が美男過ぎるのが?ですが、相変わらずキャラクターが魅力的に描かれていて読ませますね。源氏については一度何か史料的な物を含めて小説で読みたいと思います。