あらすじ
二〇世紀文学に大きな足跡を残した川端康成は,その孤独の精神を源泉に,他者とのつながりをもたらすメディアへの関心を生涯にわたって持ち続けた.マス・メディアの成立,活字から音声・映像への展開など,メディアの状況が激的に変化していく時代のなかを,旺盛な創作活動のもとに駆け抜けていった作家の軌跡を描きだす.
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
小谷野敦「川端康成伝 - 双面の人」、小谷野敦・深澤晴美「川端康成詳細年譜」には手を伸ばしづらいなぁと感じていたところ、タイミングよく岩波新書から刊行された本書。
スタンダードな評伝では決してない。
が、まさに私が川端康成を読む中で気になっていたメディア論と、評伝とを折衷したようなものだったので、凄く刺激を受けた。
孤独な川端にとってメディア(日記、手紙、小説)が重要だったという作家論としても意義があるし、川端を読むのならメディアの進化・多様化(映画、ドラマ)も一緒に把握したほうが文化論にも視点を当てることができてお得、ということもある。
長生きし発信を続けた人の全体を把握するときの旨味。
以下目次
第1章
原体験としての喪失―出生から上京まで
(天涯孤独の感覚と他者とのつながり;川端康成の日本語観 ほか)
第2章
モダン都市とメディアを舞台に―「伊豆の踊子」と「浅草紅団」
(新感覚派の旗手として;一九二六年、映画との遭遇 ほか)
第3章
戦中・戦後の陰翳―書き続けられる「雪国」
(文芸復興期前後の活躍;言論統制と「雪国」 ほか)
第4章
占領と戦後のメディアの中で
(知友たちの死と鎌倉文庫;GHQ/SCAP検閲下における創作と出版 ほか)
第5章
世界のカワバタ―「古都」から「美しい日本の私」へ
(文学振興への献身;翻訳と「日本」の発信 ほか)