【感想・ネタバレ】親愛なるレニー レナード・バーンスタインと戦後日本の物語のレビュー

あらすじ

“……でもレニー、僕はあなたを愛してしまったし、
忘れることはできないのです。
あなたは僕にこう言いましたよね。
「誰かと恋に落ちたくはない、なぜならそれは、
自分の人生を変えてしまうから」”(本文より)

ワシントンの図書館で著者が出逢った数百通の手紙。
それは、世界の巨匠レナード・バーンスタインと
知られざるふたりの日本人との心の交歓の記録だった。

カズコ ──日本でおそらく最初の、そしてもっとも熱心なファン。
クニ ──バーンスタインと激しい恋に落ち、その夢の実現に尽力した人物。

マエストロとふたりの日本人とが紡いだ愛の物語を軸に、
冷戦期アメリカの文化戦略、高度成長期日本に花開く音楽文化が描かれる。
感動の音楽ノンフィクションがここに誕生!

レナード・バーンスタイン(1918-1990)は、
ニューヨーク・フィル、ウィーン・フィルなどのタクトをとった指揮者として、
《ウェスト・サイド・ストーリー》《キャンディード》など不滅の名作の数々を生みだした作曲家として、
米ソ冷戦期に反核や平和運動に精力的にとりくんだ行動する音楽家として、
20世紀を代表する芸術家の筆頭にあげられる巨匠。

スティーヴン・スピルバーグがリメイクし大ヒットした
ミュージカル映画『ウェスト・サイド・ストーリー』(2021)や
Netflixが制作し、スピルバーグ、マーティン・スコセッシらが名を連ねる
伝記映画『マエストロ』(2023年春公開予定)などで、
いまなお世界中から注目を集めている。

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Posted by ブクログ

今読み終わったばかりで、ちょっと落ち着いてから書いたほうがいいかもしれない。

愛の物語だった。
和子さんと邦彦さんのお二人の手紙を読むだけで、なんていうのか、自分の内面も波立つ感じがした。特に初期の、情熱がほとばしる感じの手紙に。それだけでも相当な、自分自身の心の動きがあり、若い頃のことは覚えてないが、最近にはない読書体験だった。
でも、この本はそこだけにとどまっているわけでは全くない。バーンスタインへの愛を糧として、お二人ともどんどん先に進まれる、高く昇っていかれるのだ。もともと環境や才能のベースが凡人とは違っていたというのは大きいかもしれないけど、こんなことってあるんだなと思わされた。
そして、その愛は一方通行のものではない。超多忙なバーンスタインが、しっかりその愛に応えているのだ。真剣に。バーンスタインはどこまでも愛の人だった。

3人の登場人物がすごいのだが、その手紙を偶然発見し、このような書物にまとめられる著者がまたすごい。それを許すお二人がまたすごいのだが、多分著者を信頼されてのことだろうし、信頼されるだけの実績や情熱を持っておられたのだろう。
そのおかげでバーンスタインの偉大さを、改めて私のような者に知らしめてくれた。死後もなお愛し続けるお二人には何よりうれしいことだったにちがいない。

たくさんの愛や情熱やしぶとさが重なった1冊だった。

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2025年03月04日

Posted by ブクログ

面白くて一気に読み終わった。アメリカの巨匠バーンスタインのこと、当時のアメリカの事情とそれがバーンスタインの音楽活動にどう影響を与えていたか、それだけでも十分に興味深かったが、何よりも2人の日本人が、それぞれ全身全霊を込めて書いた手紙からあふれ出す熱量と、人生の成熟に伴う内容の変化、バーンスタインとの相互作用にただただ感動した。

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2024年12月17日

Posted by ブクログ

40年以上バーンスタインにファンレターを送り続けた天野和子。バーンスタインと激しい恋に落ち、数多くのラヴレターを送った橋本邦彦。ふたりが綴った数々の手紙を通して、芸術と愛に生きた巨匠バーンスタインの実像に迫る。

天野、橋本両氏が生きているうちにこの本が書かれてよかった。とても面白かった。

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2023年07月01日

Posted by ブクログ

バーンスタインの人柄、偉大さ、愛の深さ、音楽の素晴らしさ、全てが詰まった本でそれに歴史的背景や2人の日本人との繋がりを描いた作品。久しぶりにノンストップで読み進めてしまい、後半にさしかかるに連れ読み終えるのが惜しくなってしまった。 音楽って、素晴らしい!人って、素晴らしい!

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2023年06月21日

Posted by ブクログ

予備知識は皆無。どんな巨匠なのか、何も知らないまま読み始めてしまった。
でも、それが却って良かったのかもしれない。
音楽と人間をこよなく愛し、人を愛することと音楽を愛することは私にとって同じことだと言ってのける台詞を読みながら、彼の創る音楽を想像することができたから。

技術的な巧さや凄さだけではない、人間的な魅力を兼ね備えた人。そしてそれを音楽で表現できる人だったのだろう。そんなレナード・バーンスタインという一人の人間を愛した二人の人の、人生の記録。そういう本だと思う。

レナード・バーンスタインという人を評するような論文ではない。いたずらにセンセーショナルに、ドラマティックにしたりするような読み物でもない。「レニー」へ手紙を書いた二人の日本人の、その人間性や、口幅ったいことを言えば成長の軌跡のようなものに著者が感動して、それを伝えたい!という強い情熱を持っているのが伝わってくるような内容だった。音楽評論なんかじゃない、そこがとても良かった。

特に、若い頃のクニの、よりストレートな手紙は心を打つものが多い。身を焦がすような恋の切なさは、誰もが一度や二度は味わったことがあるだろうけれど、そういう気持ちが思わず甦ってきそうな臨場感あふれる言葉の数々。そのまま作品として通用しそうなほどの表現力に感嘆した。

大抵はみんな、そういう気持ちと折り合いをつけてオトナになって、たまに取り出して眺める卒業アルバムのように普段は目に触れない程度のところに仕舞って、セピア色になっていくのを感じながら年を重ねて、、、やがて思い出の一部にしてしまうのだろうけれど。

到底、そんな片付け方はできないほど強く、深く関係を築くことができてしまった彼らはある意味、とても幸せな、選ばれた人たちだったのかもしれない。たとえ、感じた幸せの分だけ、もしかしたらそれより少し多いくらいの辛さや、寂しさや苦しみや、切なさに耐えなければならなかったとしても。


手紙の内容から書き手の気持ちを慮るような、やや遠慮がちなトーンも窺える前半から、次第に後半へ進むにつれて、二人の手紙の内容と共にこの本の筆致も変わってくる。どんどん引き込まれてしまって、頁をめくる手を止められなくなってしまった。

物理的に近い距離に居ること、隣で一緒に時間を過ごすことだけが愛ではない。二人はおそらくそういう結論にたどり着いて、それを実践したのだろう。
レニーの見つめる、その同じものを見、感じて応援しようという立場に立った二人の存在は、レニーにとっても何より嬉しく、心強く、幸せなことだったはず。

やがて二人はそれぞれの歩む道を見出し、しっかりと自立して活躍するようになる。時を経てさまざまなことが変わり、年齢を重ねても、変わらず強くレニーへの愛情を持ち続ける二人の生きざまはとてもカッコいい。

「愛を見つけなさい」
レニーがクニにそう言ったらしい記述が出てくる。そういえばラングストン・ヒューズの詩にも似たことを言ったものがあったっけ。

クニの返事はこうだった。
「僕は幸せです。なぜならあなたを愛しているから」

世間一般に通用する「フツー」の幸せの形から外れてもなお、それが自分の幸せなんだと自覚し、それに伴う苦しみをも併せのんで愛し抜くことができる人はそういない。そういう愛のカタチもあることを体現するのは、口で言うほどたやすいことではなかったはずだし、実際、本当はもっと波乱の時代もあったのだろうと感じるシーンもある。でも結果的には彼らは、その出逢いからレニーがこの世を去るまで支え続け、そしておそらく今に至るまでも愛し続けているのだということが分かる。

この本の終盤、著者がこの手紙の束と出会った経緯や、二人とのやりとりが紹介されている箇所がある。
若い頃とはいえ、かつての自分が書いたプライベートな手紙の内容を公開されることへの葛藤があったことも率直に記されていた。まさに、著者の真摯な、伝えたいという情熱があったからこそ実現した内容だということが分かる。


「愛そうとする意思を持ちたい」というレニーの台詞が出てくる。そういう人だったからこんなに愛されたのだろう、と思う。
愛のある音楽には、説得力がある。
たぶん、文章も。
絵でも、彫刻でも、きっと。
人の心を打つものには、たぶんそういう共通点がある。

愛にあふれたレニーを愛した二人の、そのありように魅せられた筆者だからこそ実現した愛のある1冊。

素敵な人生哲学が、たくさん詰まっていた。

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2023年03月05日

Posted by ブクログ

すごい研究。さすが吉原先生。みんなも読みなさい。2019年に英語で出した本を日本読者向けに書きなおしたそうな。バーンスタインビジネスの姿と、おつきあいのあった男女、そして日本の企業とかの関係の話。

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2023年02月08日

Posted by ブクログ

偉大なるバーンスタイン

指揮をする姿や作品は知っていたが
私生活について詳しくなかった
同性愛者であることは
薄っすら知っていたが
最近はもう周知の事実になっているということにも驚いた
(映画も未見)

膨大な資料の中から
二人の日本人の書簡が

まずはあのバーンスタインに
そんな交流があったことに驚く
あのバーンスタインだぞ?
手紙の返事が来るとかうそだろ!
それが続くなんて…

当時の音楽界の事情も相まって
とても興味深く読んだ
当たり前なんだけど
バーンスタインの晩年は
私の若い頃と重なっている
途中まで歴史上の人物のように読んでいたけど
同じ時代にいたんだよな〜

その後の小澤佐渡と続いていくあたりや
北海道の音楽祭あれバーンスタイン発信なのかとか
音楽物としてつい読んでしまう

しかし
橋本氏はすごいな…
よく承諾してくださったな…
愛の深さよ…

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2025年07月12日

Posted by ブクログ

音楽という高尚な嗜みがない人生を生きてきたので、この、偉大な指揮者のことは知らなかった。
どれだけ偉大だったのか、2人の日本人や、指揮をふるうことでオーケストラの音楽が変わるとか、そういうところからわかる。
音楽と人間に対する愛がとても大きな人だったのだな。
倒れる直前、自身の父親のことで何か深い思いがあふれてきたのだろうか。
もしかしたら心の乱れから、苦しみが襲ってきたのかもしれないな、と想像したりした。

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2024年11月24日

Posted by ブクログ

バーンスタインのことは殆ど知らずに読み始めた。
音楽と人を全力で愛したバーンスタイン。核廃絶を強く臨んで、そのための活動もしていた。歌舞伎、能に深く惹かれていたバーンスタイン。
妻を深く愛し、同時に同性の男性も愛した人。とても人間的な人だったのだと知った。
バーンスタインが若き音楽家たちに投げかけた言葉も深く心にささった

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2023年08月29日

Posted by ブクログ

レナード・バーンスタインの数々の功績と、通常我々の目に触れることはないであろう、彼への、とてもプライベートな手紙の数々を読むのが面白かった

バーンスタインと親交が深かった天野と橋本という2人の日本人からの手紙を軸に構成されているのだが、特に橋本の情熱的な手紙は日本語訳を橋本本人が務めたというのだから驚きである。私だったら墓場まで持ってくぐらい切実な思いが綴られていて、よく本人が出版を許したな…と思った

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2024年06月01日

Posted by ブクログ

指揮者のバーンスタインについて、日本の2名のファンの手紙をもとにして描いたものである。日本のオーケストラの状況について説明されているし、協賛した様々なテレビ局や新聞社等のマスコミも描かれているので、マスコミが自画自賛して紹介するのも理解できる。
 日本のオーケストラについて卒論で扱う場合には読んでおくといいと思われる。
 原本は異文化交流分野の修士論文か博士論文であろうと思われるが著者は書いていないので不明。

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2023年10月01日

Posted by ブクログ

恥ずかしながら、レナード・バーンスタインをこの本で知った。

音楽や芸術、スポーツなど、政治とは関係ない、関係なく純粋に追求したいと思っても、そうはいかないんだなあという印象。
バーンスタインは自ら上手く利用しているところもあるように見受けられたけど、この時代のユダヤ系アメリカ人、そしてバイセクシャルの彼には、大変なことも多かっただろうなと思う。

そんな彼を理解し、愛して、支えた人が日本にいたという…そのレベルの人がいたことも驚きだけど、バーンスタインが世界中にそんな人がいるであろう中で、何十年も彼らと交流を温めて続けていたことに衝撃を受けた。
この人はなんという包容力、人を愛する(信じるなのか?)力を持っていたんだろう。そういうところが、世界的に評価される彼の音楽に滲み出ているのかも…
音楽には疎いけど、彼の音楽を聴いてみたくなった。

私たちの世代でクラシック愛好家は親が好きでないとなかなかいないだろうと思うのだけど(育ちが悪いからかもしれない)、当時はそんなに人気だったのか…。周りに話せる相手が思いつかないけど、誰かに話したくなる本だった。

※でも、あとがきで橋本さんが書かないで欲しいとあるように、こんなにプライベートなものを世界中に出版してしまうのもどうかなと…ちょっと思いました…

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2023年09月24日

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