あらすじ
元子を恨む波子は楢林と別れ、大物総会屋をパトロンにクラブを開く。政治家秘書の安島を通じ、医大の裏口入学者のリストを手中にした元子は、橋田をおどし、一流クラブ、ルダン買取りの仮契約を結ぶ。しかし、橋田、安島らの仕組んだ罠が元子を待ち受ける。安島との一夜での妊娠に怯える元子の前には黒服の男たちが……。夜の世界に生きる女の野望を描くサスペンス長編。
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Posted by ブクログ
弱みに付け込んで多くの人たちから金を巻き上げ、順風満帆に元子は銀座でのし上がるが、やはり恨みを買い過ぎた。最後は怒涛のしっぺ返しを喰らってしまう。人間模様も面白いが、銀座のクラブの仕組みや医師の脱税、医学部受験予備校の闇などの当時の社会の様子も読んでいて面白かった。インターネットなど無い時代に、松本清張はどのように調査や取材をしたのだろう。
Posted by ブクログ
めちゃくちゃ面白かった。
上巻から緻密に練り上げられていた構成が素晴らしすぎて、後半あまりの怒涛の展開に目が離せなかった。最後の最後まで本当に面白い。
古い作品だけれど旧仮名遣いなどは影響のない範囲で編集されているので読み易い。電話等の細かい所を除けば、最近の作品だと言われても違和感ないくらいだった。
主人公は勿論、それ以外の人物像も主人公の目線を通して恐ろしいほど生々しく描いていて、しかしそれがミスリードに繋がる作り込みが素晴らしすぎて鳥肌がたった。
Posted by ブクログ
銀行のお金を横領し銀座のママとして成り上がっていくことを策略する元子と周りの人々のお話し。
前編はトントン拍子に進むものの後編の途中ぐらいから雲行きが怪しくなり…
なぜこんなに酷いことをするのか、と元子自身も考えるが、結局は人の怨みの深さや断ち切れない愛情が根本にあった。それが金と性の欲望渦巻く銀座を舞台に、抉り出すように描かれていた。
ラストは実質的に元子の"敗北"で終わってしまうのだが、もう一つどんでん返しが欲しかった…が、白い壁に囲まれた15年間を脱して夢を見れただけでよかったのかしら…。
ちなみにこの小説は1980年に出版されたということで、言葉遣い(バーではなくバアと記載されている等)や、どこでもタバコを吸うこと、女性や同性愛者の描写の仕方など、随所で昭和だなあと感じる。それはそれで非常に興味深かった。
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★時間とお金のムダ
★★普通〜微妙
★★★よかった
★★★★心が動いた(感動した、意表をつかれた、ショックだった)
★★★★★人生の本棚に入れたい
Posted by ブクログ
自分が臆病だから、そんなことしたら人の恨みかっちゃうよ、と思いながらハラハラした。
でも、非日常な世界で上を目指してる元子を応援してる自分もいた。
途中から波子に嵌められてたことに気づき始めてからは嫌な汗かきながらもページをどんどんめくってしまうスピード感!
結局自分でコツコツと努力して手に入れたものしか信頼してはいけなかった(婦長からもらった情報も全てではなかった)ということですかね。
Posted by ブクログ
前半に続き、後半もほぼ一気に読んでしまった。不正な手段で金を得て順調にのし上がってきた元子が、逆に騙されていく後半。
波子の恨みからとはいえ、何人もの無関係な人間が元子を騙すことに加担するものだろうか。悪行の末とはいえ、あまりに救いのない結末で、読後感はよくない。
Posted by ブクログ
ドラマが好きだったので小説も読んでみました。
ラストに向かうにつれ元子の女性味が描かれていき、人の恨みというものの恐ろしさを感じました。
Posted by ブクログ
上巻の元子は応援したくなり、やるねえ〜と思いながら読んだ。頭の切れる人はかっこいい。構成が良いのでサクサク読んだ。
だが、下巻の元子はどうにも好きになれなかった。安島のくだりでは、今まで数字を見つめてきた人間が、そんな急に熱心になるものか?と思い、「敏腕であっても所詮は女だ」とでも言わんばかりの描き様に、興ざめした。女性の描き方が時代ならではで、今の感覚で読むものではないということだろう。
最後のどんでん返しでは元子は裏切りに裏切られ、寒気がした。そんな、ここまでしなくても、いいじゃないですか?妊娠・流産に関しては、「成り上がった女の転落」を描きたいばかりのように思ってしまった。後味があまりにも悪く、人間不信になりそうだ。
Posted by ブクログ
昨年から読んでいたこちらが、今年の一冊目になった。
実家(北陸)の暗い冬にピッタリすぎる、ゼロの焦点と、この黒革の手帖で年末年始を挟んで、なかなかの濃いお正月となった。
上巻は、原口元子がこわーい、と思いながら読んだ。
昨年末によくみかけた銀行の貸金庫丸パクリ事件は、この本の冒頭の顛末さながらである。
ブイブイ言わせる元子は、さらに上へ上へと挑戦していくのが上巻。
ところが下巻に入ってから、急に世界はガラリと足元から崩れていく。
そのおおもとは、上巻の元子の行動に恨みを持つ女たち。
ひどいしっぺ返しを受け、そのまま終わる…。
マジか、どこかでさらにやり返せるかと思ってたので、終わりまで見て頭が真っ白になった。
たしかに元子は酷い仕打ちをしてきたが、銀行時代の男性行員に対する苦しさや、悪い銭を貯めてきた小悪たちにムチを振るってきただけなのに、と思ってしまった。
安島との一夜の描き方はちょっと微妙。
こんな悪女もまた女だったのだ…!体の悦びに打ち震えていたのだった!とか言いたげな、清張氏の筆はなんだか古臭くておっさんの描く女像だな、ととたんに白けてしまった。
今までの元子がいなくなったようで詰まらない。
最後まで読んで、銀座の夜を舞台に、男や女のアツい戦いに燃えたのは事実だけど、このおわり方にはヒューと背筋が寒くなった。
みうらじゅんの言う、松本清張の後ろメタファーがよくわかった気がします…。
Posted by ブクログ
話が好みじゃ無さすぎて読むのにかなり時間がかかった。元子は悪どい割に詰めが甘すぎるのでキッチリ応報を喰らってしまったが、この分だと波子もそのうち引導渡されそうだ。総会屋とか今もいるんだろうか?