あらすじ
世界各国から研究者や大学院生が集まっている天文数物研究機構。ある日、若手研究者たちが主宰するセミナーに謎の青年が現れ、ホワイトボード二三枚に及ぶ数式を書き残して姿を消した。誰も見たこともないその数式は、この宇宙そして世界の設計図を描いた〈何ものか〉が存在する可能性を示唆していた。人類は〈神の存在〉に沸き立ち、アクセスを試みる。そして、その日から現実が大きく変わることになる……。「この世界にシナリオが存在したら、あなたはどう生きますか?」を問いかける衝撃作! 作家・早見和真氏が「『一気読みしたら負け』。プロになってからずっとそう思っていた僕が、一晩で読まされてしまいました」と絶賛したSFミステリー。
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Posted by ブクログ
私、701…覚えているわ…あれはそう…
とは残念ながらならない。私は光の人でも周辺人物でも無いんだなぁ。
科学と宗教とメタ認識のSF的融合。
山田宗樹さんのSFをいくつか読んできて、中でも最も観念的な作品だと思うのだけれど、そういう作品に起こりがちな置いてけぼり感が殆どない。個人的にはもっと分厚くなっても良かったなぁと思う。観念的だからこそ丁寧な心理描写が欲しい。宗樹SFを好む者は分厚くってもついて行く。と、思う。
エンターテイメントと言うほどの起伏は無い。ただ、自己認識が変容する不思議な作品だった。
以降は感想とは呼び難い連想文章となります。
消去された時間は巻き戻されるが同じ経過を辿らない。かと言ってパラレルワールドではない同一世界。ループというより螺旋様。トルネード広場はそう言う暗示かな。
生命の樹の様に放射状に広がるのではなく、単線がぐるぐる伸びるイメージは、私の中で新しかった。
まったき真理が存在するとして、意識的でも無意識的でも、それを感受、発見出来た人間が居たとして、自分と同じ生物にそれを伝えるための技術を持たないか、或いはまだ開発されていないので証明出来ない、示せないとして、だが伝えなければならないとなるとどうするか。
そこには飛躍が必要になる。
数学、科学、物理学、哲学、宗教、物語エトセトラエトセトラ。
数学と物理学の驚くべき一致。
宗教は解釈によって出来上がる。物語が広がるように。深まるように。
無数の思想、全ての到達点が一つなのではないか。そんなふうに考えることがままある。
物理的な身体としての世界は入れ子式だと思っていて、それが全部だと思っていたのだけれど、精神的な世界もまたそういう風に存在するのかもしれない。物語の中で世界は閉じた。脳内で出来上がった『存在しない時間の中で』という世界もまた閉じた。私という世界もいつかまた閉じる。私という世界を認識していた世界もまた…
頭の中でずっと平原綾香さんの『君といる時間の中で』が流れていた。わたし的にこの作品のテーマ曲。
良い時間を過ごした。