あらすじ
活版や写植からデジタルフォントへ、文字印刷が急激な変化を遂げた平成の30年間。雑誌、マンガ、CD、テレビ……多様なメディアの書体の変遷から時代を読み解く。
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Posted by ブクログ
書体(フォント)という観点から作品を語るコラム。
文字を読むときは、書体のイメージも含めて読んでいる、ということを再認識できて、とても面白かった(これは私たちは普段から無意識で行っていることだが、人間の認知能力というのは本当に底知れない)。
書体になじめなくて読めない本があったというエピソードや、説明されても書体の細かな違いが私にはわからなかったりと、著者の書体に対する感覚の鋭さや表現の豊かさに驚きすら感じた。出版社に勤務されていたからこんなに詳しいんだな、と納得しかけたが、こどもの頃から感覚的に書体の違いを味わっていたようで恐れ入る。
「芥川賞受賞作品」とか「夏の文庫フェアの1冊」とか、自分の中でカテゴライズしながら作品を読むことはあるが、「あの作品と同じフォント」という観点で読んでいく発想はなかった……!
『ちびまる子ちゃん』がエッセイマンガからフィクションにシフトしていったのは、原作では大人になった作者自身の声だったはずのモノローグがアニメではキートン山田のナレーションとなったことが一因、というのは私も考えていたことだが、そこに書体の視点(タイポスという書体の声が変質して客観性が生まれたから)まで入っているのはさすがだと唸った。
他にも身近な作品を挙げながら、ちょっと驚くネタもあって、楽しく読んだ一冊だった。
この本に使われている書体はなんなのか、気になってしまった。