あらすじ
ウイルス学者は、ウイルスを作り出すことができます。感染細胞から、ウイルスのタンパク質の設計図が書いてあるDNAをとってきて、それをプラスミドという大腸菌内の環状DNAに入れて増殖させるのです。あくまで物質であるDNA(デオキシリボ核酸)を、「生命の場」である細胞に入れてやると、ウイルスとなる。まるで生物と物質の境界を行き来するような実験です。ウイルスは、私たちがもっている生命観からはみ出てしまうような存在なのですが、本当に例外的なものなのでしょうか? さらにウイルスは、ある動物のDNAを、別種の動物のDNAに運ぶことがあります。レトロウイルスはまさにいま現在進行形で、コアラのゲノムに入り込んで、そのDNAを変えようとしています。一方、人間の腸内には約1000種、100兆個もの細菌が住んでいます。このような例を考えると、生物の世界は「種」あるいは「個体」が独立した世界なのではなく、全体で「生命の場」というものをつくりあげ、私たちは関係性の中で生きているといえるのではないでしょうか。本書は、「生命には場が必要であり、実は全体で一つ」「ウイルスが生命をつないでいて、生命の場を提供している」「個という概念をもつことは生物学的に正しいのか」といったテーマについて、ウイルス学者の視点から考えます。 【目次より】●1年以上、生死について考えて苦しんだ ●ウイルスを作る ●ウイルスを排除することはできるか? ●細胞間情報伝達粒子がウイルスになった?――エクソソームがウイルスの起源なのか…… ●さまよえる遺伝子 ●種はどのようにして分かれていくのか ●現代のコアラはタイムマシーンか――種の壁を越えていくウイルスの現場 ●個とは何か? ●生命が生まれたのは必然か偶然か
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Posted by ブクログ
なぜ私たちは存在するのか 宮沢孝幸 PHP
ウイルスがつなぐ生命の世界
読み出してみると命について
ほとんど知らない角度からのアプローチだったので面白かった
それというのもとても近い考え方をする人だったからだと思う
個とは何か?全体とは何か?
この世は偶然か必然か?
最も宮沢さんは超努力家だし頭も良すぎる
好奇心も旺盛でシッカリと取り組み
自分を守る曝け出してまっしぐらに走る
人生を無駄に過ごすことがない
閃きも感度良く超人である
Posted by ブクログ
覚悟のウイルス学者が、異種の生物の間での遺伝子の移動やウイルスがもたらすDNAの変化に着目して新たな生物観を示す。
「PHP研究所」内容紹介より
これは1冊目の『京大おどろきのウイルス学講義』とあわせて読むのがよさそう.本文のところどころに1冊目に詳しく書いたという箇所が出てくる.
内容はウイルス学に詳しくないとところどころ難しいけど、正確に分からなくてもどういうことか、が分かるように書かれている.
宮沢さんの頭の中にあるストーリーを、実際の実験によるデータという証拠をあげながらひとつひとつジグソーパズルのピースをうめるような感じでいるんだろうなと想像する.面白い思考実験と手を動かした実験をしている.
Posted by ブクログ
最後の洞察が良い。我ら人類はいったい何ものなのか、私という個は何なのか、考えさせられる!
いずれにしても良い新型コロナでテレビに出まくった「専門家」は、とんでもない輩ばかりというのが良く分かった。