【感想・ネタバレ】本の現場 本はどう生まれ、だれに読まれているかのレビュー

あらすじ

本書は、『図書館の学校』( NPO図書館の学校)で2005年から2007年にかけて連載された原稿を主軸にした、「本が生み出される現場」「本が読まれている現場」の記録である。
この30年で出版点数は4倍になったが、いっぽう1点あたりの販売金額は半分になった。
なぜこんなことが起こったのか。理由を知りたい。
それが取材をはじめるきっかけだったと著者永江朗氏は言う。
この5年間で、「本が生み出される現場」は大きく変化しはじめている。
自費出版ブーム、ケータイ小説の爆発的売れ行き、ライターや編プロが置かれるますます厳しい現状。
一方「本が読まれている現場」はどうか。
変わりつつあるのか。
「読書ばなれ」は本当か。
新書ブーム、ベストセラーはだれが読んでいるのか、などなど。
変遷する「本の現場」から何が見えてくるのか。何を見るのか。
巻末には、本のディレクションを生業とする幅允孝さん(BACH)へのインタビュー、編集部による永江朗氏へのインタビューを収録した。
最後に、そのインタビュー中に「ではこの本は再販をはずしてやってみましょうか」という話になった。
本書は、定価ではなく、希望小売価格で発売します。

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Posted by ブクログ

本の現在(2005から2007の原稿)を制作側と読者側の両方から考えている本。

本書の特徴は何といっても著者の想像や推測の産物ではなく、関係者へのインタヴューや統計資料を基に考察が行われているという点。

そのため楽しく読め、かつ、他の本では扱われていない現場(編集プロダクションなど)の声も汲み取られている。

電子書籍に関してはまだまだ携帯漫画だけの時代なので、ほぼ言及はない。
ネット発の本に関しては現況の本ということに限るのであれば、現在にも当てはまるのでは。
ただ、ブログやニュースサイトなどはそれはそれで一つの形態であり、パッケージされた本とは別の次元で考えるべきだとは思う。

どうしてベストセラーに対して嫌悪感があるのかとういことは自分も気になる。
多くの人が楽しく読めるということは内容が平易だろうと思ってしまうからか、はたまた、ありきたりな内容の携帯小説がベストセラーになったことがあるという過去の実績からか..。

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2013年02月14日

Posted by ブクログ

発行部数の増加→1冊あたりの販売部数の低下→返品率の増加(4割)

出版社は納品数より返品数が多くなる事態を避けるため、納品数(新刊数)を増やす→→本の短命化(1冊の本が書店に並ぶ時間が4分の1に)

出版社が本の内容の良さを保障していないことが問題
漫画誌→ネットへ→出版社が楽になる


インターネット=無料・おもしろい
→コンテンツを作るプロと素人の差別化が重要=おもしろさの保障

情報の無料化について考える
→自分の会社に利益をどうやって出させるか

無料=多くの人に見てもらえる、読んでもらえる手段

値段と情報流通の関係

フリーペーパー=消費者の値段の感覚を変える?→本の首を絞める?
ex)bookoffは安い→正規の価格は損なのではないか


出版社:売れないからたくさん作る→出版点数の増大→書籍の短命化→1冊あたりの販売部数の減少

→→→売れないからたくさんつくるという状況をやめるべき!!
   売れない原因の追及が必要

書籍本来の目的=読んでもらうこと

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2011年10月06日

Posted by ブクログ

1990年代の出版界の状況を書いた佐野真一の本を読んだことがありますが、この本は2005年以降の本の読まれ方と出版界の現状についてまとめています。
最近、通勤電車に乗っていて、本を読んでいる人が増えているように思います。90年代はマンガ本か雑誌や新聞、2000年頃から携帯電話やゲーム機で遊んでいる人が多くなったような記憶があります。ここにきて本の良さがまた見直されてきているのかなと感じることがあります。そのような兆候も既に2007年頃からあったようで、筆者はネットに飽きてきた人達が回帰してきているのではないかと考察しています。そのような読者を巡る環境の変化に加え、出版界の問題(特に再販制度)など多方面から考察しており、とても面白い内容です。現代の読書事情をザックリと理解したい人向け。

(覚え書き)
・新刊洪水の要因は再販制度にある。
・自費出版ビジネスの問題点、書きたい人は増えるが読みたい人は減っている現状。自費出版は制度にも問題がある。
・ネット小説は一時期メディアに取り上げられたが、その後は思ったほど売れていない。
・フリーライターが増加しているが、続けるには書き続ける能力と経営感覚が必要。
・編集プロダクションは出版社には便利な存在で増加している。実態は過酷な条件での仕事が多い。
・情報の無料化(フリーペーパーなど)のからくり。無料だけれど、その費用は結局読者が払うことになる。
・朝読が学校で実践されるようになってきた。若者の読書離れと言われるが、このような活動は効果がある。朝読をやるようになって、生徒が落ち着いて勉強できるようになった。
・親が本を読まない家庭で、子供に読書させようとしても説得力がない。
・出版界は、読者の本離れを本が売れない理由に挙げているが、きちんと統計を取っていないなど業界として努力が足りない。
・新書がブームで各社で競って新刊を出しているが、内容は薄っぺら。しかし若手の学者にとっては良い発表の場となっている。
・独自のセレクトによる新しい業態の本屋も増加している。書店の活性化のアイデアとして注目。
・いろんな基準による文学賞があることは良いことである。文学賞は芥川・直木賞だけではない。ノミネート作品が発表されると、大量発注・大量返却(外れた作品)が発生するが、これは書店にとって悪しき習慣。
・ベストセラーになるには、読者が「飛びつく」感覚が必要。

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2010年08月24日

Posted by ブクログ

わかりやすいです。本を巡る環境は2010年大きく変わると思われるので、そのへんは考慮しないといけないだろうけど。

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2010年05月31日

Posted by ブクログ

「本のニセ金化」、「新刊洪水」など、出版業界の腐った部分がこれでもかって程暴かれている。
旧態依然の構造に囚われている業界の真相を知るにはうってつけの一冊。

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2010年05月03日

Posted by ブクログ

既得権ビジネスは、イノベーションのジレンマでまだまだ苦しむんだろうな。

うちは、親戚みな本が好きで、親は数千冊本を持っている。
本がある環境で育ってきたけど、そういうほうが少ないのかな。

12,35,50,59,75,83,106,135,138,217,219

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2010年04月13日

Posted by ブクログ

●70年代から00年代の30年の間に新刊発行点数は4倍になった。けれど、本は売れなくなった。→コスト・質を下げてでも本を出す。なぜなら再販制度があるから、書店・取次に返金をしなければならないため、それを上回る本を出す。→自費出版、ネット本、素人ライターでコストダウン→そして、質は下がり、売れない本がますます増える。こうして悪循環が生まれて、出版業界の自転車操業と新刊洪水は、本の短命化をもたらした。読者の知らないところで、本が生まれ、返品される。

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2018年10月22日

Posted by ブクログ

読書離れは本当に進んでいる?そんな疑問に答えてくれる本。簡単な統計ひとつとっても電車の中で本を読む人は減っていない。これは青少年の犯罪が実際は減っているのに増えていると感じるのと同じこと。唯、本が売れていないだけ。その他にも本屋大賞の成り立ちや新刊の現在の発行状況等について詳しく教えてくれる。

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2015年06月08日

Posted by ブクログ

出版業界で起きている様々なコトをルポ。
出版社や本屋にとって、今の状況は全然よくない。でも何かを変えるのは、怖い。
もう限界だ、システムが破綻してると言われ続けて何年経ったんだろう。
この本が出て、もう5年。事態はさほど変わっていない。

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2014年11月30日

Posted by ブクログ

書店の平台に並んでるのが嫌韓・嫌中系の本ばかりだという批判があるが、それを取り除いたところで残るのは『長生きするには肉を食べるな』みたいなあやしげな健康本か『ほんとうに夢を叶える引き寄せの法則』みたいな胡散臭い自己啓発本か『◯◯力』みたいな芸能人が書いた(とされている)中身の無い新書ばかりだろう。そもそも本の中身に関わらず、買われた本はろくに読まれていないとすれば、扇情的なタイトルでいかに売るかだけを考える業界の構造は、システム的に当然の帰結だ。

再販制度、自費出版、ベストセラー、本屋大賞、新書ブーム、インターネットとの関係、などなど。本書では、業界外にもよく知られた問題を取り上げるが、共通するのが『本』というのはもはや純然たる『読み物』ではなく、物質としてのパッケージングがあることにより、タイトルの内容に興味・感心があることを内外に示す自己顕示欲としての意味合いの方が強くなっているということだ。スマフォの普及により、ネットニュースで、まとめサイトで、twitterで、LINEで、と活字を読む機会はむしろ増えているが、現状の本の売れ方が『読むためのもの』ではなく、『物として所有すること』による面が大きいとすると、本をそのまま電子書籍にしても今までのような売上を維持できないのは必至だろう。

業界というものはあるべき姿が存在したとしても自然にはそうはならず、ただシステムのインプットとアウトプットのフィードバックの流れにまかせ、行く末が決定される。だからといって正しい眼と耳を持って予測したとしても、ブラックスワンのような、予想が出来ない方向からの革新が登場する可能性もある。そこそこの顧客でありながら業界の裏側の端っこにもいる自分としては、せめて既得権益の保護のためではなく、新しいシステムの構築のために働きたいものだ。

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2018年10月20日

Posted by ブクログ

7年前の本なので、背景的な部分はかなり古い。ただし出版を取り巻く環境や、人といった視点ならば内容的には参考になる部分も多い。

細かいところまでは理解していなかったが、既存の出版界は返本制度のために「返本による返金があるために、返本になる以上の本を出版しなければならない(出版分-辺本分の金額がキャッシュ・フローになるため)ために、内容の粗悪なものでも数を出して稼がなければならない」という状況。
こーゆークソな環境がまかり通っていて、それを変えられないような業界ならばもう息は長くないのでしょう。
なるほど。

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2013年02月13日

Posted by ブクログ

夏に大学の資格講習で紹介された本。

副題の通りに「本はどう生まれているか」「本はどう読まれているか」と二部立ての構成になっている。
読書ターゲットは出版業界に関わる人や業界を志す学生。グラフや表などを多様しており、興味や問題意識を持つ人には、わかりやすいのだろう。文体も易しく、高校生程度なら読めるのではないだろうか。

ただし、門外漢の私にはいまいち理解できず…
どうやら著者は、出版業界に問題意識を持っており、それを批判する立場らしい。
わからないなりにも、「あ、そう言えば…」という部分はたくさんあった。
私たちの読書も、目的や必用性のあるものは選書に気をつけないといけないな、と感じた。

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2012年08月12日

Posted by ブクログ

出版社の事情、編集者の事情、ライターの事情、情報の変化・・・。社会はどんどん変化している。
本をとりまく人々やしくみの対応できないさまざまな要因、実験的な試みからの新しい芽。
事情を知っておくことで、関係のとり方を工夫することができると思う。

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2011年03月08日

Posted by ブクログ

若者の活字離れって聞く度にほんとかなって思ってたところ、この本を読んで確信しました。活字離れの背景にはむしろ本をあまりよまなくなった大人による出版会の売れ行き不調が、あたかも本をあまり読まないと思われがちな若者へと向けられたものから起きているものなんだと。むしろ若者は本を読んでいるんだ!

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2010年03月04日

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