あらすじ
再び東北を襲った災禍「アウターライズ」の被害者がわずか六名……? 東日本大震災に匹敵する大災害にどんな対策を講じたのか注目が集まる中で突如、東北県知事会が“独立宣言”を行った。それから三年、一切の情報が遮断された「東北国」に、ジャーナリストが招かれる。あの日、何が起きたのか。鎮魂の祈りを込めた、緊迫の長篇ミステリー。
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Posted by ブクログ
赤松利市『アウターライズ』中公文庫。
東北地方が独立するという設定は、井上ひさしの『吉里吉里人』と似ているが、そこは赤松利市の小説だけに一味も二味も違う。
赤松利市が描く『東北国』は、国家としての理想の姿だろう。医療費は無料で、ベーシックインカムにより食事が保証され、住まいも無料の『東北国』。非正規雇用を増やし、労働者を低賃金で働かせるブラック企業を野放しにし、増税の連発と物価高騰に何ら手を打てない日本国よりも、国家としての体を成している。
散々復興だの、絆だの綺麗事を並べておいて、東北の津波瓦礫の受け入れを拒否した東京都民、陸前高田市から奉納しようとした護摩木を放射能汚染の懸念があると言って拒否した京都府民。住民の意見など無視した東京電力が所有する福島第一原発の汚染水の海洋放出。復興五輪とか言いながら、それが復興の障害となり、結果的に汚職と金権にまみれた東京五輪。
国家にも中央からもバカにされる東北地方は、本気で独立した方が良いのかも知れない。
東日本大震災から10年後、再び東北の三陸沿岸をアウターライズ地震により、東日本大震災を超える巨大津波が襲う。復興への道程を歩み続けた10年は泡沫のように消え行く。
しかし、巨大津波の犠牲者は僅か6名。異常に速い自衛隊の動き。やがて、東北県知事会は東北国の独立宣言を行い、国としての実態が整うまで鎖国政策を行う。
鎖国から3年、ついに『東北国』はジャーナリストを招待し、国家の全貌を明らかにする。
犠牲者が6名だけで済んだ理由に驚愕。ラストに感涙。
本体価格840円
★★★★★