あらすじ
「待つ」ことでしか、進まなかった人生がある。
今は古びた平成初期の新興マンション。 その一室に、ひとりの年老いた男が、孫とともに住んでいた。
男が訥々と語る、心温まる、この部屋の思い出。
孫はここで、ずっと母を待っている。
この部屋に残された母の愛に囲まれて。
しかし、男が語る思い出はすべて“嘘”だった。
かつてこの男は、とある幼い兄妹から、この部屋を奪った。
男には、そうしなければならない、痛切な理由があったーー。
風吹く部屋で、ずっと誰かを待ち続けた、ある家族と男の物語。
水野良樹(いきものがかり)が筆名で描く、渾身の書き下ろし小説。
■著者からのメッセージ
すぐに話せて、すぐに理解できる。
待つことが少なくなったそんな世界において、人に会えず、先が読めず、いつ終わるかわからない、待つことを強いられた3年間でもありました。今という瞬間を侵食する過去との向き合い方。そして場所に沈殿し、宿り続ける記憶。
人生という自分たちの時間を、前に進めようともがく人々の物語です。
なお、本小説のプロットから受けたインスピレーションを元に創り上げられた楽曲『ただ いま (with 橋本愛)』が、各種音楽配信サイト・ストリーミングサービスにて配信中。
本楽曲は女優の橋本愛が初めて作詞を手掛け歌唱を担当。
作曲は著者の清志まれ、編曲は鈴木正人が手掛けた。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
今まで読んだ本の中で1番泣きました。
チューさんの深い愛情も、深雪と駿介、はるとがそれぞれずっと待っていた母親に対する想いも、それぞれの母親が子供を想っていたことも、ぜんぶぜんぶ深い愛情からくるもので。
最後の駿介がはるととはるとの母親に向かって言った言葉に、幼い頃ずっと母親を待っていた自分の気持ちや今でも持っている後悔が痛いほど伝わってきて大号泣でした。
語彙力がないから上手に感想を書けないのが悔しい。
でも本当にみんな読んでほしい。水野良樹の才能ってどこまであるんですか泣泣泣
Posted by ブクログ
清志まれ、実はいきものがかりの水野良樹のペンネーム
小説は初めて読んだけれど…とても緻密で丁寧に描かれていて、もっと話題になっても良いのになぁ〜と思うくらいに良かった
別の作品も読んでみたい
Posted by ブクログ
作家名は、初めて聞いたが、「いきものがかり」の水野氏による小説。
作詞家らしく、一文一文が、比喩的な表現で、まるで歌詞のようだ。
市役所で福祉を担当している主人公の女性、自身も親に捨てられた過去がある。その過去につながる案件を担当することになり、過去の真相が明らかになっていく。
ミステリーの要素もあるので、先が気になって焦って読み飛ばしそうになるが、、、。そうするにはもったいない美しい文章の集合体のような小説だった。
Posted by ブクログ
子ども達を守るために失踪した母親、その子供達を施設に逃がし、アパートで彼らの戻ってくるのを待っているチューさん。平成から20年、また同じように母子を助けて待つチューさんに認知症が表れて、そして運命は待ち人に出会いを運んでくる。
すれ違う気持ち恨む気持ちに最後は愛が勝る。良かったけれど、もう少し早く会えたでしょうねと残念。