あらすじ
戦後を代表する知識人である丸山眞男と加藤周一は、いかにしてその思想を育んだのか? ともに青少年期に戦争を体験し、その時代の空気の中で「日本人のものの考え方とはいかなるものか」という問題意識を深めてきた。当時の政治や文化の動向を丹念に追い、その思索や行動の跡を示すノートやメモ等の豊富な資料とともに、出生から敗戦まで二人の自己形成過程を比較対照し、20世紀の日本に生まれた知的風土の根源に迫る。
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Posted by ブクログ
戦後民主主義を代表する二人の思想家の、おおよそ太平洋戦争の敗戦を迎えるまでのあゆみをたどっている本です。
学生時代の丸山が、長谷川如是閑の講演を聞きにいった際に特高に捕まり、理不尽な取り調べを受けたことはよく知られています。加藤もまた、戦争へと突き進んでいった国の行く末に憂いをいだいており、非合理的な必勝の信念を説く同級生をやり込めたエピソードが『羊の歌』正・続(岩波新書)で語られています。こうした体験をもつ二人の戦前および戦中のすがたを追っているということもあり、いきおい自立した精神の持ち主が「暗い時代」をどのように生き延びたのかという観点からの記述になってしまうのは、しかたがないことなのかもしれません。
とはいうものの、「知識人の自己形成」というサブタイトルをもつ以上、「自己形成」の部分に鋭くせまる内容を期待していたので、若干もの足りないという感想をいだいてしまいました。他方、戦後「知識人」の若き日のすがたをたどった評伝としては、おおむね満足できる内容だったように思います。