あらすじ
1980年に当時の大平正芳首相のもと、当代一流の知を結集してつくられた「田園都市国家構想」。それは人間的で文化的な国家を目指すすぐれた長期的国家ビジョンであった。その構想の原点となったエベネザー・ハワードの田園都市構想、それを発展させた農政学者・柳田国男による知られざる日本独自の分権的田園都市構想を検証。大平構想にあった家庭や地域コミュニティ、自然や文化の回復、そして国家と都市、地方が調和して発展するというビジョンを21世紀に再生させる試み。
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Posted by ブクログ
故・大平正芳総理は、「田園都市構想」を皮切りに、当代一流の学識者を集めて「9つの政策研究会」を設置。盟友・田中角栄氏の『日本列島改造論』は、地方への配分を手厚くしようとしたのに対し、この「田園都市構想」は「都市に田園のゆとりを、田園に都市の活力を」のスローガンのもと、日本全体の「本格的な長期的国家ビジョンが描かれ提出された」とあります。本書は、この構想のもととなったE・ハワードの『明日の田園都市』と、関連した柳田国男氏の『都市と農村』を軸に詳述しています(こうした流れを汲んだ今の「デジタル田園都市構想」は、単にITを推進しようというのみで、国家感に乏しいと著者は少々手厳しいです)。
「田園都市構想」を含む「政策研究会報告」は、大平総理の死去(1980年)後、総動員で四十九日以内にまとめ上げられました。報告から43年がたち、テレワークで都会にゆとりができ、インバウンドで地方の魅力が世界から注目されるようなれば、「都市に田園のゆとりを、田園に都市の活力を」が、新たな形となって実現するのかと思いつつ読み進めました。