あらすじ
「リスキリング」とは、業務上の知識や技術を新しく獲得すること、そしてそれを企業が従業員に促進することである。しかし日本の社会人のほとんどは、学びへの意欲が極めて低い。統計的にも、大人が世界一学ばない国である。これは決して個人の「やる気」不足のせいではなく、日本企業の働き方やキャリアの「仕組み」に起因するのだ。調査データや学術知見を基に、日本企業がリスキリングを通じて生まれ変わる方法を提言する。
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Posted by ブクログ
リスキリングのブームは(1)DX(デジタルトランスフォーメーション)の潮流(2)人的資本開示の潮流から起きた。しかし、そのリスキリングの対応は表層的と言わざろう得ない。それはリスキリングを工場モデルで考えているからだ。(個人へスキルを注入する。)欠点としては、1)「個」への過度のフォーカス、2)学びの偏在性(学ぶ人しか学ばない)、3)スキルの明確化がスタートに置かれている(例えば、次はどのプログラミング言語が市場で求められるか?は誰も予想できない)、4)スキルを「獲得した」らすぐに「発揮出来る」と短絡的に考えている。
企業が従業員に対して行う研修が、果たして企業の業績にプラスに寄与するのか?
=>根本的な問い
人的資本への投資は「行動成果を通じて」企業業績を上げている。
リスキリングのブームは、「自律的なキャリア形成」の流れと結びついている。
「人的資本」の議論とも結びついている。
「人的資本」以外に、「文化資本」、「感情資本」が考えられている。
日本のリスキリングの成否のカギを握るのは、「心的資本」と「社会関係資本」という2つの資本概念。
「個人のやる気」頼みのリスキリングを止め、リスキリングのための動機づけを「仕組み化」すること。
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スキルの明確化とは、鋳型の正確性を求めようとすること。
x軸「スキルの広さ」 y軸「特定領域の専門性の高さ」 z軸「うまくやるスキル」(一般的な仕事のスキル)
z軸は測る物差しを作れない
日本企業はz軸を重視してきた。
政府・行政が支援すべきリスキリング領域は、非正規雇用者・有期雇用者のリスキリング。
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「世界で最も学ばない日本人」
学ばない理由は「なんとなく」。理由なぞない。
「学ばせたくない企業」と「学びたくない」国民の共犯関係。
先進国では企業横断で、「賃金相場」「労働組合」「職業資格」「教育制度」「キャリア観」が成立している。
中高年の不活性感の他人事感
実際に日本の現場で目にするのは、キャリアの主導権を企業に握られつつも「なんだかんだ、そこそこ楽しく」働いている多くの会社員の姿。
日本のキャリアは中動態的。
日本の昇進構造。「オプトアウト」方式の平等主義的・競争主義的な昇進構造。
女性が段々脱落していく。
変化抑制意識とは、組織の中で業務上の変化を起こすことを「負荷=コスト」として捉えてしまい、自発的な変化を起こすことを避けようとする意識のこと。
変化抑制意識とは「変化コスト予期」と同義。
職場の秩序を崩してしまうという意味で、イノベーションははた迷惑なもの。
社会心理学者F・H・オルポートが提唱した「多元的無知」という概念。
集団の多くの成員が、自分自身は集団規範を受け入れていないにも関わらず、他の成員のほとんどがその規範を受け入れていると信じている状態。
社会学のメディア研究 「沈黙の螺旋」
日本企業の横のつながり-メンバー間の職務横断的な協働関係を支えてきた「助け合い文化」や「業務の相互依存性」-が「個の新しいアイデア」や「変化を生む意思」を削いでしまう<変化抑制意識>を高めている。
心理的資本 フレッド・ルーサンス「こころの資本」
「変化適応力」を促進する「目標達成志向」「新しいことへの挑戦や学びへの意欲」「興味の柔軟性」の3つ。
就業者のリスキリングを支える3つの学び
1)捨てる学び アンラーニング(学習忘却)
2)巻き込む学び ソーシャル・ラーニング
3)橋渡す学び ラーニング・ブリッジング
アンラーニングを妨げる中途半端な成功体験
役職について3か月から半年でアンラーニングがピークに達し、以降なだらかに低下していく
人事評価5段階中4ぐらいの評価を受けている従業員がもっともアンラーニングが低い。
アンラーニングを促進する「限界認知」
限界認知とは、「これまでの仕事のやり方を続けても、成果や影響力発揮に繋がらない」という自分の仕事の限界を感じること
限界認知を突きつけられる
修羅場の経験
越境的業務(越境学習)
新規企画・新規提案の業務
男女の経験格差も問題
他者との学びの4つの機能
「真似し合い」:模倣、真似、観察学習
「教え合い」:指導・教育、フィードバック、支援活動
「創り合い」:知識の創発、知識の共有、共同実践
「高め合い」:目標伝染、動機づけ、威光模倣
個人のやる気の付け方
ろうそく型:個々の心の内面に火をつける
炭火型:他者を通じた、他者を経由した動機づけ
アメリカの社会学者ロナルド・バーとの「構造的空隙」
世界一他人を信頼しない国 日本
社会関係資本の薄さ 社会開拓力のなさ
「工場」から「創発」へ
変化報酬と挑戦共有
報酬としての「ポスト(役職)」「金銭」「経験」
形骸化する「目標管理制度」
改善重視
明確さ重視
役立ち感
従業員の「評価観」を変えるために「なんのために目標管理を行っているのか?「人事評価の狙いは何か?」をメンバーに伝える機会をもつこと
フォワード・ガイダンス
コーポレート・ユニバーシティ