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Posted by ブクログ
ケチンボのにこにしては、珍しい正規購入本。だって、上巻の帯ウラで
「桐野夏生が描く当世地獄絵図(めぐり)」などと煽られたら、ねぇ。
上巻の表紙は小島佳那。1986年入社の証券会社のフロントレディ。いわゆるバブルでアゲアゲだった時代の話です。萬三証券という中堅どころの証券会社の福岡支店を舞台に、佳那、水矢子、望月という3人の若者を軸に物語はすすみます。佳那は短大卒、望月は大卒男子、水矢子は高卒。貧しい家庭の出身の彼らは、当時のバブルの勢いを得て、自分の力だけで生きるための資力を得ようとするのですが、果たして。
当時の証券業界のデタラメっぷりが、垣間見えます。ネットなんて、影も形もなく、どぶ板と称されるような飛び込み営業で証券を売る。売る相手にも知識なんかなく、いいように転がして、ノルマ達成の道具にするだけ。モラルゼロ。こんな風潮を「男の世界」と称して、もっともっとと煽り立てる。佳那はこんな世界で、なんとか頑張っていこうとするのですが、なまじ美貌だったために、そこにつけ込まれてしまう。姉の交際相手で富裕な医師の須藤に枕営業を持ちかけられ、危うく逃げた佳那でしたが、同期の望月はそのことを利用して須藤に取り入り、のし上がる足掛かりにしていく。福岡支店トップの売り上げを達成し、イケイケの望月。その望月に望まれて、婚約者となった佳那。このまま順風満帆、夢の海外生活も射程内か、と思われたのですが。NTT株の放出を契機にできた山鼻とのつながりが、望月と佳那の将来に暗い影を落とす。以下、下巻へ。
NTT株の放出とか、なんか懐かしいです。貧乏育ちだったにこには、縁もゆかりもない話でしたが。この本を読むと、なくて幸いだったな、って思います。