あらすじ
アクセシビリティとは「利用可能な状況の幅広さ」のこと。より多くの人が,より多くの環境で,より多くの状態で利用できることです。もちろんそこには視覚・上肢・認知などに障害があるケースも含みます。日々繰り返し利用するWebアプリケーションにこそ,アクセシビリティが求められます。
Webサイトに比べて,多くのインタラクションを行うWebアプリケーションでは,アクセシビリティの確保はやや難易度が高いものです。特に既存のWebアプリケーションは複合的な課題を抱えていることが多く,教科書どおりの方法では必ずしも改善できません。
本書では,Webアクセシビリティの基礎である「HTMLとWAI-ARIA」を解説したうえで,Webアプリケーションの要である「フォーム」,色やテキストなど「UIデザインの基本」,モーダルダイアログや通知など「少し複雑なUIパターン」の3分野に分けて,よくある事例を取り上げながら,現実的で段階的な改善方法を紹介します。
さらには,デザインシステムの活用や組織での推進法など,アクセシビリティの取り組みを定着・推進・向上させるためのノウハウも詳説します。
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Posted by ブクログ
Webアプリケーションのアクセシビリティについてかなり広い範囲で知ることができる。コードを提示して具体的な改善例を挙げている点も明確でよい。
また、技術的な内容だけでなく、本書の前半ではWebアクセシビリティへの対応の意義(捉え方)を知ることができる。
> 社会モデルでは、障害は社会の側にあると考えます。多様なユーザーの状況がある中で、社会や環境が対応できていないがゆえに障害が生じているという考え方です。車椅子ユーザーで考えると、この人が段差を登れないのは段差を生じさせている環境や社会側の問題であると考えるのが社会モデルです。この問題を解決するには、段差に対してカーブカット(段差の一部を斜面にして段差を解消する)を施行することになります。(医学モデルと社会モデル)
障害者差別解消法への言及も、「合理的配慮」や「環境の整備」など関連する概念の捉え方が丁寧に説明されていてありがたい。
組織への導入について書いている7章では改善の進め方やワークショップなどに言及している。ルールへの準拠としての間に合わせのWebアクセシビリティへの対応にとどまらず、利用者への配慮や対応するための環境を考えるような場合、以下のような向き合い方が必要なのだと認識した。
> 活動を継続するには、アクセシビリティを切実に必要とする人と直接に出会う必要があります。個人的には、これまでのどのアプローチより優先すべき行動だと感じます。(7.7 アクセシビリティを必要とする人に会う)