あらすじ
iPadやキンドルの登場により日本でも電子書籍の時代が始まると騒がれている。しかし、このブームは定着するのだろうか? 紙のメディアは生き残れるのか? 不透明な先行きに冷静かつ確かな展望をもつためのポイントを、グーグル、アップル、アマゾンらの動向と、日本の出版社・新聞社の試みとを丹念に取材・分析する。
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Posted by ブクログ
電子書籍関連の本を年末から何冊か読みましたが、一番秀逸だったと思います。
1章電子書籍の問題はどこにあるのか
2章グーグルは電子書籍を変えるか
3章「ネットは無料」の潮目がかわろうとしている
あとがき
という構成ですが、3章とあとがきは非常によかった。自分の思っていたことをきれいに整理して書いてくれていると思いました。
電子書籍が本格的に拡大するためには
①読みやすい端末
②魅力的なソフト(電子書籍)
③多様な電子書籍が流通する仕組み
④読者が多用な電子書籍と出会える仕組み(導線)
⑤使いやすい課金プラットフォーム
この5つに対してどこかにうまく食い込むことが大事・・・・
Posted by ブクログ
電子書籍に1990年代から携わってきた著者が、電子書籍について述べたもの。電子書籍端末をめぐる日本の進展について(1章)、世界中の既刊本と電子化しようとしているグーグルのプロジェクトについて(2章)、新聞の課金の試みについて(3章)、書かれている。電子書籍の専門家だけあって、経験豊かで内容は詳しい。まとめ方もよく理解しやすかった。印象的な記述を記す。
「英語は「普遍語」で、ほかの言葉はあくまでもローカルな「国語」である。ローカルな言葉を理解できる人は限られている。いくらネットではさまざまな言葉で情報発信されているといっても、広く情報を入手し、コミュニケーションを交わせるのは「普遍語」である英語によってだ。英語の文献を探せば日本語とは比べものにならない量がある。そういう意味で日本語はローカルで、知的作業のためには不十分」
「ブック検索では、高い教育を受けた全世界の人が出入りする英語の本の情報がもっとも充実する。世界中の教育レベルの高い人が読み、参照し、新たな本が書かれ、英語の本が検索によっていよいよ便利にアクセスできるようになれば、ますます参照され、新たな著作が書かれ、読まれるべきものとしての価値を高めていく」
「電子書籍が本格的に拡大していくためには、次の五つが必要だ。
1 読みやすい端末
2 魅力的なソフト(電子書籍)
3 多様な電子書籍が流通する仕組み
4 読者が多様な電子書籍と出会える仕組み(導線)
5 使いやすい課金プラットフォーム」
Posted by ブクログ
「電子書籍元年」と言われる2010年も年末を迎える時期になりました。話題が少ない日本のネット業界ではバブルと揶揄されるほどのブームになっていますが、騒いでいる割には電子書籍についての実情がそれほどわかっていないことに気が付きます。
本書は新旧メディアに深くかかわってこられた歌田明弘氏が、これまでの国内外の電子書籍をめぐる歴史と2010年における日本国内の問題点を明確にした良書です。
私自身も断片としては知っていた知識もありますが、各々がどのようにつながっているかはまだまだ不勉強であったことが大半でした。電子書籍をテーマに、出版・新聞・Webの今後をどう読み解いていくか、基礎知識として把握しておく必要性を感じました。
Posted by ブクログ
この著者の電子出版とそれにかかわる(電子ペーパーの話など)著作はこれまでも読んできた。今回は、実際に「ブーム」となっている現状をどう理解するか、そしてこれからどういった展開をするか、ということについて、著者の予測が書かれている。
これから先どうなるかという答えを持っている人はまだいないと思う。その意味で、この世界をよく知る人の解説という意味で一読の価値はあると思う。
Posted by ブクログ
電子書籍の沿革から現状までコンパクトによくまとめられている。読むなら早いうち。第2章のグーグル問題は、ややこしい著作権問題をわかりやすく解説している。あとがきにある再販制度と電子書籍の関係は示唆に富む。
Posted by ブクログ
記事売りの可能性の部分は非常に参考になる。
ユーザーメリットで考えれば、記事売りは今後も増えていくと思われるが、
書店側、プラットフォーム側からするとカード決済手数料の
パーセンテージが高くつくので割りにあわない。
ロングテールとして成功するかどうか、気になる部分。
Posted by ブクログ
過去何度も訪れた電子書籍の時代。
過去の課題がきちんと分析、説明され、如何に難しいかがよくわかった。
特に、米国と日本の書籍取次ぎの仕組みの違い、
課金制度の課題から、日本の時代の幕開けは世界に遅れること、
まだもうちょっと先なのかなと危惧してしまいました。
Posted by ブクログ
『電子書籍一般論』1998年以降の日本における電子書籍の歩みを解説。特にどこかの陣営に偏ることなく、日本の読書端末、キンドルの売り方、グーグルの文化からアップルの値付けまで万遍なく抑えた良書。電子書籍に夢を見過ぎるわけでも悲観するわけでもなく、現実の事実の延長から目の前にある次の一歩を探る論述は刺激的ではないが堅実で分かりやすい。まずは業界の現実を知りたいという人はこの本から。
Posted by ブクログ
今後近い将来の動向について考えさせられる。
一過性ブームの単なる再来なのか、本当に大きな変化が来るのか。
可能性は秘めているものの、実際にどうなるのかは誰にも分からないのかも知れない。
Posted by ブクログ
電子書籍について書かれた本。この本の中で一番気になった部分はgoogleのブック検索に関して。日本で刊行された書籍はブック検索の対象にならなかったわけだが、そのことがローカル言語である日本語で書かれた書籍にとって、最終的には不利益になるのではないか、という論旨はこれまで触れなかった視点でおもしろかった。
Posted by ブクログ
電子書籍の歴史というかこれまでの経緯について、海外の流れ、日本の流れがコンパクトにまとめられていると思う。日本において電子書籍が海外(アメリカ?)ほどブームにならないのは、コンテンツがコミックが主で、それをわざわざ高い端末を購入して読むことはないという点は納得。
と考えるとやはり、学術書はかなり電子書籍化のメリットがあるように思う。小部数しか売れないものであれば、無理に紙に印刷して高く売ることも、絶版で入手したいのにできないという危機を招くこともないし。
朝日新聞のWeb新書というのも、興味深い商品だと思う。
紙の本のありように引きずられて電子書籍を論じているという指摘があったが、なるほどそのとおりで、電子ならば何ができるのかのアプローチから考えていくと新しいビジネスモデルを考えつけるかもしれない。
Google Book問題や長尾構想についても触れられている。Googleは黒船だったのか…。撃退してよかったのかどうなのか、10年後くらいにどうなっているのか、観察が必要だろう。