あらすじ
ねっ……お兄様、今夜も……いい?
“人外の仕業”と噂される事件の謎を解くことで、怪異を封じる力を持つ混河葉介。葉介の助手を務めるのは、とある秘密を抱える妹・夕緋。
葉介は、幼馴染に起きた不可解な出来事の真相を求め、“怪異を管理する”混河家の一員として、さまざまな謎を解き明かしてきた。
“捜査六課”の刑事・白羽奏から依頼を受け、葉介と夕緋は、放火と焼死事件が起こった伊地瑠村を訪れる。その村には、“焔狐”にまつわる奇妙な伝承が存在し、今回の事件も“焔狐”によるものではと噂されていた。
葉介たちは、村長の姪・春宮由芽らの協力を得て捜査を進めるのだが、さらなる謎が振りかかりーー。
ワケありの【兄×妹】バディが挑む、新感覚ミステリ!
※「ガ報」付き!
※この作品は底本と同じクオリティのカラーイラスト、モノクロの挿絵イラストが収録されています。
感情タグBEST3
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Posted by ブクログ
ツカサ著『お兄様は、怪物を愛せる探偵ですか?』は、怪異と人間の境界を描く伝奇ミステリーでありながら、どこか人間の“情”を深く見つめる文学的な一作である。
閉ざされた村、血脈に刻まれた怪物の伝承、そして真実を追い求める探偵・葉介と妹・夕緋の関係性──それらが織りなす物語は、単なる推理劇を超えた“存在の探求”として心に残る。
特筆すべきは、ツカサ氏の筆致が放つ緊張感と余韻だ。
人の恐怖や狂気を描きつつも、その根底には「それでも人を信じたい」という静かな慈しみが流れている。
怪異とは何か、人の心とは何か。物語の核心に迫るたび、我々読者もまた「怪物」と「人間」の境界線を見つめ直すことになる。
また、葉介と夕緋という兄妹の関係が実に鮮やかだ。
論理と思考で現実を切り裂く兄と、直感と感情で真実を照らす妹。
ふたりの対話には、家族という最も身近な絆が持つ“救い”と“断絶”の両面が映し出されている。
この人間味が、作品全体に重層的な温度を与えているのだ。
ミステリーとしての完成度も高く、怪異という幻想を借りながらも、事件そのものはあくまで人の心の奥底に根ざしている。
その構成は緻密で、読み進めるごとに伏線が静かに絡み合い、終盤で見事に収束していく。
それはまるで霧の中から真実がゆっくりと浮かび上がるような、静謐なカタルシスだ。
本作は、「怪物」と呼ばれる存在に込められた“異なる者を受け入れる眼差し”を描いた作品でもある。
恐怖と優しさ、理性と狂気、そのすべてが紙一重の距離で共存している。
読後、胸に残るのは不気味さではなく、むしろ“理解しようとする勇気”への敬意だ。
幻想と理性の狭間で人間を見つめ直す珠玉の物語。
Posted by ブクログ
怪異とか超常的な物と推理が混ざった作品はよく見るけど、怪異を誕生させないために謎を解き、妖しい物のない真実を白日の下に晒すってのは初めて見る流れで面白かった。 読み味がオカルト要素のない因習村とかのミステリーに近いのに、怪物はいるし伝奇物の読み味も有って、なんか新感覚というか好きだわこの感じ。 推理物として出てくる情報全てがしっかり繋がって徐々に真実に繋がる感じがあるし、妹との会話や混河家の設定が伝奇物的な妖しさが有って好きだし。特に混河家が最後の展開含めて厨二心擽られて好き。
あと、純粋な人間である主人公が珍しく特別って設定も好き。心の中の中学生が沸き立つ。 キャラ魅力って点ではまだプロローグで序盤って感じがあるけど、あとがきでシリーズ言うてるし、作者も実績がある方らしいので次の巻で期待してる。 由芽ちゃんかわいいね、幸せになってくれ。 あと、最後のタイトル回収好き。怪物のルビになぞってつける意味が読むとしっかり分かる。