【感想・ネタバレ】シンクロニシティ 科学と非科学の間に――画期的な科学の歴史書。のレビュー

あらすじ

Physics Worlds Best of Physics in 2020
イギリスの権威ある物理化学雑誌
『Physics Worlds』誌が毎年選ぶベストセラーブック

フォーブス絶賛!
生物学者 福岡伸一氏推薦!
“エイコーザル”(acausal/因果律に基づかない)サイエンスという軸で、
ギリシア哲学から最新の量子力学まで、
科学の歴史を振り返る抜群に面白いと話題の書がようやく翻訳出版。

アリストテレスの物理学から量子テレポーテーションまで、
何千年もの間、科学者たちが頭を悩ませてきた
『シンクロニシティ(意味のある偶然)』を、
科学、哲学、物理などから究明した1冊。


■目次

・推薦の言葉
・量子論の発展に寄せて 福岡伸一氏(生物学者) 寄稿

●序章 自然界のつながりを描く

●第1章 天空へ挑む ~古代の人々が描いた天界像~
・太陽の信仰
・神殿の谷の夜明け
・宇宙の構成要素
・自然界の隠された光
ほか

●第2章 木星からの光が遅れる!
・富と知
・天文学の復活
・禁断の惑星

●第3章 輝きの源を辿る ~ニュートンとマクスウェルによる補完~
・遠隔操作
・ラプラスの悪魔とスピノザの神
・疾走する波と探求心
ほか

●第4章 障壁と抜け道 ~相対性理論と量子力学による革命~
・光が持つ2つの顔
・相対的な真実
・OPERAの幻
ほか

●第5章 不確定という世界 ~現実主義からの脱却~
・不思議の国のアルベルト
・苦難の道のり
・現実と行列式
ほか

●第6章 対称性の力 ~因果律を超えて~
・対称に次ぐ対称
・保存則が表すもの
・超排他的な住人
ほか

●第7章 シンクロニシティへの道 ~ユングとパウリの対話~
・もつれを繙く
・皮肉屋兼毒舌家
・精神の偽らざる姿
・シンクロニシティの登場
ほか

●第8章 ふぞろいの姿 ~異を映す鏡のなかへ~
・ウー夫人の情熱
・ニュートリノという名のサウスポー
・超絶の力
ほか

●第9章 現実へ挑む ~量子もつれと格闘し、量子跳躍をてなずけ、ワームホールに未来を見る~
・ジョン・ベルによる判定試験
・光子の逆相関やいかに
・コズミック・ベル・テスト
ほか

●終章 宇宙のもつれを繙く
・因果律の限界
・光速の因果律を超えて
・セレンディピティ V.S. 科学
ほか

■著者 ポール・ハルパーン(Paul Halpern)
アメリカ・ペンシルベニア州フィラデルフィアにある科学大学で物理学教授を務める。
ペンシルベニア州フィラデルフィア在住。
著書に『The Quantum Labyrinth(量子世界という迷宮)』
『Einstein’ s Dice and Schrodinger’ s Cat(アインシュタインのサイコロとシュレーディンガーの猫)』など16冊がある。
本書にて「Physics World Best of Physics in 2020」を受賞。

■訳 権田敦司

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Posted by ブクログ

ネタバレ

本書のタイトルが「シンクロニシティ」であり、この言葉が表す「意味ある偶然」の起こる仕組みが、本書に科学的に明かされているということを期待して本書を手に取った。

しかも、第7章は「シンクロニシティへの道」~ユングとパウリの対話~となっている。パウリという人物がどんな人物であるかは、正直本書を読むまで知らなかったが、量子力学の大家であり、その人物とユングとの対話が記されているとなれば、めちゃめちゃ興味をそそる本となるではないか。

しかも本書の推薦寄稿として、福岡伸一氏(生物学者)の「量子論の発展に寄せて」という稿が冒頭に掲載されている。

生物学者が量子論への推薦の辞?と一瞬思うものの、文章が明快で美しく、難しい内容を素人にも理解しやすく説明してくださる福岡氏のこの推薦にも、引き付けられた。

その原稿の冒頭に、2022年のノーベル物理学賞(量子もつれの実験、ベル不等式の破れの確立、量子情報科学の先駆的研究に対するノーベル賞授与)発表のシーンが描かれる。福岡氏でさえ、「(研究の領域が全然異なる)量子論はお手上げだ」と宣言されつつも、本書のガイドブックの位置づけで書いてくださったことがわかる。

福岡氏のガイドをベースに、本書本体をイチから読み進めていった。天文学の発展から、ニュートン力学の誕生、アインシュタインの相対性理論、宇宙物理学、量子力学等、これまでの科学の変遷の歴史を、本書の著者はまた、専門外の一般の読者に、出来るだけ理解できるようにとあの手この手で、わかりやすく解説してくれている(と思う)。

それでもごく一般の文系素人には、知らない単語を放置しながらもブルーバックスを読み進めているような感覚で、なんとなく理解を進め興味の満足を得ようと努力してきた。

ハッキリ言って、「もつれ」とか「スピン」とかの話は、本書で初めて知った内容だ。

アインシュタインが量子力学の世界を受け入れられなかったという話が出てくるが、あの大天才の理解を超える領域で、この世の真実を解明しようとする天才たちがいることを知り、「もつれ」とか「スピン」に関する理論の大御所であるパウリもその一人で、この新しく自分の脳内にはいってきた「もつれ」や「スピン」の概念をある程度理解しつつ、それとユングの深層心理の関係性をある程度感覚的にもつかんで、そうして「意味のある偶然(=シンクロニシティ)」の現象と遭遇するメカニズムの一端でも分かりたいと思ったのが、自身の興味の部分であった。

第6章の「対称性の力」(因果律を超えて)で、もつれやスピンの話が登場するが、この因果律を超えるメカニズム、相対性理論の因果律の世界とは別の世界の説明はとても興味深く、ミクロの世界では「そんなことがあるんだ~」「きっと偶然が起こるのは偶然でなくて、必然なのかもしれないな~」などと想像が膨らんできた。

しかしながら、第7章のパウリとユングの対話の部分は、「肩透かし」以外の言葉が見当たらない。いや、自分が理解できなかっただけなのかもしれない。

パウリとユングといういわば両極の天才が通じ合う、何物かがきっと存在し、そのメカニズムのようなものもあるんじゃないかと思うが、ここにそれが解明されているとは思えない。従って、自分としては、欲求不満状態で、本書の最後のページをめくり終えた感じである。

現実の世界で、予期せぬ偶然に遭遇することはよくある。それには意味があるんじゃないかと考える。正夢というのもよくある話だ。しかもユングは、夢から心理療法を施していく理論の大家だ。

意識、あるいは深層心理の世界には光速を超える何らかの情報伝達のしくみがあるのか?精神の世界では、スピンに似たような法則が成り立つのか?そんなことを期待していたのだが・・・・。

でも、それを期待しなければ、本書は科学の古代から現代までの歴史を知るガイドブックとして、とても面白い本であるかと思う。

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2024年10月03日

Posted by ブクログ

現在の量子力学に繋がる科学史の流れを一気に総覧できる。図がないので、読み手は想像力を要求され難解だと思われるが内容は面白い(天文学や、原子核の部分は図解が欲しい。。。)理系出身者は高校物理や大学の授業を所々思い出して楽しめるのでは?有名な話なんだろうが、心理学者のユングと物理学者のパウリが親交がありお互いに影響を与え合っていた部分が面白かった。この2人の共著のタイトルが「シンクロニシティ=意味のある偶然の一致」である。

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2023年07月03日

Posted by ブクログ

とりあえず量子力学的スピンについてはなんとなくイメージできるようになる。興味の持てない科学者のエピソードはほぼ飛ばしてもあまり影響ない。正直、シンクロニシティって、タイトルにするべきものだった?と疑問。

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2023年08月04日

Posted by ブクログ

科学史に多くの説明がさかれている。その観点では類稀な縦と横のつながりが理解できる。哲学、天文学、物理、化学等の連関性が面白いこの部分では大著、シンクロニシティについては続編を待ちたい。

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2023年07月21日

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