あらすじ
四国にある八十八の霊場を巡礼するお遍路。本書は、そのひとつ第五十七番札所・栄福寺の住職が、六十八日をかけてじっくりと歩いた記録である。四万十川や石鎚山など美しくも厳しい大自然、深奥幽玄なる寺院、弘法大師の見た風景、巡礼者を温かく迎える人々……。それらは人生観を大きく揺さぶる経験として、多くの人々を魅了する。装備やルートまで、お坊さんが身をもって案内する、日本が誇る文化遺産「四国遍路」の世界。
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Posted by ブクログ
四国の八十八の霊場を巡礼するいわゆるお遍路。
その一つである第五十七番礼所栄福寺の住職が
「歩き」で遍路を行った記録です。
お坊さんによる視点で綴られていますので、単
なる道中の記録だけでなく、所々に弘法大師空
海の言葉が引用されて、解説とともに全体に深
みを与えています。
巡礼の道は世界中にあれど、遍路のように円環
をぐるぐると廻る「回遊型巡礼路」は珍しいと
言われているそうです。
世界でも稀な「お遍路」は、誰もが経験したく
なる魅力を持っていると感じる一冊です。
Posted by ブクログ
数々のお遍路体験記が出版されているが、札所の現住職が実際に歩き遍路をした本は少ないと思う。
これまでに何冊も本を出版されている住職なので、期待通り本書は非常に親しみやすい内容で読み手を選ばない。
随所に空海の文言を引用し、現代語訳、著者の解説が散りばめられているが、難解なものではない。
一度でも歩き遍路をしたことがある人ならば、本書を読むことで追体験ができるだろう。
各札所の縁起、概要を簡潔にまとめてくれていたのは、読みやすく有り難かった。札所の解説はこちらが求める以上に長文となりやすいので…
また、各宿泊施設での印象、料金を明記してくれていたのが、これまでの遍路体験本には無い面白い着眼点だと感じた。
欲を言えば、通しで歩き遍路をして頂きたかったと思う。
連日の長距離移動で疲労困憊の中、逃げずに歩き続ける苦行を乗り越えた先に、著者がどんな境地に到達するのか、出来ればそこを知りたかった。
ただ本書を拝読するに、著者も本心では通しを望んでおられたのではないかと推察する。
最後になったが、区切り打ちとはいえ、多忙を極める四国霊場の住職という身でありながら、歩き遍路を全うされたのは本当に素晴らしいことだと思う。
お疲れ様でした。
Posted by ブクログ
著者の本は10年ほど前に『ボクは坊さん』を読んでいる。
その本は、あまりに軽い内容に、刺さらなかった印象がある。その著者と気づいていれば読んでなかったかも。近所の旅の書店の店主のススメで(「愛媛に行くにあたって、四国巡礼に関するおススメは何か?」と訊いた)、読んでみたもの。
前著は2010年頃の本。それから十数年を経て、著者も成長したか。本書は、比較的、ひっかかることなくすんなり読めた。ま、紀行文は、誰が書いてもそれなりに面白いもの。
前著同様、弘法大師の言葉を時に引用し、現生での行い、心情に照らし、教えを理解し、感じていこうというもの。今を生きることの苦しみや焦りといったものが、歩くという単調な行為のみならず、大師の教えとともに昇華されている感がある。
一般のお遍路ガイドブックのほうが、おそらく最短距離で目的には達するだろうが ― モデルコース、名刹の縁起、旅館情報 etc.の情報のこと ― 今回の読書の目的は、遍路に出かけるための準備ではなかったので、本書くらい、ゆるっと体感的に語られたものが、マッチした。
2019年4月から、2020年12月までの期間、8回に分けて行脚した記録。折しも、コロナ禍が世界的に蔓延していく時期に重なってはいるが、そのことに関して、仏教的な視点での考察が少なかったのは(ないわけではない)、残念な気がする、というか惜しい。
まぁ、お手軽さが著者の持ち味か。