【感想・ネタバレ】2050年のジャーナリストのレビュー

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Posted by ブクログ

下山さんの本は、『2050年のメディア』に続く2冊目(エコノミストの2050年シリーズも含めれば4冊目かもしれないが)、相変わらず2050年のジャーナリストとはどんな人?に対する直接的な回答はなく、読者の想像に委ねる形式になっている。
とはいえ最後に「答えはネットの中にない。本の中にある」という言葉を引用しながら、組織潰れても個人で生き残るジャーナリストこそ2050年にジャーナリストと名乗れる、つまり生き残ることができている人なのだろうとは想像できる。代表的なオールドメディアである新聞は、このままはっっこう部数の縮減が進めば2030年までに消滅またはイデオロギーの差など意味がなくなるくらい経営統合が進むであろう。
下山さんは本書でも述べているようにかねてより、新聞は有料デジタル版をどうしたらとってもらえるかそのことに全経営資源を集中すべきであると主張してきた。しかしそれを実際に実行している新聞社はない(日経はその方向に舵を切っているようには見える)。それどころかオリンピックのスポンサーになり、あろうことか自治体と包括連携協定を結ぶような新聞社まで出てきてしまった。
今日の様々な選択肢がある読者は、そんな体制翼賛的な新聞など読むわけはなく、新聞の発行部数が年々減少しているのは必然の帰結のように感じる。産経新聞はここ2年くらい10%を超えるような発行部数の落ち込みであるが、政府の公式見解を知りたければ、政府関係のHPを見ればいいのであって、誰も政府プロパガンダメディアにお金を払うわけがない。
今そんな新聞社に見切りをつけた元ベテラン記者らがwebメディアを立ち上げ始めている。その機運を自分は応援したいし、そうした人々がどんどん出てきてほしいと思う。自分も今後、部分的にジャーナリズムに関わっていくことになるので、自分の中でジャーナリズムとは何か、ジャーナリストとはどんな人間かを常に考え、アップデートしていくように心がけたいと思う。

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2022年10月23日

Posted by ブクログ

筆者は、文藝春秋で長くノンフィクションを担当した元編集者。
「サンデー毎日」で2020年3月3日発売号から続ける連載をまとめたのが本書です。
同じ著者による「2050年のメディア」(文藝春秋)が、メディアの未来を予測する良書だったので、続編とも呼べる本書を買いました。
ただ、前著がメディア全体を俎上に載せたのに対して、本書はタイトル通り、個々の「ジャーナリスト」ないしは個別のメディアに焦点を当てています。
事例を通して、未来のメディアを考える際のヒントを得るという趣旨(だと思います)。
その分、前著と比べ散漫な印象があり、タイトルにそぐわないのではという回もありましたが、読みごたえはありました。
特に、北朝鮮の弾道ミサイルを迎撃する「イージス・アショア」の問題を独自の視点で執拗に報じ、新聞協会賞を受賞した秋田魁新報、ポッドキャストを活用するなどして有料電子版が好調な英エコノミスト誌、社内外の記者を新媒体で競わせる新潟日報の回などが面白かったです。
さて旧来型のメディア、とりわけ新聞は、インターネットメディアに押され衰退著しいのはご承知の通り。
それで徐々に有料電子版に軸足を移しているわけですしかし、成功しているのは日経など数えるほどです。
なぜでしょうか。
本書では、「前うち」報道主義から脱却できていないからだ、と手厳しい。
「前うち」報道というのは、他社より一歩でも先んじて速報することです。
しかし、朝刊で抜いても、他社にすぐに追いつかれ、コモディティ化してしまいます。
つまり、ヤフーニュースやラインニュースで無料のニュースは十分と人々は感じてしまうのです。
「人々がお金を払うのは、その媒体でなければ読めない、独自の切り口をもった記事だ。」
本当にその通りだと思います。
メディア関係の方にはお勧めの本です。

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2021年12月13日

Posted by ブクログ

「2050年のメディア」を通史だとしたら、そこからこぼれ落ちた人や話を列伝として書いているのがサンデー毎日に連載中の「2050年のジャーナリズム」なのだそうです。著者は司馬遼太郎の「燃えよ剣」に対しての「新選組血風録」になぞらえています。ひとつひとつが違うエピソードですが、すべてにおいてかつての「前うち」報道の限界と「編集者」としての可能性を信じる、という点では一貫しています。そういう意味では先に読んだ光文社新書で石戸諭「ニュースの未来」と完全にシンクロしています。さらにさかのぼると2013年佐々木紀彦「5年後、メディアは稼げるか」から繋がる議論だと思います。新聞というメディアに見識、いや愛情のある人々がだいたい近しい提言をし続けているのにそれが遅々としているのが「2021年のメディア」であり、そこで痛みまくっているのが「2021年のジャーナリズム」なのかもしれません。今年はオリパラの開催不開催で新聞社の社説が明確に割れた年でありますが、それが若い世代にとってまったくインパクトになっていないことも明確になった年であるように思います。新聞は本当にギリギリのところに来ているのかもしれません。この「ジャーナリスト列伝」は、著者が熱く自著を語ったり、地方新聞社のイノベーションレポートに冷ややかな論評をしたり、生々しい感情に溢れています。それだからか、「2050年のメディア」に対して、ふわっとした読後感になっています。

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2021年11月10日

Posted by ブクログ

p46 web上でつながったアマチュアの集団 DRASTIC 新型コロナウイルス感染症に関する分散型の匿名調査チームが重大な証拠を掘り当てている 武漢ウイルス研究所でコウモリのウイルス研究をしていた石正麗が、新型コロナウイルスと遺伝子配列が極めてニているコウモリのウイルス RaTG13について、数年前に発表した論文で、遺伝子配列を公開していたのだ。DRASTICはRaTG13は雲南省の墨江ハニ族自治県にある鉱山の坑道で発見されたウイルスだとしたlここでは2012年にコウモリのふんを除去していた鉱山労働者6人が肺炎を発症し、うち3人が死亡していた。武漢研究所は、この鉱山にすくなくとも7回いって、おびただしい数のサンプルを当時入手している

ニューズウィークは2021/6/22号で報告しているが、日本のメディアは触れていない

p71 ジリアンテット もともと文化人類学者

p117 スイス 地上波停波 インターネットに移行

p125 FASTALEAT JX通信社 SNSをAIで分析

p129 政治家は、梶山の言うような貧困を知った世代から、小沢一郎のような日本の成長期に育った世代、そしてさらにその下のふわふわと実態の伴わない言葉遊びをしている世代へと変わってきている。新潟選出の代議士に、かつての田中角栄や小沢辰男、桜井新のような個性のある政治家はいない

P152 中川ヒロミ

p179 財政赤字の神話
米国債も、債権(=借金)という言葉を使うから人々は勘違いする。これは借金でない。現金と違う貨幣を政府が発行しているのだ。

収支をあわせていかなくてはならないのは、地方自治体や、通貨主権をもたない国の場合。ユーロという通貨の下にあるヨーロッパの国々は通貨主権をもたない。だからリーマンショックのあと、ギリシャを筆頭とする欧州の国々は2010年に債務危機に陥った ギリシャ国債を発行して、ギリシャはこの危機を乗りきろうとしたが、国債は金利が暴騰し、価格が暴落した。これはギリシャがドラクマを発行している通貨主権国家だったらば怒らなかったことだった
金本位制で、アメリカ政府は1ドル35分の一オンスの金と交換すると宣言していた。この時代は、財政収支を合わせる必要があった。米国政府は兌換のための金を準備しているが、この金がなくなってしまえば、国家が破綻するからだ。その継ががりを絶ったのが、1971年のニクソンショックで、以降米国政府は好きなだけ貨幣を刷ることができるようになったのである。日本も同じだ

p215 金融やマスコミの給与がよかったのは、優秀な人たちが行っていたからではない。規制に守られていたからだ

p147 週刊誌のエコノミスト 唯一部数を伸ばしている。
これは同誌がニュースを報道する雑誌ではなく、世の中に起こっている事柄を分析し、その意味を解釈し、そして将来を予測する雑誌だから

p307 萩尾望都 一度きりの大泉の話
竹宮恵子 少年の名はジルベール

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2021年11月08日

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