あらすじ
「この本を読んで、北朝鮮観光に出かけたくなった。知的好奇心をかきたてる良書」佐藤優氏(作家/元外務省主任分析官)大推薦!
「北朝鮮の代表的な観光地」「旅行社が提案する『平壌のインスタ映えスポット』」をはじめ、「北朝鮮観光でやってはいけないこと」「観光ビザの詳細」「現地の食事」「温泉とカジノ」など、北朝鮮観光のすべてを解説。現地のリアルな旅行写真も多数収録。「旅行マニア」「北朝鮮マニア・チョソンクラスタ」でなくとも、広くビジネスパーソンの知的好奇心を満たす一冊となることうけあいである。テレビ出演も多数の気鋭の北朝鮮研究者として、「金正恩政権の経済重視路線」「米朝首脳会談の意味」「拉致問題解決のために日本がやるべきこと」まで、最新の半島情勢に関する基礎知識も収録。令和の基本教養として、不安定な国際情勢を読み解く一冊としても、新定番の書となる。ヴェールに覆われた秘密国家を読み解く貴重な一冊が待望の刊行!
※こちらの作品は過去に他出版社より配信していた内容と同様となります。重複購入にはお気を付けください
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
【北朝鮮の観光政策は、同国政治外交の直接的影響を受けざるを得なかった。大きく捉えれば、政治外交政策の一環であったということもできよう】(文中より引用)
北朝鮮が宣伝と外貨獲得のために力を入れてきた観光。閉鎖的な北朝鮮の観光政策の変遷を追いながら、どのように旅行客を誘致し、そして訪れた者たちがどのような記録を残していったかを丹念に記した一冊です。著者は、慶應大学准教授の礒﨑敦仁。
一風変わった角度から北朝鮮に切り込んでいった良書。観光面から理解できることの限界を適切に見極めつつ、政治情勢等に観光政策が翻弄されている様子がよくわかりました。
北朝鮮にも「旅の黄金コース」のようなものがあるようです☆5つ
Posted by ブクログ
北朝鮮観光について知りたくて読書。
本書は、単なる観光本ではない。著者は北朝鮮政治を専門とする研究で、そんな研究者が北朝鮮観光の歴史、現状を語り尽くしている。研究者の著書らしく統計、年表などの資料が豊富で、何よりも参考文献、サイトも各章ごとに紹介されており、後から情報を探す資料としての価値も高い。
自身の訪朝体験に加えて、訪朝者、旅行代理店への取材に基づいているので説得力がある。
北京のコリョ・ツアーズが手配している日本人の人数や、羅先国際旅行社の担当言語別のガイド人数なんてよく聞き出せたなと思う。
観光地や手配する旅行代理店、北朝鮮での注意点などについての説明も多いので、これから北朝鮮旅行を考えている人には参考になる情報だと思う。
それにしても、1992年は北朝鮮へ日本人が4287人も訪朝していたのは、現状から考えると驚愕の一言。
読書時間:約1時間10分
Posted by ブクログ
【276冊目】北朝鮮研究で有名な磯崎先生が、観光にも造詣が深いとは思わなかった。北朝鮮観光については、紀行文も含めて意外と多くの日本語出版物があり、また、中国人研究者による研究もあるとのこと。本書は、日本語で書かれたそれらのメタ研究という趣。
具体の個人名、資料名、会社名、北朝鮮政府の組織名等が書かれているため、研究用資料としても使えそう。あとがきにも書いてあったが、本書は科研費の成果でもあるらしい。
本文中何度も繰り返されている点は、次のとおりか。
①観光を北朝鮮が奨励する目的は体制宣伝と外貨獲得の2つであるが、比重は前者に置かれている
②日本人の紀行文がどれも似たり寄ったりになってしまうのは、外国人に開放されている土地・スポットが限定されていること、旅程中必ず2名以上の案内員が客に付いて自由行動をしないように監視しているから
③北朝鮮観光は時々の国際情勢や政治情勢に左右されてしまうボラティリティの高いものとなっており、それゆえ、旅行会社にとってはある程度のリスクを覚悟しなければならない商品となっている
④1970年代までは北朝鮮は地上の楽園と呼ばれた国であり、日本人の紀行文も概して彼の国に好意的な内容であった。
Posted by ブクログ
金正恩体制、核・ミサイル実験、日本人拉致問題等、時折、ニュースになりながら、いま一つ実態がよくわからない北朝鮮。
その北朝鮮に観光で訪れることができるのだという。そういえばスキーリゾートの映像を見たことがあるが、あれは政権上層部が楽しむものではなかったということか。確かに観光なら外貨も入る。客が滞在を楽しむことができれば、体制の宣伝にもなるだろう。
本書の主題は、北朝鮮の観光である。
但し、観光体験記とか、物見遊山でどこへ行って楽しかったおもしろかった、という類のものではない。
外部からは限られた情報しか入手できない北朝鮮について、観光に関する情報から北朝鮮情勢について考察するのが目的である。
著者は、30年近く、ツアーのパンフレットや関連文献、インターネット上の情報などを収集してきている。
それらを元に、北朝鮮観光の特徴、観光戦略、日本人観光客の受け入れの変遷、韓国人観光客の受け入れ例、各国で発行されたガイドブックや旅行記から見る北朝鮮観光について考察していく。
著者は実際に何度か北朝鮮を訪れてもいるが、限られた範囲しか見ることができず、その実態に迫るのは非常に困難である。観光は多様な資料を入手しやすい数少ない分野の1つであるという。
序章では、北朝鮮を理解するための基礎知識に触れている。
ここで興味深いのは、そのイメージが世界共通ではないという指摘である。日本の報道だけ見ていると気づきにくいが、北朝鮮の核実験やミサイル実験に対して、日本が抱く反発と同程度の反応が全世界に共有されるかと言えばそうではない。物理的な距離も違えば、歴史的な背景も様々である。
北朝鮮を理解するうえで、広い視野が必要という指摘には説得力がある。
日本から北朝鮮を訪れる観光客は、1990年代には3千人を超えることもあった。だが、現在では、日本側から渡航自粛勧告が出ていることなどもあり、2018年の1年間では400人未満であったという。
中国や韓国を経由するのが一般的なルートとなる。個人旅行の形ではなく、ツアー形式で、3食付き、添乗員が同行する。ツアーで決められたレストラン以外のところで食事をすることも可能だが、この際も運転手や案内人の同行が必要となる。その他、最高指導者には職名を付けることや指導者の肖像の撮影の際には一部で切れないようにすること、また建築現場や軍人・警官の撮影は不可、人物撮影には事前に承諾が必要であるなど、細かい注意も多い。
ツアーの窓口となるのは、中国や韓国の旅行会社でも、最終的に国内の観光を取り仕切るのは、北朝鮮国営会社の朝鮮国際旅行社となる。
平壌観光の主体はやはり最高指導者関連の施設が多いが、風光明媚な名勝地やショッピングを楽しむことも可能である。
名物の冷麺やアヒル料理、アイスクリームなどが食べられるツアー、スキーやゴルフなどのスポーツを楽しむことをメインとしたツアーなど、多彩なツアーが出てきている。
近年では、いわゆる「インスタ映え」するような行先が選ばれていたり、観光ウェブサイトの充実も進みつつあったりする。但し、北朝鮮国内でのネット環境自体はあまり整ってはいないようだ。
現在の関係性からも、日本から北朝鮮への観光客が近いうちに大幅に増えることはないだろうが、実際に現地へ行くことでしか伝わらない「空気」というのは確かにあるのだろう。さて、行ってみたいかと聞かれると即答はできないが、興味深いものはある。
謎のベールに包まれた国を垣間見る、おもしろい視点の1冊である。