【感想・ネタバレ】虚構推理短編集 岩永琴子の密室のレビュー

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Posted by ブクログ

全五編の短編集なのに、ちょっと胃もたれするくらいの濃さを感じる一冊だった。普通のミステリなら真相は一つだけなので謎解きも一回で終わるけれど、『虚構推理』は虚構の解決であるため、もしかしたらそうかもしれない…という真相が幾つも提示されるので、ぐわんぐわん揺らされてるみたいに驚かされるせいだと思う。『かくてあらかじめ失われ……』と『飛島家の殺人』が特にそうで、ひどい酔いが回ったような読後感だった。でも、だからこそ面白いし、そこが好きで何度も読み返してしまう。

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2023年02月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

【みだりに扉を開けるなかれ】
 妖怪や幽霊が存在している事が前提であるなら、妖怪や幽霊によって密室殺人の密室が破られる事もあるという、ミステリーなら非難轟々だろう話でした。妖怪や幽霊の存在をその様な役割に当てはめる発想が無かったので、とても面白く感じました。あと、「妖怪密室ひらき」が生まれうるというちょっとズレた心配をする岩永琴子は相変わらずなのだと感じました。

【かくてあらかじめ失われ……】
 妖怪や幽霊が密室を開ける、という事件が実際に起こり、岩永琴子が解決に奔走した話。密室にまつわる犯行と、岩永琴子の紡いだ虚構も中々に面白いものでしたが、それ以上に複雑な人間関係が明らかになったのが面白かったです。推理小説みたいな人間関係と言いたくなるのも宜なるかなといった感じでした。

【飛島家の殺人】
 事件自体に妖怪や幽霊の関わりは無いものの、この作品らしく岩永琴子が虚構を紡ぐ話でした。五十年の歳月が経っており、既に証拠など残っていない事件に対し、岩永琴子があげた二つの仮説。真相がどうあれ、当人達にとってはどちらを取るか(もしくはどちらも話してしまうか)迷う仮説を紡いだのは流石としか言い様がありません。そして、どこか人間離れした不気味さを感じさせ、岩永琴子らしいと思いました。

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2023年10月06日

Posted by ブクログ

いくら特殊設定と言ってもそんなのが流行っってたらミステリは成立せんだろと思いきやなんと成立どころか久し振りに会心の虚構推理\(^o^)/

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2023年03月20日

Posted by ブクログ

ミステリの王道トリックとも言える密室トリック
一見すると不可能犯罪だから殺人事件に挑む探偵役の活躍が面白くなる。つまり逆説的に言えば密室は探偵に開かれる為に存在している
なら、その密室が探偵ではなく第三者によって開くなら?という点を追求するエピソードだったのかな

…というか、化け物達の間で密室を開く遊びがブームになるとか流石にそれは駄目でしょ(笑)


短編を前座にして始まるのは特異な密室事件の後始末が描かれる『かくてあらかじめ失われ……』
折角の密室トリックや二重三重の安全措置も化け物が暴いてしまったせいで、犯人はあっさりお縄に就いた事件。問題点となるのは風変わりな部分だね

犯人が偽造した被害者の遺書。自白によりそれが偽書と関係者に知れている。なのに第三者が持ち去っているからその目的と存在が謎と扱われる
まあ、事情を知る琴子にすれば、化け物の仕業という真実を明かすわけには行かないから、またしても虚構で誤魔化す手間が生じた案件と言えるのだけど

ただ、琴子にとって幸いと言えるのは、裏で広がる「妖怪密室ひらき」が厄介なだけで、事件そのものは社会的な影響をすぐには持たない点
だから関係者の中心人物を納得させるだけで済む。つまりは相手を煙に巻けば良いわけだ

そうして読者の意識は偽造遺書の処理に集中させられていたから、もう一つの密室に気付かなかった。それは心の密室だね
美矢乃が抱え続け、誰にも開いた事のない疑念。しかし開かれていない為に将来的に悪影響を生むかもしれない心
一度、事件の虚構を示した後に関係人物の真実を示し始めるものだから度肝を抜かれたよ…

まあ、その真実も更に隠された真実があったのだけどね。後から見ると、諸悪の元凶というか騒動の中心人物がやたらめったら厄介な人物だったな……


そしてもう一つの密室と言える『飛島家の殺人』は何種類もの密室が折り重なって構成されたあれはあれで美しい構成の話だったな…

事件そのものは現場へ近づく唯一の道は目撃者が存在した為に現場へは誰も辿り着けなかった。それ故に密室というタイプのもの
けれど、事件発生が50年前という真相解明が非常に難しい程の昔であること、そもそも事件現場がもう存在していないこと、関係者の多くが没している等々の困難を含んでいる
なら決定的な真実を明かす希望なんてそもそも無くて、いつものように虚構にてそれっぽい辻褄合わせを取り繕うだけに終止するかと思いきや、いやはや意外な展開を迎えたエピソードだったよ……

依頼人である椿や頼行が求めるのは龍子が50年間着け続けるベールを外してやる事、事件の気掛かりを自明の理としてやる事
そういった依頼であれば、これまで事件の虚構を如何様にも操ってきた琴子に出来ない仕儀ではなくて
だから本題となるのはそもそも真相が椿や頼行の願い通りのものであるのかという問い

ここで事件が50年前の出来事という点が効いてくるね
虚構なら幾らでも形作れる。でもその虚構がもし真実そのものであったら?そもそも真実が開かない方が良い密室であったら?
一応の解決は示されたのに真相も虚構も曖昧になるラスト。琴子は真実を知った上で関係者を煙に巻く発言をしているのではないか?龍子に聞けば真相を全て詳らかにしてくれるのではないか?

結局問題となってくるのは密室を誰がどのように開くかという一点
椿と頼行は琴子の助力によって密室へ至る道筋は手にした。探偵は開いてくれなかった密室を開いてしまうかそれとも閉じたままにしておくのか。
希望どころか後書きすら与えてくれない本作の締めは事件関係者だけでなく、読者にすら問いかけてくるかのようだ……

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2023年02月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 虚構推理シリーズの最新刊が届けられた。近所の書店では、やっぱりラノベの棚に置かれていた。漫画原作のための書下ろしだそうだが、過去作品もそうだっけ? 漫画やアニメの方が原作より人気が高そうではある。

 サブタイトルにある通り、今回は密室がテーマ。今なお定番中の定番ジャンルだが、虚構推理の世界観でどのように料理するのか。興味津々に読み始める。

 短い「みだりに扉を開けるなかれ」。妻を殺害し、密室工作をした夫。しかし、発見時、密室工作は何者かに台無しにされていた…。うーむ、夫に同情できるようなできないような。この掌編には全編のプロローグ的意味合いもある。

 「鉄板前の眠り姫」。古いお好み焼き店の熱々の鉄板前で、眠っているのは…。この人たちの行く先行く先、どうしてそういう展開ばかりなのか。もはや軽いブラックジョーク程度にしか感じない自分も、毒されているのかもしれない。

 「かくてあらかじめ失われ……」。幼なじみの一家同士の、複雑な関係。いくらでもドロドロにできそうな設定を軽く読ませるのは、このシリーズならでは。漫画版やアニメ版では、琴子がこういうネタでも容赦なく論破する姿に萌えるのだろうか。

 短い「怪談・血まみれパイロン」。なぜ怪談にパイロン? 最後の下ネタにすべて持っていかれた感がある。このためのパイロンかよっ!

 メインと思われる最後の「飛島家の殺人」。一代で地位と財を築いた飛島家の女傑・飛島龍子。現在は静かに暮らす龍子の過去とは。このシリーズ、問題を抱えた一家はお約束とも言えるが、どうして琴子に依頼してしまうのか。成功者の思考回路は、凡人には理解不能とだけ書いておきましょう。もちろん琴子の思考回路も。

 十分に長編にアレンジできそうなネタ3本と、短い小ネタ2本という配置は、『虚構推理短編集 岩永琴子の純真』と同じ。ガチの密室ネタを期待して読むファンはいないと思うが、九郎と六花の出番の少なさには不満を抱くかもしれない。

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2023年02月24日

Posted by ブクログ

【収録作品】みだりに扉を開けるなかれ/鉄板前の眠り姫/かくてあらかじめ失われ……/怪談・血まみれパイロン/飛島家の殺人

いやいや、行動的なあやかしたちだな~ 密室のくだりは脱力して笑える。

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2023年06月26日

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