あらすじ
「労役」とはスピード違反や交通事故の罰金を払わない者を、刑務所などに留置し、罰金額に応じた労働を課す制度のこと。
元新聞記者の筆者は、埼玉県警に飲酒運転の罪で検挙され、25万の罰金を言い渡される。「25万払うくらいなら、労役で刑務所に入って、その実態を余すところなく観察してやろう」――そう考えた彼は、罰金を徹底的に踏み倒すことを決めた。
そして、晴れて(?)川越少年刑務所に留置された筆者を待っていたのは、お気楽ながらも辛い50日間だった……。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
知られざる刑務所の生活…。刑務所のなかでの人間関係、また社会更生のための仕事の時給など面白情報!!
生協学生委員会co-opGirlsお勧めの書籍です。
Posted by ブクログ
飲酒運転の罰金が払えずに、労務で刑務所に入った著者によるルポルタージュ。
そもそもが「やむを得ず」ではなく、好奇心なのか仕事に結びつくと考えたからなのか、
好きで(は言い過ぎだが……)入っているため(しかもたった50日)、
ところどころに出てくる「シャバが懐かしい」とか「メシが不味い」などの感想も
あまり説得力を持たない気がする。
しかし、それを除けば素直でていねいな筆致で、ムショの中の様子もわかりやすいし
人間模様も透けて見えてくるため、まあ面白く読める。
……と、考えていたが、最後まで読んで感想が変わった。
著者はジャーナリストとして仕事に困り
(たとえ優秀な人でも、いまフリージャーナリストは本当に仕事がない)、
テレアポの仕事で糊口をしのぎ、借金を少しずつ増やしてきた。行き詰っている感じを受ける。
だから、メシの種になりそうなことは何でもするし、ジャーナリストとして再生したいと
あがいているのかもしれない。
そのあたりの状況も克明に書かれているため、なんというかメタ的な側面も持った
不思議なルポになっているのだ。
結果、著者の人生との格闘の記録は、無事本として出版された。
自らの体験が、ちゃんと身を結んだわけで、実現にこぎつけた行動力や縁は本当にすごいと思う。
著者の今後の活躍を祈りたい。
Posted by ブクログ
罰金が払えない場合に採られる労役という制度は、ほとんどの人には縁がない。刑務所に入って拘禁されるくらいなら、何としても罰金を払おうとするだろうから、罰金刑よりも労役の方が珍しいだろう。
本書は、敢えて労役を選択した元記者の実体験ルポである。
確かに、労役は珍しく、懲役とはやや異なる処遇やシステムになっているようだが、刑務所内での拘束という点では、懲役とそれほどは違わないようだ。その意味では、本書でも掲げられている幾つかの先行本があるし、比較的最近では、山本譲司の「獄窓記」など本人の内面にまで踏み込んだ迫力ある刑務所体験記がある。また、刑務所ではないが、佐藤優の「国家の罠」や田中森一の「反転」などは、拘置中の生活や心理状態のほか、検察官による取り調べの方法まで含んでいて、より面白い。
そういう体験記と比較すると、書物としての迫力というか、中身の濃さが不足するようにも感じられるが、それでもなお、多くの人が経験することのない貴重な体験記の一つとは言えるだろう。わざとだと思うが、タッチも軽めで、読みやすいと言うと語弊があるかもしれないが。
労役を終えたものの、働き口がなく、生活保護に頼らざるを得なくなった著者が再び執筆の世界で活躍できるようになることを祈りたい。