あらすじ
冷戦終結後も核抑止の論理にこだわり続けるのはなぜか.核兵器はどのように「運用」され,どんな課題を抱えているのかーー.長く秘密のベールに包まれてきた核戦力の最前線を訪ね,歴代政府高官や軍関係者など多数のキーマンへの単独インタビューを交えて,「核兵器の近代化」を進める世界最強の核超大国の今を報告する.
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Posted by ブクログ
アメリカの核兵器の「今」を、人・街レベルの現場である「下流」から、政策決定を行う「上流」まで丹念に取材しつつ、新書ならではのコンパクトさでまとめた一冊。
冷戦期からの製造でどんどん古くなっており、人が扱う以上は誤りが起こる懸念(いや、ヒヤリハット案件は日本付近も含めて起こってきた)も内包し続けている核兵器。
一方で、核軍縮の国際交渉は遅々として進まず、「核なき世界」をうたったオバマ政権すら、「数は減らしながら質を更新する」という手法をとった上で、軍縮の理念の本質に踏み込むことはなかった。その背景には、核兵器をめぐる政治経済的利権(軍に依存する地域経済も含む)、そして「同盟国」の懸念も横たわる。
同盟国には日本も含むのであり、核被爆国でありながら核を否定する行動を取らずに来た日本の政治のあり方が、アメリカの政策決定に(微小だったとしても)影響している構造が本書から見てとれた。
そして、中国を意識して軍縮交渉に身が入らずにきたアメリカのこの数年の動きが、ウクライナをめぐり核の脅しをかけるロシアという最悪な現状とも連動しているように思う。