【感想・ネタバレ】病気と治療の文化人類学のレビュー

あらすじ

どれほど科学技術が発達しようと治らない病気はある。だからこそ人間は病気に強い関心を抱き、さまざまな意味づけを行ってきた。民俗医療や治療儀礼、宗教・民間信仰・シャーマニズムは、どのように病気とかかわってきたのか。本書では「病マケ」と呼ばれる家筋への差別構造、奄美のユタによる治療実態、明治期のコレラが引き起こした社会的混乱など、豊富で多様な民族誌的事例も踏まえつつ、文化と社会における病気に焦点をあて、総合的な文化人類学理論を構築しようとする。「医療人類学」を切り拓いてきた著者による先駆的名著。

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Posted by ブクログ

予想と違った展開、落ち着いた分析の口調、ゆっくりだが読み進めている時間が愉しかった。
元は1984年に発刊されており、文庫化にあたって加筆修正がなされたとある。驚くほど、古典なんだと、改めて感銘したが・・・柳田国男、石牟礼道子、森田正篤そして世界に名だたるレヴィ・ストラースの流れを汲んだ本と認識。
医学そのものというより文化人類学の枝葉の中に存する「医療従事者の参考文献の一環」と捉えたら分かりやすい。

一部分では世界トップクラスと任じる向きもあるが、医学界の進歩は宇宙ロケットのスピード・・それでも【発達した社会でもなおみられる伝統的医療や信仰と治療の問題】はまだまだ解明が続く(世界の隅々を見ると尚の如く・・日本では然ることながら)

よく耳にする【何も悪いことをしていないのに】病に罹る問いに現代医学は応えず、ユタ・シャーマン・呪術にすがるというモノだろうか。自分が納得するように、嵌まりの良いストーリーを作りそこへ当てはめていく認識。

読後、ふと感じたのは「より直接的に利用され差別で正当化されて行く構造の補強となっている」社会。
~結核・ハンセン病など

とはいえ小規模、閉鎖空間であるからと言えども【迷信的な疾病概念】が必ずしも発達するとは言えないところも興味深い。

最近読んだ村上春樹の作品に酷似の匂いが共通しているのを覚えた。
最期に最も面白かったのは滝沢馬琴の病日記。息子会社であることで高い知的階級に属していると思われる日常の生活の空気は意外だったり、面白かったり、納得いったり。。

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2024年02月14日

Posted by ブクログ

病気を理解する上での切り口は、西洋医学のメスによるものだけはない。我々現代の日本人は、病気を単なる「機械の故障」のように扱いがちだが、文化人類学的な切り口から見れば、もっと多くの意味をもつものだった。

本書は1984年に刊行されたものを2022年に文庫化。しかし、古びた印象はなく、その時間の重みが、むしろ説得力をもたせている(学術的には古くなった面もあるのだろうが、素人にはわからない。その点は、文庫版解説でフォローされている)。

過去の日本における痘瘡やコレラに対する対応など、コロナ禍の現在と比べることで、興味深く読める内容も多い。

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2023年01月02日

Posted by ブクログ

呪術と違い、西洋医学は『なぜ私が病気になったのか』を説明しない
呪術は当然エビデンスがないが、その問いに答えない西洋医学はメンタルで増幅される症状に応えないので、万能では全然ないのだよなぁ…

ナラティブの大事さを痛感する、医療人類学の名著

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2025年09月08日

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