【感想・ネタバレ】ダンゴムシに心はあるのか 新しい心の科学のレビュー

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Posted by ブクログ 2019年05月04日

PHPのサイエンスワールドというシリーズがあることを知らなかった。そしてダンゴムシに心があることも知らなかった。そんな知らないことだらけのダンゴムシの心を知ることができてほんとうに幸せだ。

そして日本語が美しい。うつろい、という言葉を使って心の動きを表現されるとはかなりセンスの良さを感じる。

...続きを読む言でいうとダンゴムシを通じて知る自分の心という感じか。特に第1章の「どうしてこのような行動を発現させられたのか」という問いが伏線となって、第3章の『ダンゴムシ実験の動物行動学的意味』は本当に充実しているので自分自身をよく知ることができる。

3章の「自律」に関する説明は、交流分析の「今ここへの直接的な反応である一組みの行動・思考・感情で、脚本に基づく思い込みの反応ではないもの」という自律の定義を思い出す。

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Posted by ブクログ 2013年07月14日

とても面白かった。
ダンゴムシが泳いだ所で最高のカタルシスを得られた。
こういう本もっと読んでいこう。

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Posted by ブクログ 2012年02月21日

心の定義をダンゴムシの観察によって進めていく。生物と無生物のあいだの福岡伸一さんも絶賛と帯にある。「ひょっとするとこの心の科学は大化けするかもしれない。」これって絶賛?ひとつのアイディアを徹底的に考え続けて実験に落とし込む著者の真摯な姿が浮かび上がってくるとてもよい本。こういうものが僕にとっての学問...続きを読む。第一章で、心とはなにか?とやらないと彼のテーマは説明できない。ここでの心の定義は少々あやふやである。しかし、この定義をもって後半のぞうりむしの実験に突き進むとき、大きなテーマを理解することができる。第一章だけでは他人を納得させることはできないし、ぞうりむしの実験だけでは単なる現代のファーブルさんみたいなものという評価にしかならないかもしれない。しかしこの二つが重なるとき、大きな可能性を見ることができる。可能性を開いてくれたという部分で最高の評価をしたい。あと、新書のフォーマットに最も適した題材であるとも感じる。ここの可能性の部分で、福岡さんもひょっとするとと思ったのだろう。タイトルがかっこいいよね。ところでこの本、草津温泉に向かう国道沿いのセブンイレブンに平積みにされていたんだけど、関係者?

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Posted by ブクログ 2023年05月21日

ダンゴムシかわいい。作者は真摯にダンゴムシと向き合う変態(良い意味の)。ひたすら1時間T字の装置を回し続ける…。心と、学習の違いがうまく理解できなかったが、人は対象物に知能があると思うとすぐに擬人化したくなる、という一文で、道と遭遇した時のダンゴムシの迷いと行動が心で、その先気づきと経験による行動が...続きを読む学習なのかな?といったん理解。ダンゴムシもタコも心も知能もあってかわいい。

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Posted by ブクログ 2022年10月10日

生物は自然界から受ける多くの刺激に対して、様々な行動の選択肢がある中で適切な一つの行動を選んでいる。それ以外の行動は「隠れた活動部位」が抑制しており、これが「心の実体」であるという。誰もが一度は庭先などで見かけたことがあるダンゴムシ。ダンゴムシには大脳がないので「心」を持たないと長く考えられてきた。...続きを読むしかし未知な状況と課題を与えてやると、普段は「心」によって抑制されている突飛な行動をとった。このダンゴムシの「心」の現れを見出したユニークな実験について紹介した本。

研究の着眼点にとても感動しました。

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Posted by ブクログ 2022年08月29日

良書だと思う。
タイトルの問いに対する答えをすぐ知りたい人には向かないが、心の定義、心があるのか研究の試行錯誤などの過程がまさに研究者で、こういったことを教授というのは繰り返しているのか、とよく分かる内容だった。
学術的・論理的に試行錯誤の経過が記載されているのでわかりやすい。
普段の生活では予期し...続きを読む得ない状況に置かれた時の規則性を見出し、そこに心があると考えている。

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Posted by ブクログ 2018年12月30日

結論から言うと、ダンゴムシに心はあるし知能もある。
前提として「心とは何か」の定義をしているのだが、そこがある意味では本書の白眉。その前提を踏まえてダンゴムシを使った実験を紹介していく。
そもそも、ダンゴムシの生態とか、知っているようで知らないので、そこから面白い。

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Posted by ブクログ 2015年03月03日

 震災の年に出版され、新聞でも紹介されていたので気になっていたが、そのままにしてしまっていた本である。科学にとって最も扱いにくい「心」を正面から扱った斬新な研究である。しかし、その実験は至って平凡なものであり、地道な観察を積み重ねたものである。
 筆者のいう「心」とは、自分の中にある内なる自分であり...続きを読む、それがダンゴムシならば、表面的には見られない「内なるダンゴムシ」のことを言う。不断は隠れていて見えないが、いざという時にふと表面に出てくる。これを実験で浮き彫りにするために、通常では考えられない特殊な状況を作り出し、その時にどのような行動をするのかを丁寧に観察する。その状況が本能のルールでは対処できないものであるのが大切なのである。
 たとえばダンゴムシは水が苦手であり、水没すると死に至るものでありながら、周囲を溝状の水で囲んだ入れ物に置くと、しばらく逡巡したあとその水を泳いで渡るものが出てくる。これは本能のなせる業ではないというのだ。予想外の行動に出た時、観察者はそれを細かく観察し、それを心の存在と結び付けていく。
 筆者はこの論法で石やジュラルミンにも心があると説明している。想定外の現象を詳しく観察すれば無生物と思われるものにさえ、心の存在を見いだせるのである。ここまで来ると観察者と対象との関係に還元できるのではないかとさえ思えてしまう。
 身近な小動物から心の存在を探ったところが大変ユニークであり、新たな展開がありそうな学問であると思った。

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Posted by ブクログ 2014年08月27日

内容情報
[日販MARCより]
心とは何か。庭先によくいる、小さくて丸くなるダンゴムシにも心はあるのか。大脳がないダンゴムシにも心があり、道具を使う知能もあることを示唆するユニークな実験の数々を紹介し、「心-脳」問題に一石を投ずる。
[BOOKデータベースより]
「ファーブル昆虫記」にも出てくる、庭...続きを読む先によくいる小さくて丸くなるダンゴムシ。このダンゴムシにも「心」があると考え、行動実験を試みた若い研究者がいた。迷路実験、行き止まり実験、水包囲実験など、未知の状況と課題を与え、ついにダンゴムシから「常識」では考えられない突飛な行動を引き出すことに成功した。大脳がないダンゴムシにも心があり、道具を使う知能もあることを示唆するユニークな実験を紹介し、「心‐脳」問題に一石を投ずる。
第1章 心とは何か―「心の定義」を提案する(心とは言葉である;日常的な心の概念 ほか)
第2章 ダンゴムシの実験(会社で学んだこと;ダンゴムシとの出会い ほか)
第3章 ダンゴムシ実験の動物行動学的意味(心の研究と動物行動学;動物行動学における四つの「なぜ」 ほか)
第4章 「心の科学」の新展開(心とは何であったか;知能の遍在性 ほか)

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Posted by ブクログ 2014年03月09日

我が家でもダンゴムシはたくさん生息しており、過去どれぐらいのダンゴムシを殺してきたか判らない。
微々たるモノではあるやはり食害はあるので一応害虫の扱いを受ける虫なのである。青虫などに比べると可愛いモノであるがなんといっても徒党を組んで生息しているのがいけない。

本書はそのダンゴムシに心があるかどう...続きを読むかがテーマである、森山先生は長年ダンゴムシの研究をとおして認知科学という学問を追究されていらっしゃる。

心があるかどうかと言うことを研究する場合、当然に先ずは心とは何か、どういう状態があれば心があると言えるのかという事を検討する必要がある。と言う事で本書第1章は心とは何かと言うテーマが語られます。これはかなり哲学っぽい話題でもあります。「観察者が、さまざまな状況に応じた観察対象の特定行動を見いだせるよう、対象ととことん付き合うと言うこと」で「観察対象の心を見いだす」事ができると言う事だと思います。

第2章では森山先生がダンゴムシととことん付き合ってダンゴムシの心を見いだす過程を詳述することでダンゴムシの心について検証しています。さらに第3章ではダンゴムシ実験の動物行動学的意味と題し、動物行動学の創始者である3人の科学者の業績が心の科学へと展開されることを述べています。「行動を動機づけるための欲求の発現には、余計な欲求の発現を自律的に抑制する心の働きが不可欠」であり「その働きは、未知の状況における予想外の行動を発現させる原動力として、実験を通して確認され」るとしています。

本書は平易な言葉で書かれているものの、書いていることは良く吟味する必要がありそうです。心は幾ら科学的に解明しても哲学的アプローチを取らざるを得ないのです。

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Posted by ブクログ 2014年03月10日

 軽い科学読み物と思い手に取ったが、数ページ読んでは立ち止まり考えさせられることの繰り返しで、中々の読み応え。
 一般に能動的だと考えられている「心」の働きを、いったん消極面に着目して抑制力とし、それをさらにひっくり返してまた能動的に捉える、と二重に反転させて記述しているために少々取っ掛かりのところ...続きを読むで戸惑ってしまったが、それが理解できればあとは一気に読めた。
 対象ととことん向き合うことで、未知の状況下での「予想外の行動」としての対象の「心」の働きが見えてくるという…たとえ対象がダンゴムシや石ころ(!)であっても。文章はドライだが、著者の対象に対するある種の愛情が至る所に感じられた。この境地に至るまで自分の道を究めてみたい、と思わずにはいられない。

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Posted by ブクログ 2013年09月26日

動物行動学を学んでいくうえで勉強になると思い、読んだ。心というものの定義が非常に難しく、あいまいな印象。私たちが一般に心というものを定義できるのは、私たちにはそれを理解するだけの知能があるためであろうし、また他者というものを認識できているためであろうと考える。自己と他者の判別は、進化的な流れの中でど...続きを読むの生物にまで獲得された能力なのかがわかれば、心という存在の範囲も狭まるのではないかと思う。

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Posted by ブクログ 2013年08月17日

「心」というものを、生物は窮地に陥ったときに、ふだん表に出ない行動をする、という点から論じている。
この本を読んだだけで、本当にダンゴムシに心(感情)があるのかはわからなかったが、著者の視点や研究は興味深く、また読者に理解してもらおうとする書き方も好感が持てる。

なお、「魚は痛みを感じるか」という...続きを読む同種の問いかけから入った本があるが(アプローチや内容はまったく違うけど)、「魚は〜」よりもさらに踏み込んでいる印象。

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Posted by ブクログ 2012年04月09日

P.164の動物行動の四つの「なぜ」
①どのような仕組みで生じるか
②どのような機能をもっているのか
③どのように獲得されるのか
④どのように進化してきたのか

↑自分の普段の行動や、勉強する資格や科目に当てはめると面白そう。

簿記•会計の場合
①他者のお金を使って商いをする、会社で用いられる。
...続きを読む
②利益の配分の証拠、税金の支払額を決める証拠

③税金を払わないと犯罪となる
株式市場に上場するなどより多くのお金を集めようとするため

④単式簿記から複式簿記
期間会計、減価償却など

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Posted by ブクログ 2012年01月27日

ほ乳類や鳥類ぐらいには、心を感じることがあっても、よもやダンゴムシに心を感じたことは、今までなかった。けれど、著者の心の定義は納得のいくものだし、実験結果を示されると、確かにダンゴムシにも心はあるようだ。そしてそれは、ダンゴムシに限ったことではないようでもある。う〜ん。どうしよう。おちおち歩いていら...続きを読むれない気がしてくる。いやいや、肉食自体どうなのだろう、と短絡的に考えてしまう。彼らは我々をどう捉えているんだろう・・。
「心の科学」について考えることは、相手を認めることに繋がるのだなぁと思えたことが、収穫のひとつ。

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Posted by ブクログ 2023年11月28日

ダンゴムシという研究対象の行動を観察し、その行動から心という機能?があるかどうかを見つけていく。

研究者が、対象にストレスを与えて、ダンゴムシが反応する。その反応が合理的な考えられることと異なる動きをする時、そこにダンゴムシの心があると考えられるのではないか?
といった研究を行う研究者の、場合わけ...続きを読むとテスト、観察における緻密な忍耐。
本論より、その過程の説明の緻密さに参りました。
私は理系脳ではないと自覚しました。

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Posted by ブクログ 2020年07月15日

いきなりネタバレすると、ダンゴムシには心がある。石にも心がある。
こういう見方をすると万物に慈しみを持てる。
著者は生物の行動実験をする時には、生物ととことん付き合い、なるべく生物本来の行動ができるように、実験者が自然を提供しなければならないと言う。

著者の定義によると、心は隠れ...続きを読むた活動部位だという。生物は自然界から受ける多くの刺激に対してさまざまな行動を発現する可能性があるが、その中から適切な一つの行動を選び取っている。著者の言う「内なるわたくし」=「心」が他の行動を抑制する事で、通常の行動が発現するのだそうだ。
人でも、心がまだ充分に育まれていない魔の二歳児は、"今やりたい衝動"を心が抑えられずに駄々をこねるのだそうだ。ある本によると、こどもは考えたことがそのまま行動や言葉に出てしまうとか、思春期に一人の時間を持つようになってようやく秘密を持てるようになるという事を読んだことがあるが、それに通じる。

ダンゴムシに心があるかどうかを調べるには、この隠された行動が発現されるような未知の状況を作れば良いという。未知の状況で通常とは異なる行動をとればそれが心の表出だという。
この定義に従い、とても丁寧な状況設定をして未知な状況を与えると、ダンゴムシは不可解な行動を示す。この一連の実験はとても面白い。発想が素晴らしい。しかし、この不可解な行動が心だと言われてもどうも釈然としない。

ダンゴムシの不可解な行動は、危機的状況を回避するための行動だった。だから、心の働きは「未知の状況における予想外の行動の発現能」なのだと著者は言う。
これが心だと言われて釈然としないのは、私が内に秘めている心を暴かれるかもしれないという危機的状況を突きつけられているからではないだろうか。私の考える心は、人が到達できない場所にあって、どんなに追い求めても解明できない部分を秘めているもので、釈然としないのはこの考えを守るための防衛反応なのかもしれない。
石にも心を見出せるというくだりは、心は受け取る側が見出すものなのかもしれないとも考えられる。

本題からすると元も子もないが、それが心かどうかという事に触れずに読むと、生物は「未知の状況における予想外の行動の発現能」を持ち合わせており、立ち止まらずあがくことで危機的状況を乗り越えようとする能力があることを教えてくれる。
ここに教訓がある。
危機的状況でも行動する事でなんとかなるという事だ。
そして、だれかが理解できない行動をとった時、その人にとっては危機的状況なのかもしれないという事だ。心で抑制していた行動の表れかもしれない。不可解な行動の中に本心が隠されているかもしれないと思う事だ。
何にせよ人には心がある。心は"うら"とも読み、裏と同義だそうだ。表だけでは計り知れない心がある事を忘れてはいけない。

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Posted by ブクログ 2019年01月06日

京大の某教授が勧めていたので。

面白い試みだなー、と単純に思う。
しかしながら、
こういった研究をしていない平々凡々な一般読者の視点からすると、
手放しに面白いとは言いづらい。
ある研究者が面白いと言った=一般読者が楽しめるエンターテイメント性がある、
ではないと言う事。

という点さえ受け入れれ...続きを読むば、
地味ながら興味深い研究だと一般読者にも感じられると思う。
生物的本能に従って単純な行動をしているだけに見えるダンゴムシにも、
突き詰めると個性が見え、我々人間はそこに心を見出してしまう。
その辺の地面に蠢いているダンゴムシの行動にも奥深さが見えるようになるのだ。

人間が自分が持っていると信じている「心」というものも、
実はこのダンゴムシの反応の延長上にあるものなのかもしれない。
と、思うと、自分の行動もある程度客観性を持って眺められるかもしれない。

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Posted by ブクログ 2018年10月17日

ダンゴムシの研究について、具体的な研究方法はよく理解できなかったけど、対象に興味を持って関わり、受容することでその対象の心が理解できるという話だったと思う。心の有無がメインではなく、お互いの関わりについて、人ではないものを対象としても同じであり、人と関わるときにもそれは大事なのだと教わったような気が...続きを読むする。だいぶ本書の内容から外れているかもしれないけど。

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Posted by ブクログ 2017年07月22日

 大変興味深い題名の本である。本書の冒頭で著者はまず、「心」という言葉が使われる慣用表現や自身の体験をもとに、「心」とは何かを定義する。そしてその定義に基づいて、ダンゴムシを対象に様々な実験を行い、結論として、ダンゴムシ、或いは石のような無機物にすら「心」はあると主張する。
 面白く読めはしたのだが...続きを読む、納得はできなかった。著者は心の実体を「隠れた活動部位」と考える。私たちはある行動をとるとき、同時にその妨げになる活動を抑制している。例えば、大切な誰かに贈り物を手渡すとき、たまたま背中がむず痒かったとしても、背中を掻くという行動は通常発現しない。贈り物を渡すという目的を損ないかねないため、意識的にしろ無意志的にしろ、抑えられるからである。しかし、背中の皮膚感覚を担う部位は、当然活動を続けている。これが「隠れた活動部位」である。この抑制された活動は目には見えないものの、発現する可能性がある気配として観察者に伝わる。この気配を観察者は「内なる何か」ととらえる。著者は、これを心の実体とする。
 「隠れた活動部位」=「心」は、単に隠れているだけなので、未知の事態に出くわすと発現することがある。著者は4才のとき、晴れた空を描こうとしたのだが、青のクレヨンがなく、やむを得ず空を緑に塗って絵を提出したところ、先生にきれいな空だとほめられ、友だちからも拍手される。4才の著者は、初めは戸惑っていたものの、やがて、自分の中に緑の空はきれいだとという感覚が湧き上がるのに気付く。著者はこの経験を、心の発現と解釈する。つまり、隠れていた「緑の空はきれい」という感覚が、予想外にほめられるという未知の状況で現前したととらえ、それを心の存在の実証としたのである。
 この経験をもとに著者は、ダンゴムシを、迷路や周囲を水で囲んだ場所など、ダンゴムシにとって未知の状況に置き、例えば障害物をよじ登る、嫌いなはずの水に入るなど、通常、ダンゴムシには見られない行動を取る個体を観察し、ダンゴムシの心の存在を主張する。
 ダンゴムシ、タコ、蟹などの実験は大変興味深い。しかしそれをもって、こうした生物、果ては石などの無機物にも心があるとの結論には、私は頷けなかった。著者の結論は、心の実体は隠れた活動部位であるという前提に基づいているが、私にはそもそもこの前提が受け入れ難かった。私は「心」というものに、常識的に、或いは経験的に、どうしてももっと高度な精神作用を求めてしまう。何にでも隠れた活動部位があり、それが予期せぬ状況で顕在化することがある、私が同意できるのはここまでであり、それが即ちダンゴムシにも心があることの証明になるとは、私には思えなかった。「心」に対して持つイメージが、著者と私では異なるため、仕方ないのかもしれない。
 しかしダンゴムシの実験は大変面白く読め、また、科学者としての著者の態度にも好感が持てる。一読の価値がある本だと思う。

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Posted by ブクログ 2017年06月30日

あるわ。これはあるわ。
ダンゴムシに心、あるわ。。。
これから蚊とか出てくる時期やのに、気軽に殺しづらくなっちゃうよ、困ったなぁもぉ。。。

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Posted by ブクログ 2016年07月28日

心の科学という非常に面白いテーマについて書かれた本書。心の遍在性は夢野久作のドグラ・マグラを想起させる。とても興味深く読んだ。

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Posted by ブクログ 2016年01月15日

比較認知科学、動物行動学の専門家が、大脳を持たない動物にも心はあるとの仮説のもと、ダンゴムシに対する様々な実験によりそれを検証したものである。
まず著者は、「心」という漠然としたものを「日常的な心の概念」と「非日常的な心の概念」の二つに分け、後者を、科学の現場で一般に説明される「人間の記憶・思考・判...続きを読む断といった認知的活動、及び喜怒哀楽といった感情を司る部位、すなわち脳の中のその部位」を指すとし、前者を、本書で対象とする「心」の概念としている。そして、それを以下のように説明している。
◆我々は、ある行動をとっているとき、その行動とは直接結びつかない様々な思考、感情等を同時に抱きつつも、それらの発現を抑制しているが、そのような抑制された部分、すなわち「内なる私」、「隠れた活動部位」が「心」の実体である。
◆観察者からは、発現された行動に隠れた「気配」だけが感じられ、そのために観察者は相手が「心」を持つように感じる。
◆しかし、未知の状況に出会うと、通常は抑制されている行動、すなわち予想外の行動を自発的に発現させる。
そして、上記の仮説を、ダンゴムシに対して、迷路実験、行き止まり実験、水包囲実験などにより、様々な形で特定の状況と未知の状況を与え、その観察の結果、未知の状況では予想外の行動をすることを実証し、ダンゴムシも「内なる私」、すなわち「心」を持っていると結論付けている。
更に、この実験の動物行動学的意味として、「動機づけ」が動物の定型的活動パターンを発現させるという動物行動学の示した理論に対して、そのためには、「動機づけ」が行われた際に、動物の「心」が余計な行動を抑制することが必要であると述べ、両者の接点を示している。
そして最後に、「心」の働きを「未知の状況における予想外の行動の発現能」とすれば、知能がその能力の自然な延長として現前されることになり、それは、既存の脳科学や知能科学へパラダイムシフトを迫るものであると結んでいる。
「心」と「脳」の問題に一石を投ずるユニークな考察である。
(2014年4月了)

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Posted by ブクログ 2013年09月01日

大脳を持たないダンゴムシに心はあるのか?ダンゴムシの行動から色々と推測しているのだが、心と行動がどう関係するのか、結局、理解出来なかった。自分にはちょっと難しい。

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Posted by ブクログ 2013年05月05日

「心」の「定義」が難しいと思った。それは知能にも、感情にも近いように思う。
「本書で定義された心」は、間違いなくダンゴムシは持ってるようだけど、その定義が、我々が一般的に連想する「心」にどれだけ近いのか、ということだろうか。

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Posted by ブクログ 2013年01月04日

タイトルに惹かれて読み始めました。

心とは隠れた活動部位。心の働きとは、状況に応じた行動の発現を支えるために余計な行動の発現を潜在させること。

言われてみれば、心とはそうだったと思うところアリ。

ダンゴムシやオカヤドカリにも心(知能)があったことに驚きました。

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Posted by ブクログ 2012年10月07日

ダンゴムシに心はあるのか。「心」を再発明して、ダンゴムシに心を見つける実験をする本。「本能」というもので動いていると思いがちな彼らでも、困難にぶつかったとき、個々に思わぬ行動をおこす。それが、心、故に、であるのだと。石は、石であろうという心を持って石になっていると。それに比べればダンゴムシの心を理解...続きを読むするのは、少しは簡単かもしれない。

「心」が、多様化して生き残るための術だとすれば、集団ヒステリーで同じ方を向かせようとする輩は、すなわち心を失わせるということに他ならないなと、本書のテーマとは違う方に思いを馳せる近頃です。

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Posted by ブクログ 2012年09月17日

様々な行動実験を通して、ダンゴムシにも「心」があることを証明していく過程に、子供のようにドキドキワクワクしながら読みました。
心とは何か。ストンと腑に落ちた個所を紹介します。
「つまり、『未知の状況』における『予想外の行動の発現』こそが、隠れた活動部位としての『心の働きの現前』なのです」(P47)
...続きを読むこれだけでは分かりにくいかもしれません。たとえば、街でばったり旧友と会って突然大泣きしてしまう。しかもなぜ大泣きしたのか原因が分からない。これは、普通はセーブされている行動が、未知の状況で抑制を解かれ、発現する機会を得たということ。つまり「心が現前」したということ。なるほどと膝を打ちました。

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Posted by ブクログ 2012年04月26日

科学では語りえないと思っていた,”心”についての語彙が増えた.
それは現象として観察しうるモノの行為の発現について語りうる方法であり,また知性についての深い洞察をもたらす.(例としてダンゴムシの知性,機械的性質とは言いがたい自律的な振る舞い,の観測)

ダンゴムシ,タコ,石,ジェラルミンのに心はある...続きを読むか?という問いはそれ自体の証明だけに価値あるものではない.
”心”についての議論をはらむ研究分野では,一読の価値があるだろう.

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Posted by ブクログ 2012年04月02日

子供の夏休みの研究課題のネタにもいい。障害物を回避するジグザグ歩行、水攻め、触覚延長、丸める・・・など。極めつけは2匹の合体接続からの回避行動で、まさかというパターンに驚きました!

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