【感想・ネタバレ】おやじはニーチェ―認知症の父と過ごした436日―のレビュー

あらすじ

突然怒り、取り繕い、身近なことを忘れる。変わっていく認知症の父に、60男は戸惑うが、周囲の人の助けも借りて、新しい環境に向き合っていく。結局、おやじはおやじなんだ。時に父と笑い合いながら、亡くなるまでの日々を過ごす。「健忘があるから、幸福も希望もあるのだ」という哲学者ニーチェの至言に背中を押されながら。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

重い、切ないテーマをなんだかユーモラスに描いてくれてニヤリとしていいのかどうか、たじろいでしまうけれど。
認知症の父親を看ているということにまず、スゴいと思ってしまう。
本当にその境地に達した人は哲学者になるのでは。
いざという時、(いつ?)
また手に取ってしまう本だと思う。

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2023年02月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ノンフィクション作家の高橋秀実氏が老年の実父を介護した経験をユーモラスに綴る作品。というか45%くらいは哲学や思想を現実世界へ応用を試みた文章?といっても過言ではありません。

なお高橋氏は小林秀雄賞受賞の作家さんで、村上春樹氏の『アンダーグラウンド』著述に関してリサーチャーをつとめたとのこと。惜しくも2024年にガンで逝去されました。

・・・
当方も父が84歳。相応に認知症症状が出ています。

帰ってくるたびに私の職場を確認する(日本?海外だっけ?)、家内の出身の外国のこと(料理・文化・気候)を度々聞く。

まあ、その程度のことならば私も全然平気で対応できますし、精々様子を見に来れるのも一年に1度や2度ですから耐えられます。

ただ、本作を読んで、認知症介護のリアル、みたいなものをひしひしと理解できたと思います。うちはまだそこまではいっていない様子。

・・・
筆者の場合、お母様が突然なくなり、そこからお父様の認知症が急激に進んだとのこと。

そして普段から『ボケているのか、とぼけているのか』分からない飄々とした雰囲気の父上は、果たして認知症なのか、考えてしまったそう。

ここから筆者の哲学談義が始まります。

西洋哲学史のごとく、プラトン、アリストテレス、カント、ヘーゲル、キルケゴール、ニーチェ、ハイデガー、サルトル等々、日本哲学では九鬼周造や西田幾多郎がひかれ、さらに仏教や心理学の引用も。

で何が語られるかといえば、自己とは、意識とは、認識するとは、こととものの違い、等々です。

哲学でイシューとなるこうした事柄を認知症患者の言動に併せて読むと、なんと筆者のお父様は先哲の言動と一致する!という事がしばしばだったらしい。

ただこれ、認知症のマニュアル的書籍に沿って読めばお父様の行動や言動は『見当識の喪失』『取り繕い』等々となるとのことですが、どうやら筆者はそうした医学的な分析で人を見るのを良しとしない風でありました。

・・・
とは言え筆者は攻撃的でもなく、かつ医学的な分析に批判的でもないのです。

寧ろ相当に認知症関連の文献を渉猟し、きちんと学んだ様子が見受けられます(理論武装?)。

その観点から言えば、多くの認知症文献が引用されおり、認知症への参考文献総覧、認知症関連本への入り口としての使い方もできるかなと感じました。

・・・
ということで高橋秀実氏の認知症ルポでした。

ユーモアと暖かさにあふれる筆致であると共に、認知症の具体的症例や行動、ケアマネージャーとの連携やお父様が死に至るまでの経過を綴り、一具体例として非常に貴重な作品であると感じました。

親御さんに同類の症例のある方、そうなりそうな親族をお持ちの方にはおすすめ出来る作品です。暗くならない(むしろ笑ってしまう)介護本でした。

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2025年03月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

認知症に対する著者独自の視点が面白かった。
ように思う。ただ、その切り口が哲学なので少し難解ではあった。
あとがきから読めばもう少しすんなりと頭に入ってきたように思う。
また、お父さんが病気だとわかった時の著者の「考えてみれば、体が動くから認知症が問題だったわけで、動けなくなれば問題でなくなる。体が動くからこその「問題行動」であって、動かなければ問題も消えるのだ。自立した生活ができるのかと不安を覚えるから認知症なのであって、病院生活ならみなさんのお世話になる患者である。いつまで続くのかと悲観したから認知症だったわけで、週単位の余命だと宣告されれば毎日が愛おしい」(p249)という気付きには大いに納得した。
父親の介護をした著者の436日を独特の視点で描き、分析しているけれど、それらの根本には愛情がある。
難しい話が出てくるけれども、最後には暖かい気持ちになる。何事もそうだけれど、悲観的に考えるのではなく様々な視点から物事を見る大切さも学んだ。
著者の謂わんとしていることをしっかりと理解したとは言えないが、素敵な本だと思う。
機会があったら再読したい。

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2023年12月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

朝日新聞の書評欄でとりあげていたので読んだ。
親の認知症が顕在化してきたというのも動機の一つではある。
高橋さんはひとりぐらしの認知症の親と暮らしているのだが、お父さんの認知や徘徊が相当ひどい。うちの親はまだここまではきていない。
 著者である息子と会話はするもののトンチンカンな返答ばかりで、おかしな会話となってしまう。それを著者が読んできた哲学書や思想書と照合するとなんとなく腑に落ちるというような気づきがいろいろ出てくる。会話も支離滅裂なら、思想との結びつきもおもいつくままって感じで、ニーチェとかアリストテレスとかウィトゲンシュタインとかだされても、一過的で読んでいるほうとしてはあまり深くは共感できなかった。
そういうふうに考えてもいいんじゃないですか。といった感じでした。
 そもそも哲学とか宗教は日常当たり前と思っていることを当たり前とせずに深いところからものをみて本質を捉えようとすうので、認知症に世界に当て嵌めてもなんとなく通ってしまうってことではないんでしょうか。
 結局、認知症の人が幸せにいきるようにしからず、また危険や不潔はさけて生活できるようにするしかないのではないでしょうか。

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2023年12月29日

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